SES業界における資本業務提携の重要性は年々増しています。この記事では、SES業界の動向、資本業務提携のメリットや注意点、M&Aとの違いなどについて詳しく解説します。
目次
SES業界の現状と課題
SES業界の現状
SES業界は、特に近年、大きな成長を遂げています。スマートフォン・クラウドコンピューティングの普及といったIT技術の進歩による各企業のIT投資の増加に伴い、ITエンジニアの需要はますます高まっていることが、SES業界の成長にも繋がっています。しかし一方で、人材不足や多重下請け構造といった課題も抱えており、成長と比例して注目を浴びることも増えています。
SES業界が直面する課題
IT人材の不足は、SES業界にとっても深刻な課題です。特に、高度な専門知識やスキルを持つエンジニアは著しく不足しており、人材獲得競争が激化しています。また、多重下請け構造は、SES業界の利益率低下や労働環境の悪化につながる要因にもなっています。多重下請け構造では、下請け企業が中間マージンを積み重ねるため、最終的にエンジニアに支払われる報酬が低くなる傾向があり、エンジニアの離職率増加を招いてしまうケースも考えられます。人材不足が深刻なSES業界においては特に大きな課題の一つと言えるでしょう。
SES業界の資本業務提携の動向
SES業界における資本業務提携の意義
SES業界における資本業務提携は、IT人材の確保やそれに伴う技術力の向上、経営効率化を図る手段として重要です。資本業務提携を行うことで、企業は自社の経営資源を強化し、競争力を高めることができます。例えば、エンジニア不足解消のために、人材豊富な企業との資本業務提携を行うことで、安定的な人材供給体制を構築することもできます。また、技術力の向上を図るために、専門性の高い技術を保有する企業との資本業務提携を行うことで、新たな技術やノウハウを導入することも可能となります。
さらに、経営効率化を図るために、経営基盤の安定した企業との資本業務提携を行うことで、資金調達や業務改善(効率化)を推進することができます。
事例紹介
近年、SES業界では、資本業務提携やM&Aによる企業再編が進んでいます。
例えば、業務効率化パッケージの開発・販売を主力とするA社は、人材不足解消と技術力強化を目的として、SES事業を展開するB社との資本業務提携を行いました。A社は、B社に所属するエンジニアによって人材不足を解消し、B社は、A社の技術力を活用することで、既存顧客へのサービス強化を図りました。この事例のように、資本業務提携は、企業同士がそれぞれの強みを活かし、相乗効果を生み出す有効な手段となっています。
SESのM&Aと資本業務提携の違い
M&Aと資本業務提携は、どちらも企業同士が連携する手段ですが、その目的や方法が異なります。M&Aは、一方の企業が他方の企業を完全に吸収合併することで経営統合を行うものです。一方、資本業務提携は、企業同士が資本関係を構築し、相互に協力することで、事業を推進していくものです。M&Aは、経営統合を目的とするため、合併後の企業は、統合された企業として新たなスタートを切ります。一方、資本業務提携は、事業連携を目的とするため、合併後の企業は、それぞれの企業として独立性を保ちながら、協力関係を築きます。M&Aは、経営統合によるシナジー効果を期待できる一方、経営統合に伴うリスクも存在します。一方、資本業務提携は、経営統合よりもリスクが低く、柔軟な連携が可能となります。
昨今のSES業界では、事業譲渡や子会社化などのM&Aも積極的に行われています。
SES業界の資本業務提携のメリット
企業経営の安定化
資本業務提携により、企業は、経営の安定や事業の拡大、人材の質と量を強化する効果が期待できます。例えば、経営基盤の安定した企業との資本業務提携を行うことで、資金調達や経営管理のノウハウを導入することができます。また、エンジニア人材が豊富な企業との資本業務提携を行うことで、安定的な人材供給体制を構築することも可能となるでしょう。さらに、事業拡大を図るために、新たな市場への進出や新規事業を展開していくこともできます。
技術力の向上
