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アーンアウトとは?M&A成功のための要点と注意点を徹底解説!

2024.08.24

M&Aの手法の一つであるアーンアウトについて解説します。昨今のM&Aで活用される機会が増えております。本記事では、アーンアウトの基本的な概念、利用される背景、メリット・デメリット、会計処理、そして実行する際の注意点を詳しく説明します。

目次

アーンアウトとは

アーンアウトの基本概念

アーンアウトは、会計では「条件付取得対価」といわれており、M&A取引において、買い手と売り手の間で定められる支払い条件の一種です。一定期間後の業績に基づいて、売り手に追加の支払いを行うという形を取ります。アーンアウトは、買収対象企業の将来の業績に依存する部分があるため、買収価格の確定が難しい場合や、買収後のシナジー効果を最大限に引き出すために利用されます。

アーンアウトが利用させる背景

アーンアウトが頻繁に利用される背景には、買収対象企業に関する完全な情報が得られない場合や、買収に伴うリスクを分散したいというニーズがあるからです。特に、買収対象企業の業績が過去に大きく変動していたり、将来の市場環境が不透明な場合、アーンアウトは買収価格の確定を柔軟に行うための有効な手段となります。また、アーンアウトによって、買い手は買収後の業績が予想を下回った場合でも、支払額を少なくすることができます。一方、売り手は、買収後の業績が予想を上回った場合、追加の報酬を得ることが期待できます。つまり、企業の将来の業績にリスクを賭けることにより、買い手と売り手の双方が利益を守ることができるのです。

条件となる財務指標

条件となる財務指標は、純利益、売上高、営業利益、EBITDA、営業キャッシュフロー、フリーキャッシュフローなどが挙げられます。

 

アーンアウトを利用するメリット

買い手のメリット

将来の業績に基づく支払いを設定することで、買収時の資金流出を抑え、潜在的なリスクを回避できます。特に、買収対象企業の業績が不安定な場合、アーンアウトは買い手にとって、過剰な資金負担を回避する有効な手段となります。

また、アーンアウトによって、買い手は買収後の業績をモニタリングし、経営指標の改善を促すインセンティブを持つことになります。つまり、アーンアウトは、買い手にとってリスクヘッジと経営指標の改善の両面でメリットがあると言えるでしょう。

売り手のメリット

企業の成長や成功に応じて、最終的により多くの資金を得る機会を確保できます。また、アーンアウトは、売り手にとって、買収後の企業価値向上へのモチベーションを高める効果も期待できます。

買収後も経営に携わる場合、アーンアウトは、売り手の努力が直接的に報酬に反映されるため、企業全体のモチベーションが維持しやすいです。

 

アーンアウトを実行する際のデメリット

買い手のデメリット

買収後の業績次第では、追加の資金負担が発生するリスクがあります。特に、買収後の業績が予想を下回った場合、買い手は売り手の事業立て直し等に必要な追加の資金負担を強いられる可能性があります。

また、アーンアウトの評価指標や評価期間の設定が複雑になるため、交渉の過程での時間と労力が大きくなる可能性もあります。そのため、アーンアウト導入の際には、慎重なリスク評価とコスト管理が不可欠です。

売り手のデメリット

一括でまとまった資金を獲得できず、業績の達成に依存するため、受け取る金額に不確実性が伴います。特に、買収後の業績が予想を下回った場合、売り手は期待していた報酬を得られない可能性があります。

また、アーンアウトの評価指標や評価期間の設定が複雑になるため、売り手は、報酬の算定方法や支払時期について、買い手との間で紛争が発生するリスクを抱えることになります。

双方に共通するデメリット

評価基準や業績指標の設定で合意を得るのが難しく、交渉時間が長引くことが予想されます。

アーンアウトの評価指標や評価期間は、買い手と売り手の双方にとって重要な要素であり、合意を得るためには、慎重な交渉が必要です。

また、評価指標や評価期間の設定が複雑になるほど、交渉は難航し、時間がかかる傾向があります。そのため、アーンアウト導入を検討する際には、十分な時間と労力を確保することが重要です

