役員退職慰労金とは?税務上の取り扱い・計算方法・M&Aでの活用方法等について解説します!

役員退職慰労金は、会社の役員が退職する際に支給される特別な報奨金です。この制度は一般的な退職金とは異なり、役員の貢献度合いや在職期間に応じて多様な形式で設定されることが多いです。本記事では、役員退職慰労金の基本的な定義や他の退職金制度との違い、税務上の取扱い、法律的側面、計算方法、支給時期と方法、そして企業への影響などについて初心者向けに詳しく解説します。

目次

役員退職慰労金とは?基本の理解

役員退職慰労金とは、役員が退職する際に支給される特別な金銭的な報酬のことを指します。これは、長年にわたる役員の貢献や功績を評価し、感謝の意を示すために設けられています。この制度により、役員の退職後の生活を支援するだけではなく、企業の安定経営にも寄与するとされています。そのため、適切な計算と支給が求められます。

役員退職慰労金の定義

役員退職慰労金は、企業の役員が退職する際に支給される報酬です。この報酬は、役員の長年にわたる功績や企業への貢献を評価して支給されます。

この制度は、退職金とは異なり、特に役員に限定されている点が特徴です。役員退職慰労金の支給額は、役員の在任期間や企業の業績など、さまざまな要素を総合的に考慮して決定されます。

これにより、役員の退職後の生活をサポートし、企業の経営にも良い影響を与えることが期待されています。

他の退職金制度との違い

役員退職慰労金は、一般的な退職金制度とは異なる点が多くあります。まず、役員退職慰労金は企業の役員に限定されており、一般社員の退職金とは区別されるのが特徴です。また、支給額の算定方法も異なります。

一般的な退職金は労働契約に基づく給与の一部として支給されるのに対し、役員退職慰労金は役員の功績や企業の業績を反映しています。

さらに、役員退職慰労金は税制上の扱いも異なり、税法上の要件を満たさない場合には課税対象となる場合もあります。

これらの点から、役員退職慰労金は特別な制度であり、その取り扱いには注意が必要です。

役員退職慰労金の目的

役員退職慰労金の主な目的は、長期間にわたり企業の発展に貢献した役員への感謝の意を示すことです。この報酬により、退職後の生活を安定させ、役員が安心して次のステージに進むことを支援します。

また、この制度は、企業内のトップマネジメントを長期的に安定させるためのインセンティブとしても機能します。役員が企業の利益を第一に考え、長期的な視野で経営に携わることで、企業の継続的な成長が促進されます。

役員退職慰労金は、役員のモチベーションを高め、企業の健全な運営に寄与します。

 

役員退職慰労金の税務上の取扱い

役員退職慰労金は、経済的な補償として役員に支給されるお金です。税務上は特別な取扱いがなされ、通常の給与やボーナスとは異なる計算方式が適用されます。これにより、適正な計算と申告が求められるため、詳細な理解が必要です。また、このテーマは税務署による監査の対象にもなりやすいため、正確な記帳が重要です。

退職金との税務上の違い

役員退職慰労金と退職金の税務上の違いは重要です。まず、退職金は一般社員に対して支給される一方、役員退職慰労金は経営層に支給されます。そして、これらは税法上で異なる取扱いがなされます。

税務申告のポイント

役員退職慰労金の税務申告は、複数のポイントに注意が必要です。まず、支給額の計算では、過去の役員報酬や在職期間などを考慮します。そして、適正な申告を行うため、支給理由や計算根拠を明確に記録することが重要です。こうした手順を踏むことで、税務署の監査に対する備えとなります。また、適正な税率を適用するための資料も必要です。これにより、不備が発生しないようにします。最後に、タイムリーな申告が求められます。遅延は罰則の対象となるからです。

退職金にかかる税金の計算方法

役員退職慰労金は、他の計算方法と比べ税負担が軽減されており、計算式は、「(役員退職慰労金支給額-退職所得控除額)×1/2=退職所得金額」となります。

退職所得控除額は、次の計算式で求めます。

勤続年数 退職所得控除額
20年以下 40万円×勤続年数
(80万円に満たない場合は80万円)
20年超 800万円×70万円×(勤続年数-20年)

これらの計算式で求められた退職所得金額に、所定の税率を乗じて所得税と住民税を計算します。

 

役員退職慰労金の法律的側面

役員退職慰労金は、企業が役員の退任時に支給する金銭的な報酬です。この報酬は労働の対価としての性格を持ちながら、法律規制にも敏感に対応する必要があります。日本の法律では、特に会社法や労働基準法に基づいて、この種の報酬の適正性や透明性が求められます。適法かつ公正に運用するためには、社内規定を整備し、役員と株主の双方に納得される形で支給することが重要です。

法律上の注意点

役員退職慰労金に関しては、いくつかの重要な法律上の注意点があります。まず、会社法では、役員報酬の内容や支給方法について明確に定めることが求められます。また、労働基準法にも注視する必要があります。役員報酬の設定が労働者の権利を侵害しないようにするためです。役員退職慰労金の支給額や支給条件については、株主総会での承認が必要となります。そのため、透明かつ公正な手続きを経ることが不可欠です。さらに税務上の影響や所得税の扱いについても、慎重に検討する必要があります。これにより、法律に違反しない適正な運用が可能となります。

会社法に基づく手続き

会社法に基づく手続きは、役員退職慰労金の支給において非常に重要です。まず、報酬規程に沿って支給額や支給条件を明確に設定します。次に、これを株主総会で承認を得る手続きをします。株主総会の承認を得るためには、事前に適切な情報開示を行うことが求められます。さらに、運用にあたっては、定款や株主総会での決議内容に従うことが必須です。役員退職慰労金については、株主の理解と納得を得るための情報公開を十分に行い、透明性を確保することが重要です。

社内規定の整備

役員退職慰労金の支給に当たっては、社内規定の整備が不可欠です。まず、役員報酬規程や退職慰労金規程を詳細に作成します。次に、これらの規程は、役員と株主の両方にとって理解しやすく、透明性のある内容にすることが求められます。さらに、定期的にこれらの規程を見直し、社会情勢や法律の変更に対応することが重要です。社員全員が規定の内容を理解し、適正に運用できるよう教育や研修も行うべきです。規定を整備することにより、トラブルを未然に防ぐことが期待できます。

 

役員退職慰労金の計算方法

役員退職慰労金の計算方法は、企業ごとに異なるルールがありますが、一般的には役員の在任期間や役職、業績などを基に算出されます。この金額は、企業の業績や役員の貢献度によって大きく変動するため、公正な計算が求められます。ここでは、基本的な計算式から注意すべき点、実際のケーススタディまで詳しく解説します。役員退職慰労金を正確に理解し、適切に計算するための基礎知識を身につけましょう。

基本的な計算式

役員退職慰労金は、一般的には「功績倍率法」をいわれる方法で計算されます。計算式は、「退職時の月額報酬×勤続年数×功績倍率」となります。

功績倍率の目安は、職位に応じて以下のような水準となっています。

職位 功績倍率
代表取締役(創業者) 3.0~3.5
代表取締役 2.4~3.2
専務取締役 2.2~2.7
常務取締役 2.0~2.6
取締役 1.2~2.0
監査役 1.0~1.6

計算に影響を与える要素

役員退職慰労金の計算には、複数の要素が影響します。まず、在任期間は最も基本的な要素です。在任期間が長いほど、一般的には慰労金の金額が増加します。次に、役職の重要性も考慮されます。例えば、社長や取締役のような高位の役職は、一般の役員に比べて高額の慰労金が支払われる傾向があります。また、企業の業績も重要です。業績が良い場合、高い慰労金が期待されます。逆に、業績が悪い場合は慰労金が減額されることがあります。さらに、会社の規模や財政状態も影響します。財政状態が良好であるほど、高額の慰労金が支給される可能性が高まります。これらの要素を総合的に考慮して、公正な慰労金を計算します。

 

