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アドバイザリー契約書とは?M&Aにおける重要な契約の基本・内容・締結プロセスについて解説!

2024.09.07

M&Aにおけるアドバイザリー契約書は、取引成功の鍵となる重要な文書です。本記事では、その基本と実務について詳しく解説します。

アドバイザリー契約書の基本

アドバイザリー契約書とは

アドバイザリー契約書とは、企業がM&Aを行う際に、専門的な知識や経験を持つアドバイザーに、取引のサポートや助言を依頼する契約です。アドバイザーは、企業のニーズや状況に応じて、M&A戦略の策定、ターゲット企業の選定、デューデリジェンスの実施、交渉、契約締結、完了までの一連のプロセスを支援します。

アドバイザリー契約書の重要性

M&Aは、企業にとって非常に複雑でリスクの高い取引です。そのため、専門的な知識や経験を持つアドバイザーのサポートは不可欠です。アドバイザーは、企業がM&Aを成功させるために、以下の様な重要な役割を果たします。

・M&A戦略の策定: 企業の経営目標や成長戦略に基づいた最適なM&A戦略を策定します。

・ターゲット企業の選定:企業のニーズに合致したターゲット企業を探索し、選定します。

・交渉:ターゲット企業との交渉を円滑に進め、有利な条件で合意を成立させます。

・契約締結: M&A契約書の作成、レビュー、交渉を行い、契約締結を支援します。

・完了:M&A取引の完了まで、必要な手続きをサポートします。

アドバイザーのサポートにより、企業はM&Aのリスクを軽減し、成功の可能性を高めることができます。

アドバイザリー契約書の形態

専任契約と非専任契約

アドバイザリー契約書には、専任契約と非専任契約の2つの形態があります。 

・専任契約:特定のアドバイザーにM&A業務を専任で委託する契約です。企業は、専任契約を締結することで、アドバイザーからより密接なサポートを受けることができます。

・非専任契約:複数のアドバイザーと契約し、それぞれの専門性を活かしてM&A業務を進める契約です。企業は、非専任契約を締結することで、複数のアドバイザーから様々な視点でのアドバイスを受けることができます。

専任契約と非専任契約のどちらが適しているかは、企業の規模、M&Aの規模、取引の複雑さ、アドバイザーとの関係性などによって異なります。

複数のアドバイザーとの契約

複数のアドバイザーとの契約は、それぞれのアドバイザーの専門性を活かすことができる一方で、以下の様な注意点があります。

・情報共有:複数のアドバイザー間で情報共有がスムーズに行われないと、情報漏洩や矛盾が生じる可能性があります。

・責任の所在:複数のアドバイザーが関与する場合は、責任の所在が明確でないと、トラブルが発生する可能性があります。

・費用:複数のアドバイザーとの契約は、費用がかさむ可能性があります。

複数のアドバイザーとの契約を検討する場合は、これらの注意点を十分に考慮する必要があります。

アドバイザリー契約書の内容

報酬体系

アドバイザリー契約書における報酬形態には、以下の様なものがあります。

・着手金:アドバイザリー契約締結時に支払う報酬です。

・中間金:M&Aの検討が進み、意向表明書や基本合意書の締結時に発生する報酬です。

・成功報酬: M&A取引が成立した場合にのみ報酬が発生する方式です。主にレーマン方式が用いられます。

・時間制: アドバイザーが実際に作業した時間に応じて報酬が発生する方式です。

・固定報酬:M&A取引の規模や内容に応じて、事前に固定された報酬を支払う方式です。

報酬形態は、企業のニーズやアドバイザーとの交渉によって決定されます。
上記のアドバイザーに対する手数料以外発生する費用に関しても、アドバイザリー契約で規定します。

直接交渉の条件確認

M&A専門業者が売り手や買い手の交渉を進めていくため、買い手、売り手同士で直接交渉を行うことは原則禁止であるケースがほとんどです。中小企業庁が定めた「中小M&Aガイドライン(第2版)」(令和5年9月)では、対象を当該M&A専門業者が関与・接触し、紹介した候補先のみとし、アドバイザリー契約が終了するまでの期間に限定しています。