 

アーンアウトの会計処理

日本基準の処理方法

日本基準では「企業結合に関する会計基準」第27項1号において、以下のように定められております。

「条件付取得対価が企業結合契約締結後の将来の業績に依存する場合には、条件付取得対価の交付又は引渡しが確実となり、その時価が合理的に決定可能となった時点で、支払対価を取得原価として追加的に認識するとともに、のれん又は負ののれんを追加的に認識する。」

(出典:企業結合会計基準第27項1号)と定められています。

つまり、日本基準では契約で定めた業績条件(以下、「アーンアウト条項」)を達成し、対価の支払いが確実になるまでは会計処理を実施しないことになります。その代わり、対価の支払いが確実になった時点でアーンアウト条項にもとづき取得原価でのれんを計上しますが、アーンアウト条項を達成できなかった場合には特段の会計処理は発生しません。

国際基準(IFRS)の処理方法

IFRS(国際会計基準)では、IFRS第3号39項において以下のように定められています。

「取得企業は条件付対価の取得日公正価値を、被取得企業との交換で移転された対価の一部として認識しなければならない」

また、IFRS第3号58項では、

「取得日後の事象により生じた変動については、その後の各報告日において公正価値の変動を純損益として認識する」

と定められています。

つまり、IFRSの場合は、取得時の公正価値をのれん計上します。そのた、。アーンアウト条項の達成の場合、当初計上されたのれんの金額に変動はありません 。万が一、アーンアウト条項の条件を達成できなかった場合には、アーンアウトの支払いの必要がないので、該当するアーンアウトの金額を公正価値の増加分として純損益として認識・計上します。

留意点として、IFRSではのれん償却は行わませんが、毎年1回以上の減損テストの対象となります。

 

アーンアウトを実行する際の注意点

評価指標に関する注意点

評価指標は具体的かつ測定可能である必要があります。評価指標は、アーンアウトの支払額を決定するための基準となるため、具体的かつ測定可能な指標であることが重要です。例えば、売上高、営業利益のような財務数値、他にも顧客数、市場シェアなど、客観的に測定可能な指標を採用する必要があります。

曖昧な指標を採用すると、アーンアウトの支払額が不透明になり、買い手と売り手の間で紛争が発生する可能性があります。

評価期間に関する注意点

評価期間は企業の成長パターンを考慮した上で設定されるべきです。評価期間は、アーンアウトの支払額を決定するための期間であり、企業の成長パターンを考慮して設定する必要があります。

再売却に関する注意点

アーンアウトが含まれる契約においては、将来的な再売却や再取得の条件も明確に定義しておくことが重要です。

アーンアウトの契約には、将来的な再売却や再取得に関する条件も含まれる場合があります。

例えば、買い手が買収した企業を再売却する場合、アーンアウトの支払額はどのように調整されるのか、再売却によってアーンアウトの契約はどのように終了するのか、といった点を明確に定義しておく必要があります。

 

まとめ

アーンアウトは、M&Aにおけるリスク管理と経営指標の改善を促すインセンティブを与える有効な手段です。

しかし、アーンアウトの活用には、契約の複雑化や交渉の難航など、いくつかの課題も伴います。そのため、明確で公平な評価指標を設定し、双方の利益をバランスよく配慮することが重要です。

また、アーンアウトの活用を検討する際には、事前に十分な調査と検討を行い、買い手と売り手の双方にとって納得のいく契約を締結することが重要です。

 


執筆者 株式会社M&A共創パートナーズ M&Aアドバイザー 篠浦 隆宏 

株式会社みずほ銀行に入行し、富裕層向けの資産運用の提案に従事。株式会社日本M&Aセンターへ転職後、M&Aコンサルタントとして幅広い業種のM&Aをサポート。前職は、新興のM&Aブティックにて主にIT企業のM&A案件を担当し、数多くの譲渡企業の支援に従事。


 

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