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DESとは?デッド・エクイティ・スワップの仕組みやメリット・デメリットを解説!
2024.08.25
デッド・エクイティ・スワップ(DES)とは、企業の財務リスクを軽減するために重要な手法の一つです。この記事では、DESの基本的な概念から、そのメリット・デメリット、税務上のポイントや実際の手続き方法について詳しく解説します。
目次
DESとは
DESの基本概念
デッド・エクイティ・スワップ(DES)とは、債務者である企業が債権者に対して、債務の返済代わりに自社の株式を発行して渡すことで、債務を株式に転換する取引のことです。簡単に言えば、借金返済の代わりに、会社の株を発行して債権者に渡すことで、借金を帳消しにする方法です。
DESの導入背景
DESの手続き方法
現物出資型の手続き
現物出資型の手続きが一般的です。債務者は債権者に対して、借入金を出資とみなして、相当額の自社の株式を現物で交付する仕組みです。株式の交付の多くは第三者割当増資により行われます。このような手続きのため、DESを実施するとき、現金の移動はありません。
金銭出資型の手続き
金銭出資型の手続きでは、債務者は、債権者に対して自社の株式を発行する代わりに出資を受けます。そして、債務者は、当該出資金により債権者に対し、借入金の返済を行います。
手続き上の注意点
1. 債権者の同意
DESを行うためには、債権者の同意が必要です。債権者は、DESによって債務が消滅し、代わりに株式を取得することになります。そのため、債権者はDESによって得られる利益とリスクを十分に検討する必要があります。
2.株式の発行価額
株式の発行価額は、債務額、会社の経営状況、将来の成長性などを考慮して決定する必要があります。発行価額が低すぎると、債権者の利益が損なわれる可能性があります。逆に、発行価額が高すぎると、債務者の経営権が希薄化してしまう可能性があります。
3.税務上の影響
DESのメリット
債務者にとってのメリット
債務者にとってのDESのメリットは、以下の通りです。
1. 債務負担の軽減
DESによって、債務を株式に転換することで、債務の返済負担を軽減することができます。これにより、経営資源を事業の立て直しや成長に集中させることができます。
2.経営権の維持
DESによって、債務を株式に転換することで、経営権を維持することができます。債務の返済に追われる状況から脱却し、経営の安定化を図ることができます。
3.財務体質の改善
DESによって、債務を株式に転換することで、財務体質を改善することができます。債務比率を低下させることで、銀行からの借入が容易になり、事業の拡大や投資がしやすくなります。
債権者にとってのメリット
債権者にとってのDESのメリットは、以下の通りです。
1. 債権回収の確実性
DESによって、債務を株式に転換することで、債権回収の確実性を高めることができます。債務者が倒産した場合でも、株式を取得することで、債権の一部を回収することができます。
2.将来の収益分配
DESによって、債務を株式に転換することで、将来の収益分配を受けることができます。債務者が成長した場合、株式の価値が上昇し、債権者はその価値に応じた収益を得ることができます。
3.経営への関与
DESによって、債務を株式に転換することで、経営への関与が可能になります。債権者は、株式を取得することで、株主としての権利を行使することができます。
双方にとっての長期的メリット
DESのデメリット
債務者にとってのデメリット
債務者にとってのDESのデメリットは、以下の通りです。
1. 経営権の希薄化
DESによって、債務を株式に転換することで、経営権が希薄化してしまう可能性があります。債権者が多数の株式を取得した場合、債務者の経営への影響力が低下する可能性があります。
2.株式の価値下落リスク
DESによって、債務を株式に転換することで、株式の価値が下落するリスクがあります。債務者の経営状況が悪化した場合、株式の価値が下落し、債権者の損失に繋がる可能性があります。
3.税務上の負担
DESは、税務上の影響が大きい取引です。債務者は、DESを行う前に、税務専門家に相談して、税務上の影響を十分に検討する必要があります。
債権者にとってのデメリット
1. 債権回収の遅延
DESによって、債務を株式に転換することで、債権回収が遅延する可能性があります。債務者の経営状況が悪化した場合、株式の価値が下落し、債権回収が困難になる可能性があります。
2.経営への影響力
DESによって、債務を株式に転換することで、経営への影響力が低下する可能性があります。債権者は、株式を取得することで、株主としての権利を行使することができますが、経営への影響力は限定的です。
3.株式の価値下落リスク
DESによって、債務を株式に転換することで、株式の価値が下落するリスクがあります。債務者の経営状況が悪化した場合、株式の価値が下落し、債権者の損失に繋がる可能性があります。
注意点とその対応
DESを行う際には、以下の注意点を考慮する必要があります。
1. 債務の免除
DESによって、債務が免除される場合、債権者は債務の免除によって利益が生じる可能性があり、それに伴い法人税額が増えるケースがあります。
2. 株式の発行価額
株式の発行価額が適正でない場合、債務者または債権者は、税務上のペナルティを受ける可能性があります。
3. 贈与税
場合によっては、DESが、債務者が債権者に株式を贈与したとみなされ、贈与税が発生する可能性があります。
これらのリスクを回避するためには、DESを行う前に、弁護士や税務専門家に相談して、適切な手続きを行う必要があります。
M&AにおけるDESの活用事例
相続税対策としてのDES
社長から自らが経営する企業に対する貸付金は、金銭債権として相続財産となり相続税の課税対象となります。
そのため、社長の貸付金を株式に転換することによって、同族会社株式の相続税評価で、より低いな相続税の計算をすることが可能となります。
但し、上述のようなデメリットや注意点、手続き面の手間を考慮にいれ、弁護士や税務専門家に相談して、検討する必要があります。
実際の成功事例
まとめ
執筆者 株式会社M&A共創パートナーズ M&Aアドバイザー 篠浦 隆宏
株式会社みずほ銀行に入行し、富裕層向けの資産運用の提案に従事。株式会社日本M&Aセンターへ転職後、M&Aコンサルタントとして幅広い業種のM&Aをサポート。前職は、新興のM&Aブティックにて主にIT企業のM&A案件を担当し、数多くの譲渡企業の支援に従事。
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