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デューデリジェンスとは?M&Aの成功を確実にするための方法

2024.08.22

デューデリジェンスとは、買収監査を意味し、M&Aを行うに当たっては欠かすことのできない重要な手続きです。略してDDとも呼ばれます。

買い手企業は売り手企業にデューデリジェンスを行うことで、企業価値の算定、M&Aを行うことによるシナジーの把握、リスクの把握を行い、M&Aを実施するかを判断します。そのため、デューデリジェンスは網羅的に、正確に行われる必要があります。

目次

デューデリジェンスとは?

デューデリジェンス(Due Diligence)とは、M&Aを行うにあたって、買収側が売却対象企業ないしは事業の実態を事前に把握し、買収価格や取引条件、M&A後の統合戦略について適切な判断を行うための調査を指します。省略して、「デューデリ」や「DD」と呼ばれます。

このプロセスでは、対象企業の財務状況、法的な問題、業務の運営状況などを詳細に調査し、潜在的なリスクや問題点を洗い出します。デューデリジェンスは、取引の透明性を確保し、将来のトラブルを未然に防ぐための重要なステップです。

デューデリジェンスの主な目的は、買い手、売り手共に、取引の価値を評価し、条件が適切であるかどうかを判断することです。売り手が間違った情報や虚偽の情報を提示していたり、不都合な情報を隠していた場合、M&A後にそのような事情が発覚すれば、買収後に思いもよらなかったトラブルを招くことになります。

そこで、調査を通じて、投資家や買収者は、対象企業の本当の価値やリスクを把握し、情報に基づいた意思決定を行うことができます。また、売り手としては自社の価値を算定することによって適切な価格や条件で、売却することができるようになります。

そして、買い手・売り手双方の適切なデューデリジェンスの実施により、取引の成功率が高まり、長期的なビジネスの成長に寄与することができます。

 

デューデリジェンスの種類

ビジネスデューデリジェンス(事業デューデリジェンス)

ビジネスデューデリジェンス(Business Due Diligence)とは、企業買収や投資において対象企業のビジネスモデル、業績評価(KPI)、競争環境、経営チーム、成長機会などの非財務的側面の評価活動です。

この評価は、事業計画や事業価値の評価に影響を与えるため、本格的なデューデリジェンスに入る前に、プレデューデリジェンスとして、ビジネスデューデリジェンスを行うケースがよく見られます。

そして、ビジネスデューデリジェンスは大きく2種類に分けられます。まず、コマーシャルデューデリジェンスでは、買収先の取り巻く市場環境や競争環境、顧客動向などからビジネス面での強みや弱み、機会や脅威を把握し、将来の収益力や売り上げに関するリスク、買収後に期待できるシナジー効果や実効性を分析します。

オペレーショナルデューデリジェンスでは、事業価値評価や交渉などに影響を及ぼすリスクや買収後や統合後に想定されるコスト削減やコスト削減に対する阻害要因やリスクを洗い出すことで、将来のコストの計画の妥当性を分析します。

これらによって、投資家や買収者は対象企業のビジネスの健全性や将来の成長可能性を理解し、投資判断を行います

財務デューデリジェンス

財務デューデリジェンスとは、買い手企業が売り手企業の財務・会計に関して行う調査を指します。対象企業の財務諸表を分析し、収益性、負債状況、キャッシュフロー等を把握します。また、財務リスクや潜在的な負債、未解決の訴訟などを特定し、投資判断に影響を与える要因を評価します。

加えて、税務面でのコンプライアンス状況を確認し、規制違反のリスクを低減します。

財務デューデリジェンスには専門知識と経験が求められるため、専門家に依頼することが一般的です。専門の会計士やコンサルタントが関与することで、より正確な分析が可能となります。

法務デューデリジェンス

法務デューデリジェンスとは、買い手企業が売り手企業の法務に関して行う調査を指します。具体的には、対象企業がすでに締結している契約や合意の内容の確認、事業内容に法令違反がないか、知的財産の確認、進行中の、訴訟や過去の訴訟履歴の確認、労働環境のチェックを行います。

法務デューデリジェンスも専門知識と経験が求められるため、法律事務所に依頼することが一般的です。

詳しくは、「M&A成功の鍵 弁護士の役割と重要の記事をご参照ください。

人事デューデリジェンス

人事デューデリジェンスは、買い手企業が売り手企業の人事面に関して行う調査を指します。

具体的には、人員構成の把握(社員数、組織構造、役職、報酬体系、福利厚生等)、労働契約の確認、労働環境(時間、環境、安全衛生対策等)、労働基準法規制の遵守状況の確認を行います

買収合併後も、既存の従業員を引き続き雇用することが多いので、これまでの人事状況を把握し、統合後のスムーズな運営を図るためにも、人事デューデリジェンスは重要です。

ITデューデリジェンス

ITデューデリジェンスは、買い手企業が売り手企業のIT環境や技術資産に関して行う調査を指します。

M&A後に業務・企業と密接な関係を持つだけに、M&A後にうまく活用することができるのか、自社のシステム・業務と適合させられるかを事前に判断しておくことを目的とします。特に、ITシステムをグループ会社のITシステムや業務と連携しているような場合は、切り出しが難しく、想定以上の時間やコストがかかってしまうケースもあるので、M&A前にITシステムを把握することが大切です。

