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M&Aディールとは?関連用語、基本プロセス、注意点について解説!
2024.08.25
M&Aディールとは、M&Aの準備から成約、そして経営統合の完了までの一連の工程のことを指しますが、そのプロセスは非常に複雑で、多くの要素を慎重に管理する必要があります。本記事は、M&Aディールに関する用語、プロセス、成功のポイント、注意点を解説いたします。
目次
M&Aディールに関する用語
ディールサイズ
ディールサイズとは、企業の合併や買収における取引の売買価格の規模を指します。ディールサイズには明確な基準はありませんが、小規模(スモールディール)、中規模、大規模に分けられます。
一般的には、売買価格が1億円以内のディールは小規模、数億から数十億円のディールが中規模、数百億円以上のディールをメガディールといいます。個人事業や小規模企業などのM&Aを扱うスモールディールや、ベンチャーや中規模企業などのM&Aを扱う中規模ディールは、M&A仲介会社、信用金庫、地方銀行、中堅証券会社などが支援します。メガディールは、投資銀行やメガバンク、大手証券会社が支援することが多いです。
プレディール
プレディールとは、M&Aの交渉前の準備段階のことを指します。プレディールで準備する主な項目は、M&Aの目標や戦略策定、取引企業の選定、事業のシナジーの確認、スキームの検討、企業価値算定などが含まれます。
プレディールはその後のディールに大きく影響するため、M&Aの専門家に依頼し、正確に進めていくことが重要になります。的確なプレディールはM&Aの成功に繋がりますが、ここのプロセスが不十分であると、期待値に満たなかったり、失敗に繋がってしまうこともあるため、注意が必要です。
ポストディール
ポストディールとは、M&A(合併・買収)取引が完了した後に行われる一連のプロセスや活動を指し、PMI(post merger integration)とも呼ばれます。
これは、買収企業と被買収企業の統合をスムーズに進め、取引のシナジーを最大限に引き出すために重要になります。主に、統合計画の実行、文化統合の実行、事業統合などになります。
シナジー効果を発揮するためには、ディール同様にポストディールも非常に重要になります。
ディールメーカー
ディールメーカーとは、企業の合併・買収(M&A)取引を企画・推進・実行するM&A仲介会社やアドバイザリー(FA)、金融機関などの専門家や組織を指します。成功するM&Aのためには、専門的な知識と経験が求められるため、ディールメーカーは企業価値の評価、戦略の策定、交渉のリード、法務・財務の調整など幅広く支援します。
ディールブレーカー
ディールブレーカーとは、M&A(合併・買収)取引の進行を阻害する重大な要因や問題点を指します。これらの要因は、取引の成功を不可能にする可能性があるため、交渉の過程で特に注意が必要です。
M&Aの取引自体を破談に導くような可能性のあるディールブレーカーには、財務上の問題(買収対象企業の財務状況に重大な欠陥やリスクが発見される場合)、法的・規制上の問題、経営統合を阻むような企業文化の違い、価格の不一致(売買価格に合意が至らない場合)などが挙げられます。
M&Aディールの基本プロセス
M&Aディールの一連のプロセスについてご紹介します。
プレディール
1.M&Aの目標や戦略策定:なぜM&Aを行うのか、何を目標とするのかなど、今後の方針に影響する重要な部分。
2.M&A先企業の選定:自社の方向性と合致するM&A先企業の選定を行う。
3.スキームの検討:株式譲渡や株式交換など、M&Aには多くの種類があるため、どのようなスキームをとるのか検討する。
4.企業価値算定:交渉価格についてのすり合わせ。
ディール
1.条件交渉
2.スキームの確定
3.基本合意書の締結:条件やスキームなどが確定すると、法的効力はないが、最終契約のベースとなる合意書を作成する。
4.デューデリジェンスの実施:シナジー効果の発揮や、リスクの軽減を目的として、法務・財務・税務など様々な角度から実施される。
5.最終契約書の締結:基本合意書に、デューデリジェンスの結果を反映させ、取引の詳細について決定した契約。
6.クロージング・成約:M&Aが成立します。
ポストディール
先述のM&Aディール成約以降の経営統合作業。統合計画の実行、文化統合の実行、事業統合などになります。シナジー効果を発揮するためには、ディール同様にポストディールも非常に重要。
成功するM&Aディールのポイント
代表的なポイントとしては、以下の3点が挙げられます。
効果的なコミュニケーション
透明性の確保を確保しながら、各ディールメーカーと適時、適格なコミュニケーションを取ることが重要です。
適切な評価
M&A仲介会社やFA(フィナンシャルアドバイザー)、税理士、会計士、証券会社等の専門家に依頼し、公正な企業価値を算定することが重要です。
リスク管理
デューデリジェンスを実施し、潜在的なリスクの識別と、そのリスクに対する対策を行います。
M&Aディールの注意点
M&Aディールの成功には以下の点に注意が必要です。
文化の統合
譲受企業と譲渡企業では、企業文化が違うことは少なくないです。会社のビジョン、ミッション、バリューや、カルチャーの相違を理解しながら、お互いの良いところを引き出し、シナジーを最大化するよう調整が必要です。
従業員の管理
譲渡企業の従業員の立場では、M&Aの後、自らの給与や労働条件が悪化することは大きな問題です。人事、労務規定に関しては、可能な限りM&A前と近しい条件でM&Aディールを行い、M&A後は、統合後の事業戦略に対しての理解を促し、最大限パフォーマン発揮できるよう注力することが重要です。
法的・規制上の考慮点
M&Aにおいて、法的・規制上の考慮点を理解せず、M&Aを行うことは、最悪の場合、M&A自体が無意味なものになる可能性もあります。独占禁止法に関するルールへの理解だけでなく、許認可事業に関する規制へ対応は、必ず確認することが必要です。
まとめ
M&Aディールは、企業の非連続な成長のための有効な手段ですが、その成功には多くの要素を慎重に検討、実行する必要があります。
特に、効果的なコミュニケーション、適切な評価、リスク管理などが鍵となります。注意点をしっかりと押さえ、専門家のサポートを受け、適切にプロセスを進めることが成功の秘訣になります。
執筆者 株式会社M&A共創パートナーズ M&Aアドバイザー 篠浦 隆宏
株式会社みずほ銀行に入行し、富裕層向けの資産運用の提案に従事。株式会社日本M&Aセンターへ転職後、M&Aコンサルタントとして幅広い業種のM&Aをサポート。前職は、新興のM&Aブティックにて主にIT企業のM&A案件を担当し、数多くの譲渡企業の支援に従事。
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