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ITデューデリジェンスとは?そのプロセスやチェックポイントについてわかりやすく解説!

2024.08.27

ITデューデリジェンスは、M&Aを実施するために重要なデューデリジェンスの一つです。プロセス、重要チェックポイントを解説し、最新のトレンドやリスク対策も紹介します。企業価値を正確に評価し、投資成功を確実にするためのITデューデリジェンスについて説明します。

目次

株主間契約とは

定義と目的

ITデューデリジェンスは、企業の情報技術(IT)システム、インフラ、プロセスに関する包括的な調査と評価を行うプロセスです。主な目的は、企業買収や投資の際にIT関連のリスクを把握し、企業価値の正確な評価を行うことです。これにより、買収後の統合プロセスや運用における問題を事前に把握し、適切な対策を講じることが可能になります。

ITデューデリジェンスの重要性

企業買収や投資において、ITデューデリジェンスは単なる形式的な手続きに留まらず、今後の経営戦略の意思決定をサポートします。適切な調査により、企業の競争力や市場ポジションを維持し、IT関連の問題が発生するリスクを大幅に軽減することができます。

 

ITデューデリジェンスのプロセス

ITデューデリジェンスのプロセスは、初期調査から始まり、データ収集、リスク評価、最終報告に至ります。

初期調査と準備

プロセスの最初のステップは、初期調査と準備です。この段階では、買収対象企業のITインフラ、システム、プロセスについての基本的な情報を収集します。また、関係者とのミーティングを行い、調査の範囲や目的を明確にします。

データ収集と分析

次に、実際のデータ収集と分析を行います。これには、ITシステムのドキュメントレビュー、運用状況の把握、セキュリティポリシーの確認などが含まれます。収集したデータを基に、システムのパフォーマンスやリスクを評価します。

リスク評価と報告

最後に、収集したデータに基づいてリスク評価を行い、最終報告書を作成します。この報告書には、発見されたリスクや課題、推奨される対策が含まれます。報告書は、経営陣や投資家にとって重要な意思決定資料となります。

 

ITデューデリジェンスの調査項目

ITデューデリジェンスを行う際に考慮すべき点はなんでしょうか?

ITシステムのインフラとアーキテクチャ

システムのインフラとアーキテクチャの評価は、ITデューデリジェンスの重要な部分になります。サーバーやネットワークの構成、データベースの設計、システムの拡張性などを確認し、どれだけ効果的に運用されているかを評価します。

運用体制

ITシステムの開発と運用体制です。ITシステムには、開発や保守を担当するスタッフを要します。もしこれらの業務を外部の企業に委託している場合、追加の開発・保守費用が発生する可能性があります。一方で、社内にシステム関連の部署がある場合、これらの業務は社内で管理されていることが多いでしょう。こうした運営体制を把握する必要があります。

ITセキュリティリスク

情報セキュリティポリシー、データ保護対策、法規制の保守状況をチェックし、潜在的なセキュリティリスクやコンプライアンス違反を特定します。また、従業員のIT教育について把握することも重要になります。従業員がIT知識を持ち、セキュリティ意識を持って適切な行動をとっているのかを把握する必要があります。

コスト管理

システムの開発や構築には費用がかかるため、相手企業がどれほどのコストを支出して運用・保守しているかを事前に把握することが極めて重要です。このコストに関する情報に漏れがあると、M&A後に予期しない損失が発生するリスクが高まります。そのため、費用に関する詳細な調査が必要不可欠になります。

 

株主間契約の主な条項例

出資比率に関する事項

株主間契約を用いて、出資比率について定めることができます。また、権利行使価格を調整することができる希釈化防止条項によって、出資時と比率が大きく変動するリスクを抑えることができます。

事業に関する条項

事業に関して定められる条項には、①会社と株主に関する取引内容や条件について②資金調達③配当④従業員の派遣⑤株主に対する情報提供などがあります。

株式譲渡に関する条項

譲渡制限:第三者への譲渡の禁止。

先買権:株式を第三者に売却しようとする場合に、その売却条件と同等の条件で買い取る権利を与える契約のこと。 ファースト・リフューザル・ライト(First refusal right)とも呼ばれる。

共同売却請求権(Tag Along Right):株主が保有株式を譲渡した際に、他の株主も株式を同じ買い手に売却できる権利を意味します。

強制売却請求権(Drag Along Right):株主が保有株式を譲渡する際に、その他の株主も同じ条件で株式を売却しなければならないという条項。

コールオプション:株主間で特定の事象が発生した時に、相手方の株主に対して保有株式の全部または一部の譲渡を求めることができる。

プットオプション:株主間で特定の事象が発生した時に、自身の保有株式を相手側の株主に対して一部または全部を売りつけることができる。

契約終了に関する条項

株主間契約の終了について、一方の株主が当該企業の株主でなくなった場合や重大な契約違反や信用不安が発生した場合などを定めることができます。

デッドロックに関する条項

デッドロックとは、株主間で意見が割れ、会社の意思決定ができない場合のことをいいます。こうした場合、企業の経営が円滑に行われず、会社としての不利益に繋がる可能性があります。そのため、デッドロックが発生した場合にも意思決定を円滑化するために、株主間契約が有効になります。デッドロックに関して取り決める場合に考えられるのは、①株主間の協議②第三者の介入③コール/プットオプションによる株式譲渡などが挙げられます。

 

ITデューデリジェンスの今後

ITデューデリジェンスの分野は、テクノロジーの進化とともに変化しています。未来のトレンドを把握し、対応策を講じることが重要です。

テクノロジーの進化と影響

テクノロジーの進化により、ITデューデリジェンスのプロセスやツールも進化しています。クラウドコンピューティング、AI、ビッグデータ解析など、新しい技術の導入が評価プロセスに影響を与え、より詳細かつ迅速な分析が可能になります。

新たなリスクと対応策

テクノロジーの進化に伴い、新たなリスクも登場しています。サイバーセキュリティの脅威やデータプライバシーの問題など、最新のリスクに対する対応策を講じる必要があります。これには、セキュリティ対策の強化や新しい規制の遵守が含まれます。

 

まとめ

ITデューデリジェンスは、企業買収や投資の際に不可欠なプロセスであり、企業の情報技術システムやインフラの詳細な評価を行います。その目的は、IT関連のリスクを把握し、企業価値の正確な評価を実施することです。プロセスは、初期調査、データ収集、リスク評価、最終報告のステップで構成されます。

主要なチェックポイントとしては、システムのインフラとアーキテクチャ、セキュリティとコンプライアンス、ソフトウェアとライセンス管理があります。成功するためには、適切なチーム編成、コミュニケーションの確保、ケーススタディの活用が重要です。

また、ITデューデリジェンスの未来には、テクノロジーの進化による新たなリスクや対応策が必要です。企業は、これに備えた準備と戦略を持つことで、変化するビジネス環境に適応し、より効果的なデューデリジェンスを実施することができます。


執筆者 株式会社M&A共創パートナーズ M&Aアドバイザー 篠浦 隆宏 

株式会社みずほ銀行に入行し、富裕層向けの資産運用の提案に従事。株式会社日本M&Aセンターへ転職後、M&Aコンサルタントとして幅広い業種のM&Aをサポート。前職は、新興のM&Aブティックにて主にIT企業のM&A案件を担当し、数多くの譲渡企業の支援に従事。


 

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