役員退職慰労金の企業への影響

役員退職慰労金は、役員の退職時に支給される金銭的な恩恵です。この制度は、企業の財務状況や従業員のモチベーション、企業文化に影響を及ぼします。特に大手企業では、多額になることがあり、その影響は無視できません。したがって、経営陣は慎重に検討すべきです。適切な管理がされれば、企業の成長や従業員の士気向上に寄与する可能性があるでしょう。

財務上の影響

役員退職慰労金は、企業の財務に直接影響を及ぼします。大規模な支払いとなる場合、企業の現金流動性に影響することがあります。このため、事前に資金計画を立てておくことが重要です。特に、会計上の処理が求められるため、透明性を保つ必要があります。また、慰労金の支給は、企業の財務健全性を示す指標にも影響を与えるため、適切な監査が必要です。さらに、株主に対しての説明義務も生じることがあるので、事前準備を怠らないことが大切です。

一方、法人側が支給した役員退職慰労金は、全額が損金として算入することが出来ますので、法人税等の節税が可能となります。

企業文化への影響

役員退職慰労金の支給は、企業文化にも大きな影響を与えます。役員が大切にされていると認識されれば、従業員にも好影響を与えることがあります。その一方で、不公平感が生じることもあります。透明性が確保されていない場合、組織内での信頼関係が損なわれる恐れがあるのです。また、適切な評価制度が求められるため、役員だけでなくすべての従業員に公平な評価が行われるようにすることが必要です。これにより、企業全体の士気が向上するでしょう。

従業員モチベーションの変動

役員退職慰労金は、従業員のモチベーションに影響することもあります。役員の退職時に慰労金が支給されることで、従業員が自己の将来に希望を持つことができるのです。しかし、不透明な状況や不公平感が感じられると、逆にモチベーションが低下することが考えられます。従業員全体に公正な報酬制度が整っている場合、役員退職慰労金の存在は、企業全体の士気を向上させる要因となるでしょう。また、透明性と説明責任が徹底されれば、より良い組織文化が構築されます。

 

役員退職慰労金の準備と対策

役員退職慰労金の準備と対策は、企業経営において欠かせない要素です。適切な準備がなければ、予期しない費用が発生し、経営を圧迫する可能性があります。しかし、計画的に準備を行い、対策を講じることで、安定した経営を維持することができます。まずは現状を把握し、将来的な役員退職のスケジュールを見据えた計画を立てることが重要です。これにより、無駄なコストを抑え、円滑な経営を実現することができます。

長期的なプランニングの方法

役員退職慰労金の準備には、長期的なプランニングが重要です。まず、会社の財務状況を詳しく分析し、現状の資産と負債を把握します。これにより、実際にどれくらいの慰労金を積み立てる必要があるかを明確にします。そして、退職予定の役員ごとのスケジュールを立て、段階的に予算を組むのです。これによって、無理のない範囲で資金を確保することができ、経営に対するリスクを軽減することが可能です。

また、プランニングには定期的な見直しも欠かせません。特に、経済状況や会社の業績に応じて、計画を柔軟に修正することが求められます。そして、財務状況の変化や役員の個別の事情を反映させることが重要です。これにより、計画が現実的で有効なものになるのです。

最終的には、社内の関係者全員と情報を共有し、全員が一貫した理解を持つことが大切です。これにより、予期しない問題が発生した場合でも、即座に対応できる体制が整うのです。

外部専門家の活用

役員退職慰労金の準備には、外部専門家の活用が有効です。専門家は、財務、法務、税務の各分野で知識と経験を持っています。まずは、会社のニーズに合わせた専門家を選び、コンサルティングを受けることが重要です。この方法で、適切なアドバイスを得られます。

次に、外部専門家との連携を活かし、具体的な対策を講じます。専門家は、最新の法律や税制改正にも精通しているため、現在の法制度に基づく最適な方法を提案してくれます。そのため、リスクを最小限に抑えることができます。

さらに、専門家からのフィードバックを基に、社内のプランに反映させます。これにより、計画の精度が向上し、実効性が高まるでしょう。専門家の知見を活かすことで、より確実な退職慰労金の準備が可能となります。

 

役員退職慰労金とM&Aの関係について

M&Aによって、第三者に事業を承継し、代表職を退任する場合、株式譲渡による売却対価の一部を「役員退職慰労金」とするケースがあります。

参考記事事業承継とは? 経営者が知っておくべき基礎知識と選択肢について解説!」

株式譲渡の場合、売主が個人の場合、譲渡益に対して、所得税と復興特別所得税を合わせた15.315%に、住民税の5%を足した、20.315%が掛かりますが、役員退職慰労金の場合は、上述のとおり、退職所得控除を用いることが出来ます。

これにより、売り手の税負担が軽減されることとなりますが、買い手にとっては、支払金額を引き下げることが出来る余地が生まれるため、双方にメリットをもたらす可能性があります。

ただし、役員退職慰労金の額が不適切だと、税務署から否認されるリスクがあるため注意が必要であるため、事前に専門家に相談することをお勧めします。

 

役員退職慰労金に関するよくある質問

役員退職慰労金とは、役員が退職するときに支給される金銭のことです。この制度は企業によって異なりますが、多くの企業で採用されているため、よくある質問も多く寄せられます。具体的には支給額の決定方法や税金の扱いなどが主な疑問点です。これらの質問に対し、事前に理解を深めることが重要です。

よくあるトラブルとその解決策

役員退職慰労金に関するトラブルは少なくありません。一つ目のトラブルは、支給額に関するものです。役員と企業側で金額に対する認識が異なる場合、紛争が生じることがあります。このような場合には、事前に取り決めを文書化することが解決策となります。

二つ目のトラブルは、支給時期に関する問題です。役員が退職後すぐに慰労金を受け取れないケースがあります。これを防ぐためには、退職時期や支給時期について予め具体的に明記することが必要です。明確な規定を設けることで、トラブルを未然に防ぐことができます。

最後に税金に関するトラブルもあります。役員退職慰労金の税金処理が複雑なため、間違った申告をしてしまうことがあります。税理士や専門家に相談することで、この問題を回避することができます。正しい情報を得ることが重要です。

悩みや疑問の解消方法

役員退職慰労金に関する悩みや疑問を解消するための方法を紹介します。まずは、事前に企業の規定や制度をよく確認することが重要です。これにより、基本的な理解を深めることができます。

次に、わからない点があれば、早めに専門家に相談することが有効です。特に税金に関連した複雑な問題については、税理士や会計士に相談することで無駄なトラブルを避けることができます。相談する際には具体的な質問を用意すると効果的です。

最後に、定期的に関連情報をアップデートすることも大切です。役員退職慰労金に関する法律や規定は時々変更されることがあります。そのため、最新の情報を常に把握しておくことが、悩みや疑問の早期解消につながります。


執筆者 株式会社M&A共創パートナーズ M&Aアドバイザー 篠浦 隆宏 

株式会社みずほ銀行に入行し、富裕層向けの資産運用の提案に従事。株式会社日本M&Aセンターへ転職後、M&Aコンサルタントとして幅広い業種のM&Aをサポート。前職は、新興のM&Aブティックにて主にIT企業のM&A案件を担当し、数多くの譲渡企業の支援に従事。


 

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M&Aでセミリタイアを成功するための徹底ガイドと実践法を解説

M&Aにより株式を売却するオーナー様は、相応のキャピタルゲインを獲得します。そのため、オーナー様の中には、M&A後にセミリタイアと言われるライフスタイルに移行される方がいらっしゃいます。本記事では、セミリタイアの基本だけでなく、成功のためのガイドや実践法を説明します。

目次

セミリタイアとは何か

セミリタイアとは、働きながらも従来のフルタイム労働から解放され、より自由な時間を持つ働き方を指します。一般的には、資産を形成し、働かなくても生活できる準備を整えた上で、一部の収入を得るための軽い仕事を続けることが多いです。この働き方は、ストレスを減らし、健康を維持するためにも有効で、多くの人が興味を持つようになっています。また、自分の時間を大切にし、趣味や家族との時間を優先することができるからです。