提携により、相互の技術が補完され、顧客に対するサービスの質を高めることが可能となります。例えば、専門性の高い技術を持つ企業との資本業務提携を行うことで、自社エンジニアの技術力を強化することもできます。また、新たな技術やノウハウを導入することで、幅広い顧客ニーズに対応したサービスを提供できるようにもなるでしょう。さらに、技術開発のスピードアップを図ることで、他社との競争を優位に進めることも可能となるかもしれません。
事業リスクの軽減
資本業務提携により、単独企業では対応しづらい事業リスクを分散させることができます。特にIT企業では顕著ですが、市場変動や競合企業の出現など、事業リスクは常に存在します。資本業務提携を行うことで、リスクを共有し、分散させることができるだけでなく、提携企業の経営資源を活用することで、リスクヘッジを強化することができます。
資本業務提携の際の注意点
売却先の選定
資本業務提携を行う際は、売却先の企業文化や経営方針が自社と合うかどうかを慎重に見極める必要があります。企業文化や経営方針が異なる企業との提携は、経営統合後の摩擦や混乱につながる可能性があります。そのため、提携先を選ぶ際には、企業文化や経営方針を十分に調査し、自社との適合性を確認するべきでしょう。また、提携先の経営陣や従業員の能力や経験が不足している場合、経営統合後の事業運営に支障をきたす可能性があります。そのため、提携先の経営陣や従業員の情報についても、事前に調査しておくことが重要です。
従業員への情報共有
資本業務提携決定後のスムーズな事業進行のためには、従業員への適切な情報共有が欠かせません。従業員は、資本業務提携によって自分の仕事や立場がどのように変わるのか、不安を感じることが少なくありません。そのため、資本業務提携の内容や目的、従業員への影響などを、事前にしっかりと説明しておくことが重要です。その際は、従業員の意見や質問に耳を傾け、不安解消のために行動することも大切です。従業員が資本業務提携に対して理解と納得を得ることができれば、経営統合後の事業運営がスムーズに進みます。
事前準備の重要性
資本業務提携を成功させるためには、事前に十分な準備期間を確保し、デューデリジェンスを徹底することが必須と言えます。デューデリジェンスとは、提携先の企業価値や経営状況などを調査することです。精度の高いデューデリジェンスを行うことで、提携先の企業価値や経営状況を正確に把握することができます。また、提携先の企業文化や経営方針、従業員の能力や経験なども調査することで、経営統合後の事業運営に支障をきたす可能性を事前に把握することができます。デューデリジェンスは、資本業務提携を成功させるための非常に重要なプロセスです。
まとめ
SES業界は、IT需要の拡大により近年は特に大きく成長していますが、同時に人材不足や多重下請け構造といった課題も抱えています。資本業務提携は、これらの課題を克服し、企業の持続的成長を促進する有効な手段のひとつにもなります。資本業務提携は、企業にとって大きな転換期となる可能性を秘めているからこそ、検討する際には、事前に十分な調査と準備を行い、自社にとって最適な提携先を見つけることが重要です。資本業務提携を成功させることで、新たな事業機会を創出し、持続的な成長を実現することも可能となるでしょう。
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昨今、ITエンジニアの人材不足を背景に、多くの企業が安定的な継続成長モデルを作りやすいSES事業へ参入しています。このように参入企業が増加することで競争は一層激しさを増しており、SES業界で成功を収めるためには、明確な戦略と実行のための運営ノウハウが不可欠と言えるでしょう。
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執筆者 株式会社M&A共創パートナーズ SESコンサルタント 松下 京平
当時IT業界は未経験だったものの、約2ヶ月で400社を超える企業との提携関係の構築に加え、50名以上の自社エンジニア全員の営業を担当。2023年に人事担当へ転向後、主にエンジニア採用業務へ従事し、年間で約100名の経験者エンジニアの採用を実現。
SES企業の成長に関わる広範な業務を、一貫して現場主義で対応し、早期の黒字化を実現。
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