具体的には、ITインフラの評価(ハードウエア、ソフトウエア、ネットワーク、データセンター等の現状)、システムとアプリケーションの確認(使用されている業務システムやアプリケーションのリスト、その機能、ライセンス状況)、サイバーセキュリティの評価、データ管理方法の確認、IT関連のコストを調査します。

参考記事ITデューデリジェンスとは?そのプロセスやチェックポイントについてわかりやすく解説!」

セルサイドデューデリジェンス

売り手企業が実施するデューデリジェンスをセルサイドデューデリジェンス(Sell-Side Due Diligence)といい、企業売却の際に売却側(売り手)が行う調査・評価活動のことを指します。主な目的は、売却される企業の財務状況、法務上の問題、ビジネス運営の実態などを徹底的に確認し、潜在的な買い手に対して正確かつ信頼性の高い情報を提供することです。

また、買い手が何回もM&Aを行ったことがある場合、買い手の都合の良いように安値で買収されてしまうケースも少なくないため、自社の売却価格の適切な算定の役割も果たします。

売り手側が自己の費用で行うことになるので、経済的な負担となることは確かですが、セルサイドデューデリジェンスを行うことによって、売却価値が最大化するため、実施することが必要です。また、売却後の問題の発覚によって、損害賠償を請求されることを防止するためにもセルサイドデューデリジェンスは実施するべきでしょう。

 

デューデリジェンスの進め方

①計画と準備

・目標設定:デューデリジェンスの目的を明確にし、調査の範囲や重点項目を決定します。

・チーム編成: 財務、法務、税務、IT、人事など各専門分野の専門家をチームに組み込みます。

・スケジュール作成: デューデリジェンスの期間と各ステップのタイムラインを設定します。

・チェックリスト作成: 必要な資料や情報をリストアップし、対象企業にリクエストします。具体的には、決算書、税務申告書、株主名簿、定款、取締役会議事録、商品別の売上高、利益が分かる資料、事業計画、設備投資、月次試算表等をリストアップします。

②情報収集

・資料提供依頼: 対象企業に対し、上記でリストアップした資料の提供を依頼します。

・データルームの設置:データルームを設置し、情報の共有と管理を行います。デューデリジェンスに伴う資料は、莫大な量になることも多い上に、機密情報であるため、慎重に管理するようにしましょう。

・Q&Aの実施:逐一分析したいテーマについて質問事項が生じた場合は各担当者に質問事項をまとめてリクエストします。

・経営陣面談:対象会社の経営陣に対する面談を実施します。マネジメントインタビューとも呼ばれます。面談を通じて、現在の経営陣が考えている経営上の課題や問題意識について認識することができます。

・現地調査:特に旅館、ホテル、テーマパーク、ゴルフ場等の不動産事業を対象とする場合は、現地に行って直接、経年劣化や周辺環境を把握することが重要です。

③レポート作成

売り手から開示された資料の検討や繰り返し行ったQ&A 、経営者面談を経て、各専門家はデューディリジェンス報告書を作成し、買い手に提出します。具体的には、以下のステップで、最終レポートまで作成されます。

・ドラフト作成: 各専門分野の分析結果とリスク評価をまとめたドラフトレポートを作成します。
・レビューとフィードバック: ドラフトレポートを関係者と共有し、フィードバックを反映させます。
・最終レポート作成: 修正を加えた最終レポートを完成させ、経営陣や投資家に提出します。

そして、報告書の内容を踏まえて、買い手は株式譲渡や事業譲渡などのM&Aスキームや、価格などの取引条件について債権としたうえで、最終交渉に入ります。

上記プロセスは、中小企業であれば、数日から2週間程度で、大企業や中堅企業の場合は、1か月から2か月以上かかることもあります。また、各専門家に支払う費用は規模によってまちまちですが、法務、財務、税務でそれぞれ50万円~150万円を想定しておくことがよいでしょう。

 

デューデリジェンスでよくあるミス

①チェックリストの不十分

買い手の提示するチェックリストに従って、売り手は情報を開示することになるのでチェックリストが不十分であれば、開示される情報も不十分で、結果としてリスクや問題点を洗い出すことができなくなります。

②情報公開の範囲

売り手は買い手にどこまで情報開示をするのかという方針を決める必要があります。

買い手による売り手への情報開示の依頼が不足していると、必要な情報を得ることが出来ずリスクとなる可能性もあり、また、売り手による開示情報が少なければ、買い手からの信頼を失うケースがあります。そのため、各デューデリジェンスごとに専門性、経験値が求められるので専門家に相談することをお勧めします。

 

まとめ

デューデリジェンスとは、M&Aを行うにあたって、買収側が売却対象企業ないしは事業の実態を事前に把握し、買収価格や取引条件、M&A後の統合戦略について適切な判断を行うための調査です・

十分なデューデリジェンスを行うことで、売り手は自社の価値を適切に把握し、買い手はM&A後の戦略の構築、リスクの把握に繋がります。

M&Aの成功のためには、各分野について、主に専門家によってそれぞれデューデリジェンスが実施され、チェックリストの作成を中心とする情報収集が肝となります。

 


執筆者 株式会社M&A共創パートナーズ M&Aアドバイザー 篠浦 隆宏 

株式会社みずほ銀行に入行し、富裕層向けの資産運用の提案に従事。株式会社日本M&Aセンターへ転職後、M&Aコンサルタントとして幅広い業種のM&Aをサポート。前職は、新興のM&Aブティックにて主にIT企業のM&A案件を担当し、数多くの譲渡企業の支援に従事。


 

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