定義と基本概念

セミリタイアの定義は、完全に働くことをやめるわけではなく、生活費を補う程度に働くことを意味します。基本概念として、一部の収入が必要となる場合でも、ライフスタイルのバランスを取ることが目標です。例えば、フルタイムの仕事をやめて、パートタイムやフリーランスの仕事に移行する形です。

この形態は、資産運用や節約術とも関連しており、将来のために早期から計画を立てることが重要です。働き方の柔軟性が増し、好きな場所で働くことが可能になります。結果として、ストレスが軽減され、より豊かな人生を送ることができるでしょう。

セミリタイアを選ぶ際には、自分自身のライフプランと一致させることが大切です。十分な準備が必要ですから、財務アドバイザーやファイナンシャルプランナーに相談することも考えてみてください。

セミリタイアの目的

セミリタイアの目的は、大きく分けて二つあります。一つ目は、フルタイム労働によるストレスの軽減です。長時間の労働に疲れたり、仕事中心の生活にストレスを感じたりすることから解放されるため、多くの人が求めるのです。

二つ目は、趣味や家族との時間を増やすことです。自由な時間が増えることで、旅行へ行ったり、趣味を深めたり、家族との大切な時間を過ごすことができます。また、健康面でもプラスになります。

セミリタイアは、自分の人生を再設計するための手段でもあります。自己成長や新たな経験を積む時間ができ、より充実感のある生活を送ることができるでしょう。このような多様な目的が、セミリタイアを目指す動機となるのです。

完全リタイアとの違い

完全リタイアとセミリタイアの違いは、働くか働かないかにあります。完全リタイアは、一般的に仕事を完全にやめることを意味し、定年退職後の生活を指します。一方、セミリタイアは、一部の収入を得るための軽い仕事を続けることを含むのです。

この違いにより、セミリタイアは経済的に柔軟です。働く時間が減ることで、ライフスタイルが向上し、精神的な余裕も増します。また、急激な収入減少のリスクを回避できる点も魅力です。

 

セミリタイアに必要な準備

セミリタイアを成功させるためには、しっかりとした準備が必要です。まずは財務計画を立てることが重要です。また、現在の支出を見直し、無駄を削減することで、経済的な不安を減らせます。さらに、自分のスキルや興味に応じた雇用の選択肢や副業を模索することも大切です。これらのステップを一つ一つ丁寧に行うことで、セミリタイアを実現させることができるでしょう。

財務計画の立て方

最初に行うべきは、詳細な財務計画を立てることです。まず、セミリタイアに必要な総額を把握しましょう。そのためには、現在の資産状況や将来の収入見込みを整理することが必要です。次に、具体的な支出項目をリストアップし、毎月の生活費を計算します。

これにより、退職後に必要な生活費が明確になります。また、予期せぬ出費に備えるための緊急予備費も確保することが大切です。これらを考慮した上で、毎月の貯蓄や投資計画を立てましょう。計画を見直しながら、堅実に貯蓄を続けることがセミリタイアの成功のカギです。

最終的には、目標金額に到達した時点で、安心してセミリタイア生活を始めることができるでしょう。計画をしっかり立てることで、経済的な安心感を持ちながら新しい生活を楽しむことが可能です。

支出の見直しと削減

次に取り組むべきは、現在の支出の見直しです。まず、家計簿をつけて日常の支出を全て記録し、どこにお金が使われているのかを把握してください。具体的な支出項目が明確になることで、削減すべき部分が見えてきます。

例えば、毎日の飲み物代やサブスクリプションサービスの見直しを行うことで、意外と大きな節約が可能です。また、不要な保険や高すぎる通信費を見直すことも有効です。これらの小さな削減が積み重なれば、大きな節約効果が得られます。

さらに、大きな支出項目である住宅費や光熱費についても見直しを行いましょう。エネルギー効率の良い家電や住宅改修に投資することで、長期的には大きな節約につながります。これにより、セミリタイア後の生活費を更に圧縮できるでしょう。

雇用の選択肢と副業

最後に、自分のスキルや興味に基づいた雇用の選択肢を考えることが重要です。まず、経験を活かして、複数の企業の顧問に就くケースが多いです。

また、自分の趣味や特技を生かしたビジネスを始めることも可能です。ブログやYouTube、オンラインのマーケットプレイスでの商品販売など、多様な選択肢があります。

これにより、セミリタイア後も収入源を確保できるため、経済的な不安を軽減することが可能です。自分に合った雇用形態や副業を見つけ、実際に試してみることが成功の鍵となるでしょう。自分らしいライフスタイルを築くために、柔軟に対応していきましょう。

 

セミリタイアの資産管理

セミリタイアを成功させるためには、資産の管理が非常に重要です。資産管理は、定期的な見直しと調整が必要となります。また、安定した収入源を確保するために、複数の投資先を持つことが望ましいです。計画的な資産管理が、長期的な生活の安定を支える柱となるでしょう。

投資戦略の立て方

投資戦略を立てる際には、まず自身のリスク許容度を確認することが重要です。リスク許容度が高い場合は、株式や外国為替などの高リスク高リターンの投資商品を検討すると良いでしょう。逆に、リスクを避けたい場合は、安全性の高い国債や定期預金を選ぶことが適しています。次に、目標を明確に設定し、投資期間や目標金額を決めることが必要です。最後に、多様な投資先に分散投資を行い、リスクの分散を図ることも大切です。

リスク管理とリターンのバランス

リスク管理とリターンのバランスを取ることは、投資の成功に不可欠です。リスクを管理するためには、定期的にポートフォリオを見直し、必要に応じて調整を行うことが重要です。また、リターンが思うように得られない場合は、投資戦略の見直しが求められます。リスクとリターンのバランスを保つためには、感情に左右されず、計画的かつ冷静に判断することが不可欠です。これにより、安定した成果を上げることができるでしょう。

不動産投資とそのメリット

不動産投資は、安定した収益源として人気があります。そのメリットの一つは、長期的な資産価値の保全です。さらに、定期的な家賃収入が得られるため、生活費を補う大きな助けとなります。不動産投資は、株式市場の変動に左右されにくい点でも魅力的です。これは、資産を多様化し、リスクを分散する手段としても有効です。また、税制上の優遇措置が利用できる点もメリットの一つです。これらの要因が、不動産投資の魅力を高めていると言えるでしょう。

 

セミリタイア後の生活設計

セミリタイア後の生活を豊かにするためには、綿密な計画が欠かせません。まず、生活費をどのくらいかかるか見積もりましょう。そして、職場環境の変化に対する適応も重要です。それに加えて、新しいライフスタイルを楽しむ方法も考えましょう。これらをバランスよく取り入れることで、セミリタイア後の生活を充実させることができます。

生活費の管理

生活費の管理は、セミリタイア後の生活において最も重要な要素の一つです。まずは、毎月の固定費と変動費をリストアップします。次に、必要に応じて無駄な支出をカットし、予算を割り当てます。例えば、食費や光熱費、交通費などが該当します。それだけでなく、予期せぬ支出にも備えて緊急資金を設けることも大切です。最初から無理のない範囲で設定すると良いでしょう。最後に、定期的に支出を見直しすることが、無駄を削減するための鍵です。

職場環境の変化と対応

職場環境の変化に対する適応も大切です。セミリタイアすることで、自分の会社から離れることになります。新しい環境に対しては、まずリラックスできる場所を見つけることが有効です。例えば、自宅の一部を仕事用のスペースとして整備することが考えられます。それにより、仕事とプライベートの切り替えがスムーズになるでしょう。また、オンラインでのコミュニケーション手段も活用すると、他の人との協力も円滑に進みます。適切な環境設定が、適応をスムーズにする手助けとなります。

新しいライフスタイルの楽しみ方

セミリタイア後、新しいライフスタイルを楽しむ方法を見つけることが大切です。趣味や興味を広げる絶好のチャンスでもあります。例えば、旅行やアウトドア活動に挑戦するのはどうでしょうか。新しい場所を訪れ、リフレッシュすることで、心身共に健康を保つことができます。それだけでなく、学習やボランティア活動にも取り組むと、社会とのつながりを感じることができるでしょう。そして、家族と過ごす時間を大切にすることも、新しいライフスタイルの一部です。これにより、豊かな生活を送ることが可能です。

