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黄金株とは?その仕組みとメリット・デメリットについて解説!
2024.08.24
黄金株とは、拒否権付株式のことであり、拒否権を持つ株式のことです。会社の防衛策としても機能する黄金株について、その内容と仕組み、企業防衛策としてのメリットとデメリット、さらには日本国内の実例を解説します。
目次
黄金株とは?
黄金株(拒否権付株式)とは、株主総会決議事項や取締役会決議事項に対して拒否権を持つ株式のことです。この株式は、通常発行される株式とは異なり、特定の決定に対して拒否権を持つことができます。これにより、企業買収や経営陣の変更などの重要な局面で、企業側が自らの意思を強く反映させることが可能となります。
例えば、外部からの敵対的買収を防ぐために、企業は黄金株を発行し、特定の株主に対して拒否権を与えることがあります。これにより、買収者が株式の過半数を取得しても、重要な経営判断に対して拒否権を行使することで、企業の独立性を維持する手段となります。
また、事業承継においても円滑化に繋げることができます。
しかし、使い方を誤ると、かえってデメリットとして機能してしまう場合もあるため、注意が必要です。まずは、黄金株の仕組みから解説します。
黄金株の仕組み
黄金株の仕組みについてご紹介します。黄金株の発行では、どのような決議事項に対して拒否権を持つかを事前に定めることができます。これにより、企業は黄金株を利用して、特定の重要な経営判断に対して拒否権を行使できるようになります。例えば、取締役の選任や解任、報酬、事業の譲渡、統合などの決議案に対して拒否権を持つように設定することができます。
なお、黄金株が規定できる範囲は以下が挙げられます。
・取締役、代表取締役の選任、解任、報酬
・資産譲渡
・融資などの資金調達、新株発行
・事業譲渡、合併
・大幅な組織変革
・従業員の人事
等
黄金株の発行には、企業の株主総会での承認が必要です。また、発行された黄金株は、通常の株式と同様に売買が可能になります。しかし、黄金株はその権限から、株主平等の観点で反対意見があり、東京取引証券所は条件によっては黄金株式の発行によって上場廃止が定められているなど、上場企業では多くの場合用いられず、現在の上場企業で黄金株を発行しているのは1社のみになります。
主に、中小企業の事業承継や敵対的買収に対する防御策としてもちいられることが多くなります。
黄金株のメリット
黄金株の最大のメリットは、企業防衛策としての高い効果です。敵対的買収や経営陣の変更といった重要な局面で、企業側が自らの意思を強く反映させることができるため、企業の独立性を保つことが可能です。
事業承継において
前任の経営者が黄金株を保持しておくことで、後継者に引き継いだあとにも決議事項について拒否権を持つことができ、後継者が経営判断を誤りそうになったときに拒否権をもって会社を守ることができます。
外部からの防衛策として
外部からの不当な影響を排除し、企業の長期的なビジョンを実現するための戦略的な意思決定が可能となります。株主総会で3分の2以上の賛成票があれば、経営者の意思に反して事業の継承や合併統合が可決されてしまいます。これに対して、事業承継に関する黄金株を発行している場合、これを拒否することができます。また、企業のブランド価値や信頼性を維持するためにも、黄金株は有効な手段となります。
黄金株のデメリット
黄金株にはデメリットも存在します。
黄金株の行使が過度に強力である場合、他の株主の権利が侵害される可能性があります。また、黄金株の内容は登記に記載されるので、権利が少ないと株主の不満が募る可能性があります。
また、経営方針が経営者の意向に依存するので、経営判断を誤ってしまう可能性があります。外部の意見が取り入れられないといったデメリットに繋がります。
黄金株の実例
国内エネルギー会社大手であるINPEX(旧社名:国際石油開発帝石)は、国内上場企業で唯一、黄金株を発行しており、経済産業大臣がその株を保有しています。その理由は、INPEXが、石油、天然ガスをはじめとして日本のインフラにおいて重要な役割を担っているため、海外のエネルギー会社からの買収を防ぐことを目的としているからです。
まとめ
黄金株とは、企業の経営権を守るために発行される株式であり、特定の重要な決定に対して拒否権を持つことができるため、企業防衛策として非常に有効です。
黄金株の仕組みやそのメリット・デメリットを理解することで、企業は外部からの不当な影響を排除し、安定的な経営を維持することが可能となります。
一方で、リスクやデメリットもあるため、黄金株の発行の決定は慎重に行う必要があります。
執筆者 株式会社M&A共創パートナーズ M&Aアドバイザー 篠浦 隆宏
株式会社みずほ銀行に入行し、富裕層向けの資産運用の提案に従事。株式会社日本M&Aセンターへ転職後、M&Aコンサルタントとして幅広い業種のM&Aをサポート。前職は、新興のM&Aブティックにて主にIT企業のM&A案件を担当し、数多くの譲渡企業の支援に従事。
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