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投資と融資の違いとは?その違いとメリット・デメリットについて解説!
2024.12.18
資金を調達する手段として、「融資」と「投資」がよく利用されますが、これらは性質や目的が異なります。それぞれの違いを理解することで、どの方法が自分の状況に合っているかを判断できるようになります。融資と投資の違いを理解してトラブルやリスクを無くしましょう。そこで、本記事では、融資と投資の主な違いをわかりやすく解説しています。
目次
融資とは?
融資とは、金融機関や個人が一定の条件のもとで他者にお金を貸し付ける行為です。融資を受けた側(借り手)は、元本(借りた額)に加えて利子(利息)を返済する義務があります。銀行が利息をつけて企業にお金を貸し出す行為が代表的な例として挙げられます。また、銀行からの借り入れだけでなく、債券の発行も融資による資金調達に当たります。
特徴としては、以下の点が挙げられます。
返済義務がある
借り手は、あらかじめ決められた返済スケジュールに従って元本と利子を返済する必要があります。また、いわゆる借金なので、財務諸表上は「負債」として計上されます。
固定的なリターン
融資を行った側(貸し手)は、契約に基づき決められた利息を得ることができます。
リスクが低い
貸し手にとって融資は比較的リスクが低い取引です。上記のように返済義務があるので、借り手が返済能力を持つ限りは、貸した額と利息が確実に戻ってくるからです。
投資とは?
投資とは、企業やプロジェクト、資産にお金を出資し、その価値が増加することで利益を得る行為です。投資には元本が保証されないリスクが伴いますが、成功すれば大きなリターンを得られる可能性があります。株式投資が投資の代表例とされており、株式投資では投資家が株式購入という行為により会社に対して資本金を提供します。
特徴としては、以下の点が挙げられます。
返済義務がない
投資の場合は、返済義務がないことが特徴的です。そのため、投資してもらった金額は、「純資産」として計上され、会社は比較的自由に使うことができます。
元本保証がない
投資では、返済義務がないので、投資先の雲行きが悪くなった場合に、出資したお金を全額失う可能性もあります。例えば、株式投資では会社が倒産すれば株価はゼロになる可能性があります。
不確定なリターン
投資のリターンは年いくらなど内容が固定されていないので、経済や市場の動向、対象の成功や失敗に大きく左右されます。
リスクとリターンが比例
高いリターンを期待できる投資ほどリスクも高くなる傾向があります。投資額に合わせて、リターンが帰ってくることが多いので、多額を投資すればするほど成功した時リターンは高くなりますが、逆に、失敗した時その多額を失うリスクがあります。
融資と投資の違い
上記の融資と投資の特徴から、違いを以下の表にまとめました。
融資 | 投資 | |
資金提供者の目的 | 利息の獲得 | キャピタルゲインの獲得、経営参画、配当金、株主優待の獲得 |
資金提供者 | 銀行・信用金庫・日本政策金融公庫などの金融機関 | VC(ベンチャーキャピタル)や個人の投資家(※) |
返済義務 | あり | なし |
財務諸表上の仕訳 | 負債 | 純資産 |
(※補足)個人の投資家のなかでも、エンジェル投資家が近年注目されています。エンジェル投資家とは、主にスタートアップや小規模企業に対して、個人の資金を投資する富裕層の個人投資家のことです。彼らは企業の初期段階にリスクを取って資金を提供し、見返りとして株式や将来的な利益の一部を受け取ります。また、資金だけでなく、経営のアドバイスや人脈の提供なども行うことがあります。
融資を受けるメリット
資産を売却せずに資金を得られる
融資は、自己所有の資産を手放すことなく資金を調達できる方法です。これにより、将来的な価値のある資産を維持したまま運転資金や投資に回すことができます。
利息以外の費用が少ない
融資では、原則として返済するのは元本と利息のみです。たとえば、出資や株式発行による資金調達と比較すると、融資は調達コストが明確で、追加の配当や株式の希薄化などの影響がありません。また、特に公的融資を受ける場合は低金利での資金調達が可能です。
信用力を高めることができる
適切に融資を受けて滞りなく返済を行うことで、個人や企業の信用力(クレジットスコア)が向上します。これにより、将来的にさらに有利な条件で追加融資を受けやすくなります。
金利が低い場合がある
金融機関の融資は、他の資金調達方法(例:クレジットカードのキャッシング)と比較して、金利が低い場合があります。また、国や地方自治体が支援する融資制度(例:中小企業向けの公的融資)を活用すれば、さらに低金利で資金を調達できる可能性があります。
個人事業主でも融資を受けることができる
融資の対象は、企業だけでなく個人事業主も含まれます。企業に比べて信用力が低く、多額の資金調達が難しいケースでも、金融機関の融資によって資金を集めることができるというメリットがあります。もっとも、開業届を提出していることと、確定申告を行なっていることが条件となるので注意しましょう。
節税効果がある