 

セミリタイアにおける心理的準備

セミリタイアを決意するには、心理的な準備が必要です。経済的な準備が整っていても、精神的な負担がかかることが多いです。そのため、リタイア後の生活における心の準備を進めることで、より安心してスタートできます。特にストレス管理や新しい目標の設定、家族とのコミュニケーションが鍵になります。

ストレス管理法

セミリタイア後は日常生活が一変します。そのため、ストレスをため込まないための対策が大切です。例えば、毎日の散歩や趣味に没頭することは良い方法です。また、積極的にリラクゼーション法を取り入れることも有効です。

さらに、ストレスを感じた時には、自分を過度に責めないことも重要です。すぐに改善するための行動を取ることが、大事でしょう。友人と話す時間を持つこともストレス解消になります。

また、メンタルヘルスを専門とするカウンセラーとの相談も役立ちます。これにより、感じる不安やストレスを具体的に解消する策が見つかります。

新しい目標の設定

セミリタイア後には、新しい日々の生活に目的を持つことが大切です。まず、リタイア後に何をしたいかを明確にすることから始めます。具体的な目標は、生活に張りを与えるからです。

趣味や学習、新しいスキルの習得も良い目標となります。例えば、長年夢見ていた旅行や、新しいスポーツに挑戦することが含まれます。また、地域社会に貢献する活動も目標として良いでしょう。

目標を紙に書き出し、定期的に見直すことが効果的です。こうすることで、達成感を感じやすくなり、やる気も維持できます。目標を持つことはやりがいと充実感を提供します。

家族とのコミュニケーション

セミリタイア後は、家族との時間が増えるため、良好なコミュニケーションが重要です。まず、日常的に感謝を伝えることで、お互いの理解が深まります。コミュニケーションを円滑にするための第一歩です。

また、家族全員で話し合う時間を持つことも推奨されます。これにより、各々の意見や要望を理解することができます。具体的なプランを立て、一緒に過ごす時間を有意義にすることが可能です。

さらに、共通の趣味やプロジェクトに一緒に取り組むことも、有効です。これにより、家族の絆が強まり、一致団結した気持ちで日々を過ごせるようになります。家族との良好な関係は、充実したリタイア生活に欠かせない要素です。

 

セミリタイア後の自己啓発

セミリタイア後の生活は、自分の成長と充実感を追求する絶好の時期です。今まで忙しい仕事のために諦めていた夢や目標を再度見直し、新しい挑戦を続けていくことが大切です。自己啓発には、心と体の健康を維持する効果もあります。自身の価値観に基づいたライフスタイルを築くことで、充実した時間を過ごせるのです。この時期こそ、自己成長を目的に活動を広げましょう。

新しいスキルの習得

セミリタイア後、新しいスキルの習得は重要です。趣味や興味に基づいて選びましょう。たとえば、楽器の演奏や料理の資格取得です。新しいことを学ぶことで、脳を活性化し、日々の生活に刺激を与えます。また、これによって新たな人間関係も築けます。

さらに、オンラインコースや地域の教室を活用すると、効率的に学べます。現代では、インターネットを利用すれば、どこにいても多様な学習が可能です。友人や家族と学びの共有をするのも良いでしょう。学びの過程での達成感や喜びを分かち合うことで、絆も深まります。

このように、新しいスキルの習得は、新たな人生の楽しみを増やし、充実感を得る方法です。自己成長に繋がるとともに、新しい世界が広がります。セミリタイア後の生活をより豊かにするために、積極的に新しい技術や知識を取り入れていきましょう。

趣味の追求とその効果

セミリタイア後に趣味を追求することは、心身の健康に良い影響を与えます。釣り、絵画、ガーデニング等、自分が楽しいと思う活動に時間を費やしましょう。趣味に没頭することで、日常のストレスを忘れ、リフレッシュできます。趣味は人生を豊かにし、精神的な安定をもたらします。

また、共通の趣味を持つ人々と交流することで、新たな友人ができるでしょう。クラブ活動やサークルに参加すれば、同じ興味を持つ仲間と楽しい時間を共有できます。さらに、それによって自分の世界が広がります。

趣味の追求は、自己表現の場としても重要です。自分の作品を発信することで、自信につながります。また、趣味を通じて手先を動かすことで、脳の活性化も期待できるでしょう。生活に彩りを与える趣味の追求は、セミリタイア後の生活に欠かせないものとなるのです。

地域貢献とボランティア活動

地域貢献とボランティア活動は、セミリタイア後の自己啓発の一環です。自分の経験や知識を活かして、社会に貢献することができます。たとえば、地域の環境美化や子供たちへの学習支援です。これらの活動は、地域社会との関わりを深め、自分自身も成長させます。

ボランティア活動には、多くの利点があります。まず、他者との交流を通じて、感謝の気持ちを持てるようになるでしょう。次に、協力の大切さを学び、チームワークのスキルを磨けます。さらに、地域のイベントや活動に参加することで、地元の情報にも詳しくなれます。

また、ボランティア活動は、自己肯定感を高める機会でもあります。誰かの役に立つことで、生きがいや満足感を得られます。これにより、日常生活に目的を持ち、前向きに過ごすことができるでしょう。セミリタイア後の生活をより充実させるために、積極的に地域貢献とボランティア活動に参加しましょう。

 


執筆者 株式会社M&A共創パートナーズ M&Aアドバイザー 篠浦 隆宏 

株式会社みずほ銀行に入行し、富裕層向けの資産運用の提案に従事。株式会社日本M&Aセンターへ転職後、M&Aコンサルタントとして幅広い業種のM&Aをサポート。前職は、新興のM&Aブティックにて主にIT企業のM&A案件を担当し、数多くの譲渡企業の支援に従事。


 

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株式会社ottoによる鉄板焼ケルンを運営する株式会社大都会との資本提携について解説!

2024年9月2日、株式会社otto(本社:東京都渋谷区)と株式会社大都会(本社:埼玉県川越市)が資本提携を行いました。本提携に関し、両社の概要とその目的について解説いたします。

 

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株式会社ottoの概要

2008年創業の飲食店グループ。東京だけでなく、宮城、大阪、兵庫にて、約30店舗を展開。「泡包 シャンパンマニア」「ホンデポチャ」「オイスターハウス」「台中香」等様々な業態の飲食店を経営しております。

株式会社大都会の概要

1991年に開店した鉄板焼ケルン(埼玉県川越市)を運営。老舗鉄板焼レストランとして地元の方にも愛され続けている店舗です。

ソムリエとして従事したシェフ、 鉄板焼では唯一ミシュランの星を獲得した店で修業したシェフ、 期待の若手シェフを加えた個性あふれる焼き手体制で目の前で焼き上げる圧巻のパフォーマンスを行っているだけでなく、極上のA5ランク黒毛和牛や新鮮な魚介類と共にソムリエのお奨めワインも提供する老舗本格派のレストランです。

M&Aの概要・目的

株式会社大都会のオーナー様が後継者不在に悩んでおり、会社を第三者承継することを決意。一方、株式会社ottoは、大阪エリアを中心に現在までも事業承継を希望するオーナー様と資本業務提携に取り組んでおりました。株式会社ottoのもつホスピタリティーと多店舗展開のノウハウを活かすことで、鉄板焼ケルンは、これまで以上の事業拡大や店舗展開が可能になるため、本資本業務提携に至りました。

 


執筆者 株式会社M&A共創パートナーズ M&Aアドバイザー 篠浦 隆宏 

株式会社みずほ銀行に入行し、富裕層向けの資産運用の提案に従事。株式会社日本M&Aセンターへ転職後、M&Aコンサルタントとして幅広い業種のM&Aをサポート。前職は、新興のM&Aブティックにて主にIT企業のM&A案件を担当し、数多くの譲渡企業の支援に従事。


 

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事業承継税制とは? 制度の内容やポイントをわかりやすく解説!

