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CVCとは?VCとの違い・特徴・メリット・デメリットについて解説!
2024.10.17
CVCとは、コーポレートベンチャーキャピタルの略称です。近年、多くの企業がCVCを立ち上げ、スタートアップ企業に対して、積極的に投資を行っております。
本記事では、CVCに関して、その特徴やVCとの違い、メリット・デメリットについて解説します。
目次
CVCとは?
CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)とは、事業会社が自己資金でファンドを設立し、スタートアップ企業に対して、出資とともに戦略的支援を行う投資手法です。
なお、自社でファンド形態をとるケースのみならず、専門のVCファンドと組む形態をとる場合もあります。ファンド形態にする場合、監督庁への届け出や従業員の報酬体系を変更するなど本格的な手続きが必要になるため、自社の戦略的投資予算を切り出したものをCVCと呼ぶ場合もあります。
CVCとVCの違い
一般的なベンチャーキャピタル(VC)とCVCの最大の違いは、その目的と出資の背景にあります。
VCは主に収益性を追求し、将来のキャピタルゲインを目指して出資する一方、CVCは事業会社の戦略的目標を達成するための手段として使われることが多いです。
VCは幅広い産業や分野に投資し、リスク分散を図りますが、CVCは自社のコアビジネスに関連する分野や技術に特化して投資します。このため、CVCは自社の持つ資源や専門知識を最大限に活用することができます。
また、VCは短期間でのリターンを重視するため、投資先の企業に対しても短期的な成長圧力をかけることが多いです。一方、CVCは長期的な視点で投資を行うため、投資先企業も安定した成長を見込みやすいと考えられています。
VCに関しては、「VCとは?仕組みとメリット・デメリットについて解説!」の記事も御覧ください。
事業会社側がCVCを設立するメリット・デメリット
メリット
新規事業立ち上げのコストとリスクの削減
M&Aの場合は株式を半数以上買い取ったり、事業譲渡として対価を支払う必要があるので多額の支出を余儀なくされます。一方で、CVCによる投資は、M&Aと異なり、直接的な経営権は獲得できないものの、投資額を抑えながら、自社の事業とのシナジーを生み出すことが可能です。
また、ハイリスク・ハイリターンと言われるスタートアップ投資であっても、大企業であればそのリスクを一定程度許容できる財務基盤があります。このため、企業のとっては投資のリスクを統制しつつ、新たな成長機会を探ることが可能となります。
新技術の獲得や新市場の開拓
新技術の開発には、多額の設備投資、人材採用、技術やノウハウの入手などが必要になります。加えて、新市場への進出には、相応の時間も資金も労力を要します。
CVCによって、新興企業に投資することにより、投資先企業の設備や人材、ノウハウをそのまま活用することが出来ます。さらには、企業と投資先の連携により、スピーディーに市場ニーズに対応することも可能となります。
スタートアップ企業による革新的なアイデアと事業会社の経営資源の融合
CVCはM&Aと異なり、経営権がスタートアップ企業の創業者に残るケースがほとんどです。そのため、スタートアップ企業の創業者が、引き続き事業を遂行し、古い企業にはないクリエイティブな事業を進めることができます。スタートアップ企業のイノベーティブなアイデアと事業会社が有する経営資源の融合で、革新的な商品開発や事業分野の創出が見込まれます。
デメリット
財務への負担
スタートアップの事業が失敗する可能性も少なからず存在します。そのため、事業会社にとっては、投資回収が出来ず財務的な損失が発生する恐れもあります。
長期戦であること
上記で述べたように、VCによる投資とは異なり、キャピタルゲインを直接の目的としていないため、CVCによるスタートアップ企業への投資は、結果が出るまでに相応に長い時間が要します。半年や1年で結果が出るケースは少なく、数年単位の時間が求められます。
また、未上場のスタートアップ企業に対する投資であるため、結果が出るまでの間、売却などを通して利益を得ることもできません。
スタートアップ企業側へのメリット・デメリット
メリット
自社のブランド力の向上
規模が大きく、知名度のある事業会社からの投資を得られることでスタートアップ企業の社会的信頼につながり、自社のブランド力が向上します。その結果、他のVCからの投資を受けやすくなり、資金調達が容易になるというメリットがあります。