事業融資の場合、利息の支払いが経費として認められることがあり、節税につながる場合があります。
長期的な資金計画を立てやすい
融資は返済期間や金利があらかじめ設定されるため、長期的な資金計画を立てる際に便利です。さらに、固定金利であれば、金利変動リスクも回避できます。
融資を受けるデメリット
返済の義務がある
融資を受けた場合、元本(借りた金額)と利息を、決められたスケジュールに従って返済する義務があります。事業や収入状況が思わしくない場合でも返済を続けなければならず、これが大きな負担となる可能性があります。
利息負担がある
融資の大きなデメリットの一つは、借りた金額に対して利息を支払う必要があることです。特に、金利が高い場合や長期にわたる融資では、返済総額が大きくなり、負担が増加します。
資金繰りが悪化する可能性
融資返済が毎月の固定費として発生するため、資金繰りが悪化するリスクがあります。特に、事業が計画通りに進まなかったり、収入が減少した場合に問題となります。
担保や保証人が必要な場合がある
多くの融資では、借り手に対して担保や保証人を要求されることがあります。これにより、借り手やその家族・保証人に経済的なリスクが発生します。
審査に時間がかかる
融資を受けるためには、金融機関による厳しい審査が必要です。事業計画や収入証明、担保の評価などが行われるため、資金が必要なタイミングで融資を受けられない場合があります。また、審査結果によっては融資を受けることができない場合もあります。一度審査に落ちた場合は、再審査に申し込んでもすぐに受け付けてもらえない可能性も高くなるので、申し込みも慎重に行うようにしましょう。
また、融資は信用力や担保価値に応じて借入額が制限されます。そのため、希望する資金を全額借りられない場合があります。
信用情報に影響する
融資を滞納すると、信用情報(クレジットスコア)に悪影響を与えます。一度信用情報に問題が記録されると、将来的に融資を受ける際に不利になる可能性があります。
資金用途が制限される場合がある
融資で調達した資金は、原則、指定の用途にしか利用できません。そのため、融通が利かない場合があります。
投資を受けるメリット
返済義務がないこと
調達した資金に対して、返済義務はなく、利息を支払う必要もありません。そのため、万が一失敗しても返済義務がないので、調達した資金を使って冒険した選択肢をとることもできます。
信頼性の向上
投資は事業の将来性を見込んで行われるので、現在の返済能力がなかったとしても投資を受けるチャンスがあります。そして、一度有力な投資家やVCから投資を受けることができれば、他の投資家や取引先からの信用が高まりというメリットがあります。
投資家の知識と人脈を活用できる
エンジェル投資家やVCは資金だけでなく、事業運営のノウハウ、アドバイス、人脈を提供してくれることが多いです。投資家たちも自分の投資した事業の成長率が高ければ高いほど、キャピタルゲインを獲得できるので、真剣にアドバイスしてもらうことができるのが大きなメリットと言えるでしょう。
近年の投資の動向
上記でも触れましたが、近年個人投資家が増加し、投資を得られる機会が増えています。
本証券業協会が2023年9月に発表した「個人株主の動向について」によると、2022年度末の個人株主数は、前年度比において32万人増の1,489万人となっています。 また、クラウドファンディング(※)という形の投資形態も注目されおり、投資による資金調達が容易になっている傾向にあります。
※クラウドファンディングとは、インターネットを通じて、多くの人から少額ずつ資金を集める仕組みのことです。個人や企業がプロジェクトや事業を公開し、共感した人々が資金を提供します。リターンとして、商品やサービス、あるいは感謝のメッセージなどを提供する場合があります。
主な種類
・購入型:商品やサービスを提供(例:Kickstarter、Makuake)
・寄付型:純粋な寄付(例:Readyfor)
・投資型:株式や利益配分を提供(例:FUNDINNO)
・融資型:融資を行い、利息を受け取る(例:クラウドバンク)
投資を受けるデメリット
経営の主導権を一部失う可能性
投資家が株式を取得すると経営に口出しされる場合があり、意思決定に制約が生じる恐れがあります。また、投資家が過半数を超える株式を取得すると経営権が奪われてしまうので注意しましょう。
情報公開の必要性
財務状況や事業戦略などの詳細情報を投資家に公開する必要があり、情報流出の恐れが生じます。投資を受けるベンチャー企業は、革新的なアイデアを武器にしていることも多いので、アイデアが盗用されないように、秘密保持契約を締結するなどの対策を講じることをお勧めします。
目標到達のプレッシャー
投資家の期待に応えるため、短時間での成果を求められることが多く、経営にプレッシャーがかかります。また、成果を出せない場合はその後の追加投資を受けにくくなってしまいます。
十分な資金や利益を得ることできない場合があること
投資家に対して、対価として株式を発行する場合、株価が低い状況では十分な対価がないので、調達することができる資金も限られてしまいます。また、会社の業績が上がると配当などという形でリターンが必要になるので、コストが生じてしまいます。