事業承継税制は、次世代の経営者に事業を引き継ぐ際に利用できる有効な制度です。当該制度を活用することで、相続税や贈与税の負担を大幅に軽減することが出来ます。一方、事業承継税制の内容や要件は複雑です。本記事では、事業承継税制の基本から注意すべきポイントまでをわかりやすく解説します。

事業承継税制とは?

まず、事業承継とは、経営者が後継者に事業を引き継ぐことを指します。

参考記事 「事業承継とは? 経営者が知っておくべき基礎知識と選択肢について解説!

事業承継は、企業の存続と発展、そして雇用維持という観点から非常に重要な手続きですが、事業承継には、経営権の移譲、財産の移転、税金対策など、多くの課題が伴います。特に、事業承継に伴う相続税、贈与税の支払いは会社を存続の危機にもたらすことも少なくありません。そこで登場するのが、事業承継税制です。

 

事業承継税制の概要

事業承継により、多額の贈与税・相続税が発生すると、予想外の支出で経営が圧迫され、円滑に事業承継することが難しくなります。そこで、2009年度の税制改正で「事業承継税制」が創設され、事業承継税制を活用すれば、円滑化法に基づく認定のもと、一定期間にわたって要件を満たすと、事業承継のために後継者が取得した自社株式にかかる贈与税・相続税について、その納税を猶予し、一定の要件のもとで、納付免除や減免となる制度です。例えば、免除に関しては、後継者(2代目)が次の後継者(3代目)に株式等を贈与し、次の後継者(3代目)が事業承継税制の適用を受けた場合や後継者(2代目)に相続が発生した場合等となり、減免の要件に関しては、以降の章で説明いたします。

2018年度の税制改正では事業承継税制の活用を促進するため、新たに特例措置が設けられました。特例措置では、特例承継計画を提出することで、10年間の限定措置として、対象株式や納税猶予割合が拡充されました。具体的には、これまでの措置に加え、納税猶予の対象となる非上場株式等の制限(総株式数の3分の2まで)の撤廃や、納税猶予割合の引上げ(80%から100%)等がされた特例措置が創設されました。

なお、特例承継計画の提出期限は、2022年度及び2024年度改正の2度にわたり延長され、2026年3月31日までとなっているので期限に間に合うよう、十分注意しましょう。

 

贈与税・相続税の概要

事業承継税制を解説するにあたり、贈与税、相続税の仕組み、算出方法が前提となるので、それぞれについての概要をまず説明します。

①贈与税の仕組み

贈与税は、生前に財産を贈与した場合に課される税金です。贈与税の税率は、贈与された財産の価額によって異なります。贈与税は、事業承継において、先代経営者が後継者に事業を贈与する場合に発生する可能性があります。

②相続税の仕組み

相続税は、人が亡くなった際に、その財産を受け継いだ相続人に課される税金です。相続税の税率は、相続された財産の価額によって異なります。相続税は、事業承継において、先代経営者が亡くなった際に、後継者が事業を相続する場合に発生します。

 

一般措置と特例措置の特徴について

上記で説明したように2018年の改正で特別措置が追加されました。そこで一般措置と特別措置の違いを以下の表で比較しながら、説明をしていきます。なお、特例措置については、次の章で詳細について記載していますので、特例措置の活用を検討されている方は次の章を中心にご覧ください。

一般措置 特例措置
対象株式 発行済議決権株式総数の3分の2まで 全株式
適用期限 特になし 2027年12月31日までに贈与・相続により会社の株式を取得した経営者が対象
特例承継計画の提出 不要 必要
納税猶予割合 贈与100%、相続80% 100%
後継者 筆頭株主である後継者1人のみ 持ち株率10%以上の後継経営者3人まで
雇用確保条件 5年平均で相続・贈与時の80%以上を維持 雇用維持できない理由を都道府県に提出すれば納税猶予は継続される(事実上の撤廃)
相続・贈与から5年後以降の減免要件 民事再生や会社更生の際、その時点での評価額で相続税・贈与税を再計算し、超える部分の猶予税額を免除 「経営環境の変化を示す一定の要件」を満たす場合、譲渡や合併による消滅・解散時にも一般措置と同様の減免を導入可能

 

特例措置の詳細について

①贈与税・相続税の納税猶予制度について

後継者が相続⼜は遺贈(死因贈与を含む)により取得した株式等(ただし、議決権を⾏使することができない株式を除きます。)に係る相続税の100%が猶予されます。また、贈与税においても、手続きを行えば、通常支払う多額の贈与を猶予され、前任の経営者に相続が起こると、相続税の納税猶予へ切替えとなります。

②納税猶予制度の適用方法

まず、本制度の適⽤を受けるためには、経営承継円滑化法に基づく都道府県知事の「認定」を受ける必要があります。そのためには、特例承継計画の作成が必要となり、作成には認定支援機関の支援・助言が必須となります。

また、報告期間中(原則として相続税の申告期限から5年間)は代表者として経営を⾏う等の要件を満たす必要があり、その後は、後継者が対象株式等を継続保有すること等が求められます。また、後継者が死亡した等の⼀定の場合には、猶予された相続税が免除されます。

 

事業承継税制の要件

事業承継税制を活用するためには先代経営者、後継者、会社、事業承継税制スタート後それぞれが以下の要件を満たすことが必要です。

①先代経営者側に必要な要件

・先代経営者が会社の代表者であったこと

・相続開始または贈与の直前まで筆頭株主であったこと

・一族で議決権50%以上を超える株式を保有していること

・相続贈与時に代表を退任する、あるいは退任済み(贈与の場合)

②後継者側に必要な要件

・相続開始または贈与時、一族で総議決権数の過半数を保有するようになること

後継者が1人なら、最も多くの議決権数を保有することになり、後継者が2人または3人なら、総議決権数の10%以上の議決権数を保有し、後継者と特別の関係がある者の中で最も多くの議決権数を保有するようになること

・贈与時に20歳以上(2022年4月1日からは18歳以上)で、贈与の直前で3年以上役員であり、代表者であること

・相続開始の直前に役員であり、相続開始から5ヵ月後に代表者であること

③会社が満たすべき要件

・中小企業者であること

・従業員が1人以上いること

・上場会社、風俗営業会社ではないこと

・資産管理会社等に該当しないこと

④事業承継税制適用後に課される要件

<5年間>

・後継者が会社の代表者で筆頭株主

・後継者が猶予対象株式を継続保有

・雇用の8割以上を5年間平均で維持

 ※但し、「特例措置」においては、その正当性を証明できる資料等を提出すれば、8割を満たさずとも猶予継続

<5年経過後>

・後継者が猶予対象株式を継続保有している

 

事業承継税制の利点と欠点とトラブルの回避方法

利点

事業承継税制を利用することで、後継者は事業承継にかかる税金負担を大幅に軽減することができます。これにより、後継者は事業承継にかかる資金負担を軽減し、事業に集中することができます。 また、事業承継税制を利用することで、事業承継が円滑に進み、企業の安定的な経営を維持することができます。

欠点

事業承継税制は、税金負担を軽減できる一方で、いくつかのデメリットも存在します。

例えば、事業承継税制の適用には、いくつかの要件を満たす必要があります。これらの要件を満たせない場合は、事業承継税制の適用を受けることができません。また、事業承継税制の適用には、次章で説明する通り、都道府県知事への年次報告書、税務署への継続届出書の提出等の手続きが必要となります。これらの手続きが複雑で、時間や手間がかかる場合があります。

また、納税猶予期間中に規定の取り消し事由が発生した場合は、猶予されていた税額に利子を加算して納付することになってしまうので注意が必要です。

取り消し事由は相続・贈与ともに20項目以上ありますが、代表的な取り消し事由は以下のとおりです。

・後継者が代表者を退任した(精神障害や身体障害、要介護などやむを得ない状況を除く)