テール条項

テール条項とは、M&Aの交渉が成立しないままアドバイザリー契約が終了した場合、一定期間内に売主が譲渡を行ったときに、その契約が終了しているにも関わらず、手数料等を請求できる条項です。一定期間のことを「テール期間」といい、テール期間内ならM&A専門業手数料を請求できることを「テール条項」と呼びます。
そのため、テール期間の確認はアドバイザリー契約締結時において重要です。なお、ガイドラインでは、テール期間は最長でも2年~3年以内を目安とし、テール条項の対象は、あくまで当該M&A専門業者が関与・接触し、譲り渡し側に対して紹介した譲り受け側のみに限定する旨を規定しています。

途中解約条項

M&A仲介会社と結ぶアドバイザリー契約には、途中解約条項を盛り込むようにしましょう。例えば、仲介会社が売り手や買い手のリスクを考慮せずに成約を進めようとした場合、契約を白紙にできるよう盛り込んでおく方法です。 M&Aは、自社にとって大きな経営判断です。交渉の途中でM&Aを撤回するケースも出てくるでしょう。
その際に途中解約の条項がなければ、契約期間中は費用を支払い続けなければなりません。 いつでも契約を解除できるといった条項は難しいかもしれませんが、アドバイザーと妥当な期間を定めて事前に契約の解除を申し出るといった条項であれば問題はないでしょう。しかし、途中解約には違約金を求められケースもあるため、注意が必要です。

専任条項

上記で説明した専任契約を行う場合、専任契約の期間やセカンド・オピニオンに関し、規定することが重要です。

専任期間に関しては、長くても6カ月~1年程度の期間で設定しましょう。あまりに長すぎると、依頼したアドバイザーから候補企業の紹介が計画より少ない場合等に、いつまでも当該アドバイザー以外に依頼が出来ない状態に陥ります。

セカンド・オピニオンとは、不安点や懸念事項、プロセスの適正性等について、現在契約中のM&A専門機関以外のM&Aアドバイザーの助言を受けることです。こちらについても、セカンド・オピニオンの取得を許容するようアドバイザリー契約を締結することをお勧めします。

アドバイザリー契約書の締結プロセス

契約前の段階

アドバイザリー契約書を締結する前に、以下の様な準備と手続きを行う必要があります。

・アドバイザーの選定: 企業のニーズに合致したアドバイザーを選定します。

・アドバイザーとの交渉:アドバイザーとの間で、業務範囲、報酬、費用負担などを交渉します。

・契約書の作成:アドバイザーとの間で、契約書を作成します。

アドバイザーの選定は、M&Aの成功に大きく影響するため、慎重に行う必要があります。

契約締結時の注意点

アドバイザリー契約を締結する際には、以下の様な点に注意する必要があります。

・業務範囲の明確化:アドバイザーが担当する業務範囲を明確に定める必要があります。

・報酬の明確化: アドバイザーの報酬を明確に定める必要があります。

・費用負担の明確化:費用負担を明確に定める必要があります。

・責任の所在: アドバイザーの責任を明確に定める必要があります。

・契約期間:契約期間を明確に定める必要があります。

・解約条項:解約条項を明確に定める必要があります。

これらの点を明確に定めることで、トラブルを回避することができます。

契約締結後のフォローアップ

アドバイザリー契約を締結した後も、以下の様なフォローアップやモニタリングを行う必要があります。

・進捗状況の確認:アドバイザーの業務進捗状況を確認します。

・報告書の提出: 成功報酬以外に、業務進捗状況や調査結果などを報告してもらいます。

・費用精算:アドバイザーへの費用精算を行います。

これらのフォローアップやモニタリングを行うことで、M&A取引を円滑に進めることができます。契約書に関しては、弁護士にチェックしてもらうことをお勧めします。

まとめ

本記事では、M&Aにおけるアドバイザリー契約書の基本と実務について解説しました。アドバイザリー契約書は、企業がM&A取引を成功させるために不可欠な契約です。適切なアドバイザーを選定し、契約内容をしっかりと確認することで、M&A取引を円滑に進めることができます。

執筆者 株式会社M&A共創パートナーズ M&Aアドバイザー 篠浦 隆宏 

株式会社みずほ銀行に入行し、富裕層向けの資産運用の提案に従事。株式会社日本M&Aセンターへ転職後、M&Aコンサルタントとして幅広い業種のM&Aをサポート。前職は、新興のM&Aブティックにて主にIT企業のM&A案件を担当し、数多くの譲渡企業の支援に従事。


 

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