事業会社によるサポート
スタートアップ企業はこれまで積み上げてきたノウハウや外部企業とのネットワークがないことで、事業をグロースさせることが出来ないケースもあります。 CVCから投資を受けることにより、事業会社の経営資源を利用することができるため、事業会社が長い時間をかけて培ってきたノウハウやネットワークを活用することが出来、事業の成長を実現することが可能です。
投資による資金調達を行うことができる
融資による資金調達の場合は、借入先である銀行に対し、返済期限までに借入金額を一定金額ずつ弁済する義務を負い、さらには利息の支払いを求められるため、返済額、返済期限を考慮に入れて、事業を進めなければなりません。
一方で、CVCから投資を受ける場合は、初めから事業会社は長期的な視点で投資していること、融資でなく投資のため、決まった返済期限はありません。
デメリット
経営の自由の低下
事業会社が一定割合の株式を保有していることから、スタートアップ企業の経営・事業方針に関与するようになる可能性も考えられます。CVCは出資をしているからといって、必ずしもベンチャーの重要な経営の意思決定を出来るわけではありませんが、事業会社も自身の利益を高めるためにスタートアップ企業の経営への介入を図るケースも少なくありません。
事業会社の競合他社との取引制限
CVCから投資を受けた場合、資本関係が生じるため、事業会社の競合他社に当たる企業との取引を行うことが難しくなるおそれがあります。
主要なCVCの企業
以下では、具体的な海外CVCや国内CVCを紹介し、その特徴について説明します。
NTTドコモベンチャーズ
2008年にNTTドコモの子会社として設立されたCVCです。携帯キャリアの市場は常に競争が激しいことから、通信事業以外でのコンテンツ力の強化により、他キャリアとの差別化を図る戦略の下、投資を行っています。
2024年10月12日現在、同社のHPによると投資先149社、IPO26社の実績。2024年もすでに11社に投資実行し、例えば、以下の企業のように、エンタメ、インフラ、ヘルスケアと様々な領域に展開しております。
トータルフューチャーヘルスケア株式会社:2024年10月4日出資、ヘルスケア領域における「急変の早期発見」および「軽症での早期発見」ソリューションの開発
パラレル株式会社:2024年2月14日出資、友達と遊べるたまり場アプリ「パラレル」の企画・開発・運営
dhost Global株式会社:2024年8月27日出資、モバイルネットワークオペレータおよびISP向けの屋内インフラシェアリング事業
IPO実績では、株式会社SHIFT、株式会社ジモティー、セーフィー株式会社、株式会社スペースマーケット など、今となってはお馴染みの有名企業の成長をサポートしてきました。
NTTドコモベンチャーズ 公式HP参照 https://www.nttdocomo-v.com/portfolio/
Zベンチャーキャピタル
2012年にヤフーにより設立されたCVCで、主にCommerce、Media、AI等のインターネット事業に対して投資を行っており、投資先は約200社に上ります。新規事業に投資する方針に加え、ヤフーの事業分野であるインターネット事業でのシナジーを図ることを目的としています。
具体的な投資先には、オンライン印刷通販を行うラスクル株式会社や、「ビズリーチ」でお馴染みのビジョナル株式会社、マーケティングソリューションの口コミグルメサイトのRettyがあり、中には上場を果たしたベンチャー企業もあります。また、最近では投資先は国内にとどまらず、アジア・アメリカなど世界規模に及んでいます。
Zベンチャーキャピタル 公式HP参照 https://zvc.vc/
GMOベンチャーパートナーズ
GMOインターネットグループにより2005年に設立されたCVCです。主に IT 系ベンチャー企業へ投資を行っています。現在まで100社程度の企業に出資。
投資先のビジネスチャット「Chatwork」を運営するkubell株式会社、家計簿アプリの株式会社マネーフォワード、クラウドソーシング事業のランサーズ株式会社
等はIPOを実現し、新しいマーケットを切り開きました。
GMOベンチャーパートナーズ 公式HP参照 https://gmo-vp.com/
執筆者 株式会社M&A共創パートナーズ M&Aアドバイザー 篠浦 隆宏
株式会社みずほ銀行に入行し、富裕層向けの資産運用の提案に従事。株式会社日本M&Aセンターへ転職後、M&Aコンサルタントとして幅広い業種のM&Aをサポート。前職は、新興のM&Aブティックにて主にIT企業のM&A案件を担当し、数多くの譲渡企業の支援に従事。