・同族の議決権数が過半数以下になった

・後継者の同族関係者が後継者より多くの議決権数を保有することになった

・納税猶予対象株式を譲渡した

・総収入金額がゼロになった

・資本金や準備金が減少した

トラブルの回避方法

事業承継税制利用時に発生しやすいトラブルとその回避方法について解説します。

事業承継税制を利用する際には、いくつかのトラブルが発生する可能性があります。例えば、事業承継税制の適用要件を満たしていないために、税制の適用を受けられない等です。また、事業承継税制の適用に関する手続きを誤って行い税務上のトラブルが発生する恐れもあります。これらのトラブルを回避するためには、事前に税理士などの専門家に相談し、適切なアドバイスを受けることが重要です。

 

手続きの流れ

手続きの流れについては、中小企業庁がまとめた以下の図をご確認下さい。

出典:法人版事業承継税制(特例措置) | 中小企業庁 (meti.go.jp)

 

まとめ

事業承継税制を活用することによって、相続税・贈与税の納税期限の猶予、さらには免税、減免をうけることができるため、承継後の会社の資金繰りに大きく役立ちます。

さらには、事業承継税制には、一般措置と特別措置があり、特別措置は10年間の期限付きで行われているため、提出期限に十分注意するようにしましょう。一方、事業譲渡税制の適用を受けるためには、先代経営者、後継者、会社のそれぞれが要件を満たすことが必要となり、適用後も取り消し事由に該当した場合は、支払いを命じられることになるので注意しましょう。

手続きや要件該当性の確認は複雑であるため、税理士などの専門家に相談をすることをおすすめします。

 


執筆者 株式会社M&A共創パートナーズ M&Aアドバイザー 篠浦 隆宏 

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事業承継・引継ぎ支援センターとは?その役割とサポート内容を徹底解説

事業承継・引継ぎ支援センターは、中小企業や個人事業主の事業承継を円滑に進めるための公的な相談窓口です。本記事では、センターの基本情報、提供される支援内容、実際の事例、そして利用方法について詳しく解説します。

事業承継・引継ぎ支援センターとは

センターの設立目的

事業承継・引継ぎ支援センターは、中小企業の円滑な事業承継を支援するために設立された組織です。日本の経済を支える中小企業にとって、事業承継は経営の安定と発展、そして地域社会への貢献という観点から非常に重要な課題です。しかし、後継者不足や経営ノウハウの不足、相続問題など、事業承継には多くの困難が伴います。そこで、事業承継引継ぎ支援センターは、中小企業がスムーズに事業承継を実現できるよう、様々なサポートを提供しています。

提供される主なサービス

事業承継・引継ぎ支援センターでは、以下の様な多岐にわたるサービスを提供しています。 
・事業承継に関する相談、アドバイス
・後継者探し、育成支援
・事業計画策定支援 
・資金調達支援 
・税務・法律相談 
・M&A仲介
・研修・セミナー開催
・情報提供
これらのサービスを通じて、事業承継を成功に導くための総合的なサポートを提供しています。

全国の支援ネットワーク

事業承・継引継ぎ支援センターは、全国各地に拠点を持ち、地域密着型の支援体制を構築しています。そのため、地域特性や企業規模に合わせたきめ細かいサポートが可能です。また、各地域の専門家ネットワークとも連携することで、より高度な専門知識や経験を提供することもできます。

事業承継・引継ぎ支援センターの具体的な支援内容

親族内承継支援

親族内承継は、事業を家族内で引き継ぐ方法です。後継者がすでに決まっている場合や、家族経営を継続したい場合に適しています。事業承継・引継ぎ支援センターでは、親族内承継を円滑に進めるためのサポートとして、以下の様なサービスを提供しています。
・後継者育成支援 
・事業計画策定支援 
・相続対策支援
・家族間での話し合いサポート
親族間での事業承継は、感情的な問題や相続問題が複雑に絡み合うことが多いため、専門家のサポートが必要となります。

第三者承継支援

第三者承継は、親族以外の人に事業を引き継いでもらう方法です。後継者がいない場合や、事業を外部に譲渡したい場合に適しています。事業承継・引継ぎ支援センターでは、第三者承継を成功させるためのサポートとして、以下の様なサービスを提供しています。
・後継者探し
事業評価
・譲渡条件交渉
・契約書作成
第三者承継は、事業の価値を適切に評価し、適切な相手を見つけることが重要です。事業承継・引継ぎ支援センターでは、豊富な経験と専門知識を持つスタッフが、同センターが運営する「後継者人材バンク」も活用し、第三者承継をスムーズに進めるためのサポートを行います。

M&A支援

M&A(合併・買収)は、事業を他の企業に統合する方法です。事業を拡大したい場合や、経営資源を効率化したい場合に適しています。事業承継・引継ぎ支援センターでは、M&Aを成功させるためのサポートとして、以下のようなサポートを行います。
・譲渡の進め方のアドバイスや譲渡先の紹介。
・譲渡条件等のすり合わせや各種書類作成などに必要な専門家を紹介。
・事業承継・引継ぎ支援センターに登録された民間M&A仲介業者、金融機関等の民間M&A支援機関を紹介。
・紹介を受けた登録支援機関が、譲渡企業にマッチした譲受企業を紹介し、マッチング及び譲渡契約成約までを実施。
・事業承継・引継ぎ支援センターと商工会議所等の創業支援機関が連携し、後継者不在の企業と起業を希望する人材とのマッチングを行い、成約にいたるまで支援。
また、民間のM&A支援会社では取組みにくいケースでも、弁護士、税理士等の専門家と連携して成約に向けた継続支援を行います。また、全国47都道府県の支援センターとの情報共有も図っており、遠隔地間のマッチングにも対応可能です。
M&Aは、複雑な手続きや交渉が必要となるため、専門知識と経験が不可欠です。事業承継・引継ぎ支援センターでは、中小企業診断士や金融機関OBなどのプロフェッショナルが、企業のニーズに合わせた最適なM&A戦略を立案。民間業者、金融機関等のネットワークも活用しながら、実行までサポートします。

事業承継の準備と進め方

事業承継の基本プロセス

事業承継は、以下の様な基本プロセスで進められます。
1.準備段階
・事業承継の必要性と目的を明確にする 
・後継者候補を検討する 
・事業の現状分析を行う 
・事業承継計画を策定する
2.承継段階 
・後継者への事業引き継ぎを行う 
・必要な手続きを行う 
・資金調達を行う
3. 移行段階
・後継者が事業を安定的に運営できるようサポートする
・事業承継後の体制を構築する
事業承継は、時間と労力を要するプロセスです。そのため、早いうちから準備を始めることが重要です。

後継者の選び方

後継者の選び方は、事業の将来を左右する重要な要素です。後継者を選ぶ際には、以下の様な点を考慮する必要があります。
・事業に対する熱意と能力
・経営手腕 
・コミュニケーション能力 
・倫理観
・健康状態
後継者候補が複数いる場合は、それぞれの能力や適性を見極め、事業に最適な人材を選ぶ必要があります。

事業承継計画の作成

事業承継計画は、事業承継をスムーズに進めるための指針となる重要なものです。事業承継計画には、以下の様な内容を盛り込む必要があります。
・事業承継の目的 
・承継方法 
・後継者
・承継時期 
・承継後の事業計画 
・資金計画 
・税務対策
・リスク管理
事業承継計画は、事前にしっかりと作成しておくことで、事業承継を円滑に進めることができます。

まとめ

事業承継・引継ぎ支援センターの役割

事業承継・引継ぎ支援センターは、中小企業の事業承継を支援する重要な役割を担っています。専門知識や経験豊富なスタッフが、事業承継に関する様々な課題解決をサポートすることで、中小企業の安定的な事業承継を支援しています。

利用方法と問い合わせ先

事業承継引継ぎ支援センターの利用を検討されている方は、まずはお近くのセンターに問い合わせてみてください。センターのウェブサイトや電話で、相談窓口やサービス内容について詳しく知ることができます。 事業承継は、企業にとって大きな転換期です。事業承継引継ぎ支援センターのサポートを活用することで、スムーズで成功する事業承継を実現することができます。

執筆者 株式会社M&A共創パートナーズ M&Aアドバイザー 篠浦 隆宏 

株式会社みずほ銀行に入行し、富裕層向けの資産運用の提案に従事。株式会社日本M&Aセンターへ転職後、M&Aコンサルタントとして幅広い業種のM&Aをサポート。前職は、新興のM&Aブティックにて主にIT企業のM&A案件を担当し、数多くの譲渡企業の支援に従事。


 

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中小企業の後継者不足問題 その原因と具体的な解決策について解説!

