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ロックアップとは? 基本・目的・重要性から解除後の影響までわかりやすく解説!
2024.08.25
株式公開時に論点となるロックアップについて、その基本について詳しく解説します。さらに、この記事では、IPOを検討している経営者の方に知っておいていただきたいロックアップ解除後の株価の動き、メリット・デメリットについて説明します。
目次
ロックアップの基本
ロックアップとは何か
ロックアップとは、新規公開株(IPO)において、特定の株主が一定期間、保有株を売却しない旨を約束する制約のことを指します。
これは、上場直後の株価の急激な変動を防ぎ、市場の安定を図るための重要な仕組みです。ロックアップ期間中は、対象となる株主は保有株を売却することができません。
ロックアップ解除の意味
ロックアップ解除とは、設定された期間が終了し、制約が解かれた状態を指します。このタイミングで一定の条件を満たすと、株主は保有株を売却できます。ロックアップ解除は、IPO後の株価に大きな影響を与える可能性があり、投資家にとって重要なイベントです。
ロックアップの目的と重要性
株価の安定を図る
ロックアップの主な目的は、上場直後の株価の急激な変動を防ぎ、市場の安定を図ることです。IPO直後は、新規上場企業への関心が集まり、株価が大きく変動する可能性があります。ロックアップは、大口株主による大量売却による株価下落を防ぎ、安定した取引環境を構築するために導入されます。
経営陣への信用付与
ロックアップは経営陣や大株主に対する信用を示す手段としても機能します。ロックアップ期間中は、経営陣や大株主は保有株を売却することができないため、企業へのコミットメントを示すことになります。これは、投資家にとって、経営陣が企業の将来に自信を持っていることの証であり、投資判断の材料となります。
市場の信頼確保
市場からの信頼を確保するためにも、ロックアップは重要な役割を果たします。ロックアップは、企業が上場後も安定した経営体制を維持し、長期的な成長を目指していることを示すサインとして捉えられます。これは、投資家にとって、企業の安定性と成長性に対する信頼感を高める効果があります。
ロックアップの種類
制度ロックアップ
証券取引所や規制当局が設定する公式のロックアップ期間が存在します。これは、すべてのIPO企業に共通して適用されるものであり、一定期間、保有株の売却を制限するものです。制度ロックアップは、市場の安定化を図るための重要な役割を果たしています。
任意ロックアップ
企業や株主が自主的に設定するロックアップ期間もあり、通常より厳しい条件が付与されることがあります。例えば、ロックアップ期間が長くなったり、売却可能な株数の制限が設けられたりするケースがあります。任意ロックアップは、企業や株主が市場からの信頼を高めたい場合に採用されることが多いです。
ロックアップ解除後の株価動向
解除後の株価の動き
ロックアップ解除後、株価は一定の動向を示しやすく、多くの場合一時的な下落が見られます。これは、ロックアップ期間中に売却できなかった株が市場に流入することで、需給バランスが変化し、株価が下落する可能性があるためです。ただし、企業の業績や市場環境など、さまざまな要因によって株価は変動するため、必ずしも下落するとは限りません。
投資家の注意点
ロックアップ解除時期を見越した売買タイミングが重要です。ロックアップ解除が近づくと、株価が下落する可能性があります。
価格対策
ロックアップ解除による株価下落を見越して、適切な価格対策を講じることが求められます。企業は、ロックアップ解除前に、株価下落を防ぐための対策を検討する必要があります。例えば、自社株買いを実施したり、新たな事業計画を発表したりすることで、投資家の関心を維持し、株価の下落を抑えることができます。
M&Aにおけるロックアップの意味
ロックアップは、IPO時の株式に関するものだけでなく、M&Aにおいても使われます。M&Aにおけるロックアップは、M&Aの売り手企業の経営者が会社株式を売却した後も一定期間その会社に残ることを言います。また、経営者だけでなく、売り手企業のキーマンを残留させることもあります。そのため、M&Aにおけるロックアップは、最終契約書内で「キーマン条項」と呼ばれます。
M&Aにおけるロックアップの目的は、
売り手企業の経営陣の持つノウハウを買い手企業に引き継ぐこと。
従業員に対して求心力のある経営陣の場合、M&A後一定期間残留することで、売り手企業の従業員の離反・退職を防ぐこと。
などがあげられます。
M&Aにおけるロックアップの期間は、一般的には3年程度と言われています。ロックアップ期間がそれ以上長くなってしまうと、残留する経営陣のモチベーションを保てなくなる可能性があります。そのため、ロックアップ期間は、買い手企業と売り手企業の経営陣で、慎重に協議を行うことが重要です。
まとめ
執筆者 株式会社M&A共創パートナーズ M&Aアドバイザー 篠浦 隆宏
株式会社みずほ銀行に入行し、富裕層向けの資産運用の提案に従事。株式会社日本M&Aセンターへ転職後、M&Aコンサルタントとして幅広い業種のM&Aをサポート。前職は、新興のM&Aブティックにて主にIT企業のM&A案件を担当し、数多くの譲渡企業の支援に従事。
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