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ネームクリアとは?M&Aにおける目的や注意点について解説!

2024.08.21

M&Aの交渉を行うにあたり気をつけたい重要なポイントが情報漏洩です。 情報漏洩に厳重に注意しながらも、最適なタイミングで相手方に情報提示しなければ、実現できたはずのM&Aも頓挫してしまいます。そこで重要になる「ネームクリア」について、解説していきます。

目次

M&Aにおけるネームクリアとは?

M&Aにおけるネームクリアとは、買い手候補者に売り手の企業の名前や関連情報を明かすことを指します。

ある企業が、会社を売却しようとしているという情報は多くのステークホルダーに影響を与えるため、その厳重な管理が不可欠で、売り手としてはむやみに明かしたくないものです。

そのため、買い手を探している段階では会社名は明かされず、いわゆる「ノンネームシート」を使って、情報のみが提供されます。一方で、買い手としては売り手の情報を得ない限り、買収を決定することができないため、その調節がネームクリアにおける肝となります。

 

ネームクリアの目的・役割

買い手側の重要な判断材料としての役割

前提として、M&Aを行う初期段階では、上記のような情報公開に伴う企業価値の低下のリスク回避のために、「ノンネームシート」という匿名状態レベルで会社情報を記載している資料を買い手候補に提示します。

ノンネームシートを見て、買い手側が買収・合併したいとの意向を示せば、ネームクリアを行い、より詳細に買収・合併に適した企業かどうかを判断するフェーズに移行します。
そして買い手側は、ネームクリアになって明らかになった企業名やその内情を踏まえて、買収・合併といった判断に踏み込むことができるようになるのです。

売り手側の情報漏洩防止としての役割

ノンネームシートを見ている買い手候補とは、まだ秘密保持契約(NDA)を締結していません。そこで、有力な買い手候補に対しては、ネームクリアによって会社名を明かすと同時に、秘密保持契約を締結することで、会社売却の予定があるという情報が漏洩しないようにするという役割があります。

 

ネームクリアの手順と方法

概要

ステップ①:売り手側はノンネームシートを作成する

ステップ②:ノンネームシートを買い手候補に提示する

ステップ③:買い手が買収合併を検討し、現実的な買取の意志を持った場合、ネームクリアの打診を行う

ステップ④:ネームクリアを実施

各ステップの手順と方法は以下の通りです。

ステップ①

ノンネームシートは買い手側が会社のM&Aを行うための初期的な検討資料となり、
・企業概要
・財務状況
・譲渡理由
・希望価格、条件
などを主に記載します。
会社を特定されないことがもっとも重要なポイントなので、これらを抽象的に記載してシートにまとめます。

ステップ②

M&A仲介会社やFA(ファイナンシャルアドバイザー)が、M&Aの成立する可能性がある買い手企業をピックアップして、ノンネームシートを提示して買収を持ち掛けます。

ステップ③

買い手がノンネームシートをもとに検討し、ネームクリアを打診

ステップ④

秘密保持契約を締結することができ、情報漏洩の恐れがないことが担保されれば、ネームクリアに踏み出すことができます。

そして、M&A仲介会社やFAは対象企業のインフォメーションメモランダムから、双方の会社情報や条件を分析し、また、インフォメーションメモランダムを受け取った買い手側は、売り手にさらなる情報の開示を求めることができ、M&Aするか否かの判断を進めていきます。

 

M&Aにおけるネームクリアの課題と注意点

秘密保持契約の締結

ネームクリアによって相互に企業情報が開示されることになるので、売り手側からは、事業の機密資料や、株主・役員の個人情報、ノウハウ、知的財産の情報を保護する必要があります。

一方で、買い手側からは、今後のM&A戦略や経営方針など、競合他社に動向を悟られたくないような情報を、外部に漏らさないようにする必要があります。 また、ネームクリア後の交渉の末、M&Aが成立しないこともあるので、水平的M&Aの場合には、競合である相手方に情報が利用されないようにしなければなりません。

そこで、秘密保持契約を締結し、漏洩した場合の損害賠償の条項を設けておくことによってリスクを回避することが求められます。

インフォメーションメモランダムやトップ面談の準備

M&A交渉にはスピード感が求められ、特に小規模事業のM&Aにおいては、交渉開始後、3カ月程での成約も珍しくなく、かなりの速度を求められます。

また、双方に何件か候補者を抱えていることも多いので、ネームクリア後は迅速にインフォメーションメモランダムを提示し、さらにはトップ面談で詳細な交渉を行えるようにしておきましょう。この一連のプロセスは、早くて1~2週間で行われることを想定して、スケジュールを立てることをお勧めします。

ネームクリアのタイミング

早い段階でのネームクリアは、売却情報を多数者に広めることにならざるを得なくなり、漏洩による企業価値低下のリスクが高まります。

一方で、遅すぎると相手のM&Aの熱が冷め、タイミングを逃して実現が妨げられることもあります。そこで、情報漏洩防止と円滑なM&Aの成功のバランスを図ったタイミングで行うことが求められます。適切なタイミングについては、M&Aに慣れた専門家のアドバイスによるとよいでしょう。

 

まとめ

M&Aプロセスにおけるネームクリアは、企業名やブランド情報の整理・管理を行い、取引の成功をサポートする重要な手法です。ネームクリアの目的は、情報保護、ブランド価値の維持、そしてトランザクションの円滑化です。正確な情報管理により、取引の信頼性や透明性が確保され、ネームクリアを実施する際は、適切なツールや方法を選び、情報の取り扱い、リスクが軽減します。

M&Aに慣れた専門家のアドバイスや成功事例から学ぶことで、効果的なネームクリアの手順を踏み、M&Aプロセスの成功率を高めることができます。


執筆者 株式会社M&A共創パートナーズ M&Aアドバイザー 篠浦 隆宏 

株式会社みずほ銀行に入行し、富裕層向けの資産運用の提案に従事。株式会社日本M&Aセンターへ転職後、M&Aコンサルタントとして幅広い業種のM&Aをサポート。前職は、新興のM&Aブティックにて主にIT企業のM&A案件を担当し、数多くの譲渡企業の支援に従事。


 

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