日本の中小企業は、後継者不足という深刻な問題に直面しています。本記事では、その原因と解決策について詳しく解説します。

中小企業の後継者不足問題とは?

後継者不足の現状と影響

中小企業の後継者不足問題は、日本経済の活性化を阻害する深刻な問題として認識されています。近年、高齢化が進むとともに、後継者となる人材が不足し、事業の存続が危ぶまれる企業が増加しています。後継者不足は、企業の経営悪化や従業員の雇用不安、地域経済の衰退など、さまざまな悪影響を及ぼします。

業種別の後継者不足状況

後継者不足は、業種によってその深刻度が異なります。特に、製造業や建設業、小売業など、伝統的な産業においては、後継者不足が顕著です。これらの産業では、長年の経験や技術が求められるため、若手社員がすぐに後継者として活躍するのは難しい状況です。また、近年では、IT業界やサービス業など、新規参入しやすい業種においても、後継者不足が問題視されるケースが増えています。これは、これらの業種では、常に変化に対応する柔軟性や新しい技術への適応能力が求められるため、経験豊富な人材が不足していることが原因と考えられます。

地域別の後継者不足状況

後継者不足は、地域によってもその状況が異なります。特に、地方都市や過疎地域では、人口減少や若者の流出が深刻化しており、後継者不足が顕著です。これらの地域では、企業の規模が小さく、経営資源も限られているため、後継者探しは困難を極めます。また、地域によっては、伝統的な産業が衰退し、新たな産業が育ちにくい状況も後継者不足を助長しています。

 

後継者不足の原因

親族が後継者になりたがらない理由

親族が後継者を引き継ぎたがらない理由は、さまざまな要因が考えられます。まず、事業の負担の大きさや責任の重さが挙げられます。中小企業では、経営者自身が多くの業務を担うことが多く、後継者も多岐にわたる業務をこなす必要があり、その負担は非常に大きいです。また、経営は常にリスクを伴うため、失敗した場合の責任も重く、親族がその責任を負うことをためらうケースも少なくありません。さらに、親族が事業に興味を持っていなかったり、他のキャリアを希望していたりするケースも考えられます。

従業員引継ぎの難しさ

従業員が後継者になる場合、経営者としての経験や知識、能力を身につける必要があります。しかし、中小企業では、経営者としての教育や研修制度が整っているケースは少なく、従業員が経営者としてのスキルを習得するのは容易ではありません。また、従業員が経営者になることで、社内の人間関係や権力構造が変化し、組織運営が混乱する可能性もあります。そのため、従業員が後継者になるには、十分な準備と計画が必要となります。

少子化の影響

少子化は、後継者不足問題を深刻化させる要因の一つです。少子化によって、将来的な労働力人口が減少するだけでなく、後継者候補となる人材も減少し、企業は後継者探しに苦労する状況となっています。特に、中小企業では、親族以外から後継者を探す場合、人材の確保が困難になるケースが多く見られます。

事業の未来に対する不安

後継者不足は、事業の未来に対する不安を生み出します。後継者がいない場合、事業は縮小または廃止せざるを得なくなり、従業員の雇用が失われる可能性があります。また、地域経済への影響も大きく、地域活性化の阻害要因となる可能性もあります。そのため、事業の存続を図るためには、後継者問題を早期に解決することが重要です。

 

中小企業の後継者問題に対する解決策

親族内承継のすすめ

親族内承継は、事業のノウハウや顧客との信頼関係を継承しやすいというメリットがあります。しかし、親族内承継では、事業の負担や責任を負うことへの抵抗感、家族間の確執、経営能力の不足など、さまざまな課題が生じる可能性があります。そのため、親族内承継を行う場合は、事前に十分な準備と計画が必要となります。

従業員の昇進で後継者を確保する方法

従業員を後継者として育成することで、事業のノウハウや企業文化を継承することができます。従業員を後継者として育成する場合は、経営者としての能力や資質を評価し、適切な教育や研修を提供することが重要です。また、従業員が経営者になることに対する不安や抵抗感を解消し、モチベーションを高めることが重要です。

外部人材の積極的な導入

外部人材を積極的に採用することで、新たな視点や知識、経験を企業に導入することができます。外部人材を採用する場合は、経営能力や事業に対する熱意、企業文化への適応能力などを評価することが重要です。また、外部人材がスムーズに企業に溶け込むよう、適切なサポートを提供することが重要です。

M&Aによる事業継承のメリット

M&Aは、事業をスムーズに継承できる方法の一つです。M&Aによって、事業のノウハウや顧客との信頼関係を継承することができます。また、M&Aによって、新たな資金調達や事業拡大の機会を得ることも可能です。しかし、M&Aは、企業規模や事業内容、経営理念など、さまざまな要素を考慮する必要があるため、慎重な検討が必要です。

事業承継・引継ぎ支援センターの利用

事業承継・引継ぎ支援センターは、後継者探しや事業承継に関する相談、支援を行っています。事業承継・引継ぎ支援センターでは、後継者候補の探し方、事業承継の方法、資金調達など、さまざまな情報を提供しています。また、事業承継に関する専門家を紹介してくれるケースもあります。

こちらの記事も参考にしてください。「事業承継とは? 経営者が知っておくべき基礎知識と選択肢について解説!

 

後継者不足の問題はなぜ早期に取り組む必要があるのか

早期計画の重要性

後継者不足問題は、早期に計画を立て、対策を進めることが重要です。後継者問題を放置すると、事業の存続が危ぶまれるだけでなく、従業員の雇用不安や地域経済への悪影響も懸念されます。そのため、後継者問題を早期に解決することで、事業の安定的な成長と地域経済の活性化に貢献することができます。

事業承継のための具体的ステップ

事業承継は、以下のステップを踏んで行うことが重要です。

1. 後継者候補の選定:後継者候補を複数名選定し、それぞれの能力や資質を評価します。
2. 事業承継計画の作成:事業承継の目標、方法、スケジュールなどを明確に定めた計画を作成します。
3. 後継者育成:後継者候補に対して、経営者としての能力や知識、経験を習得するための教育や研修を提供します。
4. 事業承継の実施:事業承継計画に基づき、事業の引継ぎを行います。
5. 事業承継後のサポート: 事業承継後も、後継者をサポートし、事業の安定的な成長を支援します。

事業を引き継ぐための研修プログラム

事業を引き継ぐための研修プログラムでは、経営戦略、財務管理、人事管理、法務など、経営者として必要な知識やスキルを習得することができます。また、事業承継に関する法律や税金、社会保険などの知識を学ぶことも重要です。研修プログラムは、外部の専門機関や大学、企業などが提供しています。

 

後継者問題まとめ

後継者問題の解決に向けて

後継者不足問題は、日本経済の活性化にとって深刻な問題です。後継者問題を解決するためには、企業は、親族内承継、従業員育成、外部人材の採用、M&Aなど、さまざまな方法を検討する必要があります。また、政府や自治体も、後継者不足問題の解決に向けて、事業承継支援、人材育成、資金調達などの支援策を強化していく必要があります。

早期の計画と実行

後継者問題は、早期に計画を立て、実行することが重要です。後継者問題を放置すると、事業の存続が危ぶまれるだけでなく、従業員の雇用不安や地域経済への悪影響も懸念されます。そのため、後継者問題を早期に解決することで、事業の安定的な成長と地域経済の活性化に貢献することができます。

専門家の相談とサポートを利用する

後継者問題の解決には、専門家の知識や経験が不可欠です。事業承継に関する専門家や弁護士、税理士などの専門家に相談することで、適切なアドバイスやサポートを受けることができます。専門家のサポートを活用することで、事業承継をスムーズに進めることができます。

 


執筆者 株式会社M&A共創パートナーズ M&Aアドバイザー 篠浦 隆宏 

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事業承継とは?経営者が知っておくべき基礎知識とM&Aなど4つの選択肢について解説!

事業承継とは、会社の経営を後継者へと引き継ぐことを意味します。経営者の高齢化に伴いその必要性は年々高まっております。企業のオーナー様が事業承継する際には、主に①親族内承継②従業員承継③M&A④廃業という4つの選択肢がありますが、どの選択肢が最適な方法かを検討するために、それぞれの選択肢の概要とメリット・デメリットについて解説します。

目次

事業承継とは?

事業承継とは、前述の通り、会社の経営を現在の経営者から別の後継者へと引き継ぐことをいいます。似たような言葉に事業継承がありますが、以下のような違いがあります。

「承継」…地位・事業・精神などを引き継ぐこと。

「継承」…身分・権利・義務・財産などを引き継ぐこと。

つまり、事業承継は、会社の経営権だけでなく、経営者の想いや理念、文化なども引き継ぐことを指します。例えば、中小企業の従業員は、経営者の人柄や長年の信頼があって、高いモチベーションで継続的に勤務しているケースが多いでしょう。中小企業の経営において、経営者の存在はとても大きいと言えるため、後継者選びが重要となります。

2020年3月31日に中小企業庁が策定した「中小M&Aガイドライン~第三者への円滑な事業引継ぎに向けて~」によると、日本全体において、令和7年(2025年)までに、平均引退年齢である70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人、うち約半数の約127万人が後継者未定と推計されています。

引用:中小企業庁(2020年3月31日)「中小M&Aガイドライン~第三者への円滑な事業引継ぎに向けて~」

つまり、数多くの中小企業が、後継者不在を理由に廃業せざるを得ない状況が想定されています。このまま、事業承継問題が解決されない場合、廃業による雇用喪失、連鎖倒産、生産力の低下等を招き、日本経済全体にとって大きなマイナスとなります。

 

事業承継をする後継者の存在について

事業承継の方法を考える際に、まずは、自身にすでに後継者候補となるような人が存在するか確認しましょう。

後継者候補となるような人が、ご子息等の親族の場合は「親族内承継」、現在経営されている企業の番頭さん等、会社を任せられる従業員がいる場合は「従業員承継」が選択肢となります。

一方、後継者候補となるような方が見つからない、もしくは、後継者候補の方が、後継者となる意思がなかった場合は、「M&A」による第三者承継や「廃業」が選択肢となります。

 

事業承継の選択肢① 親族内承継について

親族内承継とは

親族内承継は、オーナー様が保有する株式を、相続手続きにより、ご子息等の親族に承継する方法です。後継者候補となる方は、入社後すぐに経営ポジションに就く場合もあれば、事業承継のタイミングよりも早い段階で当該企業に入社し、営業や製造、管理部門等の様々な部署での現場経験を積んだ後、経営ポジションに昇格し、株式を承継するケースもあります。

親族内承継のメリット

まず、創業家としての地位を継続することが出来ます。承継後のオーナー様は創業者の親族であることから、創業者としての経営理念や哲学、会社の方向性が引き継がれやすく、従業員の会社への求心力を維持したまま事業承継を成功させる可能性が高いです。もちろん、退任後も会長や顧問として、引き続き企業に関与し、承継後のオーナー様、経営陣、従業員のフォローを行うことも出来ます。

このように企業の体制が大きく変わらないことから、従業員の雇用の維持や取引先との関係の継続が可能です。

親族内承継のデメリット

第1に、今後、会社の会社の運命が、承継後のオーナー・経営者の経営能力に左右されることが挙げられます。必要な経営能力が備わってないまま、親族内事業承継を推し進めることは、今まで大切に育ててきた会社の業績を悪化させる要因となります。

その他に、当該株式を相続財産として特定の後継者に引き継ぐため、相続人全員が納得感のある相続が出来ていない場合、トラブルの可能性もあります。また、現在のオーナー様が、会社の借入金に対し、経営者保証をしている場合、当該保証を承継後のオーナーに引き継ぐ必要もあります。

参考記事事業承継税制とは? 制度の内容やポイントをわかりやすく解説!

事業承継の選択肢② 従業員承継について

従業員承継とは

従業員承継とは、現在経営されている企業の中で、後継者として相応しい従業員に株式を譲渡し、オーナー・経営者のポジションを引き継ぐ方法です。当該従業員は、社長と二人三脚で会社の苦楽をともにしたメンバーや番頭さんと呼ばれるような方々等です。

従業員承継のメリット

会社のことをよく知っており、社内外の信頼が厚い従業員に承継できれば、引継ぎ後に経営方針が大きく変わる可能性も少ないでしょう。そのため、現在の従業員も今まで通り勤務でき、取引先とも現在の関係を維持できるケースが多いです。

従業員承継のデメリット

従業員へ事業承継をする場合、オーナー様が会社の株式を当該従業員へ売却することで、株式の譲渡がなされます。つまり、従業員は、当該株式の代金を支払わねばならず、多額の金銭を用意する必要があります。また、親族内承継と同様、現在のオーナー様の経営者保証を引き継ぐ必要もあります。

 

事業承継の選択肢③ M&Aについて

M&Aとは

M&Aは、Merger and Acquisitionsの略です。Merger=合併 Acquisitions=買収 と訳されるため、「M&A」は「会社や経営権の取得」を意味します。親族内承継や従業員承継と比較して、第三者承継と呼ばれます。

M&Aのメリット

M&Aには多くのメリットがあります。

第一に、事業承継を検討している企業の強みを活かしてくれたり、弱みを補ってくれる買い手企業が承継先であった場合、さらなる成長が可能になります。売り手企業様より買い手企業様のほうが企業規模が大きいケースがほとんどのため、買い手企業様の持つネットワークによる取引先の拡大や、ブランド力向上による採用の強化、従業員の定着が進む場合もあります。

第二に、オーナー様は事業承継により株式は譲渡しますが、顧問や会長という立場で継続勤務が可能です。買い手企業のうちの多くは、オーナー様に一定期間残留いただき、従業員の離反防止やノウハウの引継ぎを行います。

第三に、経営者の個人保証の買い手企業への引継ぎ、従業員の継続勤務、取引先との関係維持が出来るケースがほとんどです。

最後に、株式の譲渡対価を買い手企業より受け取るため、創業者利潤の獲得、言い換えると、EXITによるハッピーリタイアを実現できます。

M&Aのデメリット

M&Aによる事業承継を実現するためには、シナジーや株式譲渡価格等のオーナー様が求める条件に合う買い手候補企業を探す必要性がございます。自ら探すことは大変であるため、M&A仲介会社に依頼するケースが増えております。

また、前述の通り一定期間の残留を求められるため、早期退任を希望する場合は相応の苦労があります。

 

事業承継の選択肢④ 廃業について

廃業とは

文字通り、事業を廃する、つまり会社を清算することを指します。これにより事業運営は終了となりまる。

廃業のメリット

廃業メリットは、オーナー様が事業の負担から解放されることでです。

廃業のデメリット

廃業した場合、従業員の解雇や取引先への対応などを行わねばいけません。また、借入金残高があり、経営者保証がついている場合、こちらの返済の必要があります。

 

まとめ

このように、事業承継については、複数の選択肢があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。最適な事業承継を行うため、早い段階で将来の事業承継プランの検討をスタートし、専門家に相談することをお勧めします。

参考記事「事業承継・引継ぎ支援センターとは?その役割とサポート内容を徹底解説」


執筆者 株式会社M&A共創パートナーズ M&Aアドバイザー 篠浦 隆宏 

株式会社みずほ銀行に入行し、富裕層向けの資産運用の提案に従事。株式会社日本M&Aセンターへ転職後、M&Aコンサルタントとして幅広い業種のM&Aをサポート。前職は、新興のM&Aブティックにて主にIT企業のM&A案件を担当し、数多くの譲渡企業の支援に従事。


 

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