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NDAとは?M&Aにおいて知っておくべき秘密保持契約を解説!
2024.08.22
M&Aの交渉過程において、情報漏洩による企業価値の低下や顧客情報の流出等を防ぐために必ず必要となるのがNDA(秘密保持契約)です。
今回はNDAとは?という基本的な部分から、締結する理由や締結するタイミング、締結の注意点について説明します。
目次
NDAとは?
NDA(Non-Disclosure Agreement)とは、秘密保持契約のことを指し、当事者間で共有される機密情報を第三者に漏洩しないことを約束する文書です。
万が一、M&Aの過程で開示した自社の重要な製品情報やノウハウ、顧客情報など秘匿性の高い情報が漏洩してしまうと、企業価値の暴落、利益の損失、顧客からの信頼の喪失など様々な弊害をもたらします。
そのため、秘密保持契約書には、企業同士が開示する情報をどのように扱うのかを定め、漏洩した場合の責任、対応方法が明確に示されています。
NDAを締結する理由
機密情報の流出防止
NDAの主な目的は、企業や個人の機密情報を保護することです。これにより、ビジネスの競争力を維持し、不正な情報流出や利用を防ぐことができます。特に、新製品の開発やマーケティング戦略、財務情報などの重要なデータが第三者に漏れると、企業の信用や利益に大きな影響を及ぼす可能性があります。
M&Aを検討しているという情報の流出防止
「社長がM&Aで会社売却を考えているらしい」ということが従業員、取引先、銀行まで広がって取引停止という事態に発展し、最悪の場合、会社の大事な経営資源がM&A成約前に流出してしまい、倒産ともなりかねません。
そこで、NDAを締結することで、情報の流出を防ぎ、会社を守ることができます。
信頼関係の構築
NDAの締結により双方のビジネス関係における信頼性が高まり、M&Aを円滑に進めることができます。また、情報を提供する立場としては、機密情報を受け取る側がその情報を適切に取り扱うことに対する保証を得ることができるので、自社の情報を開示しやすくなります。
違反行為の抑止
NDAには、漏洩した場合の損害賠償責任などが規定されることが多いので、双方特に気を付けて情報の取り扱いを行うことになるというメリットがあります。これによって、情報の安全性が高まります。
NDAに含まれる主要な項目
NDAには以下の主要な項目が含まれます。もっとも一例に過ぎないので双方の話し合いによって、柔軟にそのほかの条項を定めることも可能です。
①NDA締結の目的
②秘密情報の定義:機密情報の具体的な範囲や内容を明確に定義します。
③秘密情報の開示を受けた場合の義務:受領者が機密情報をどのように取り扱うべきかという義務を規定します。目的外利用や第三者への開示の禁止などを定めます。
④秘密情報の開示を認める例外的な場合:機密情報として扱わない情報となる例外事項を記載します。
⑤秘密情報の取り扱い方法:管理方法や手段について記載します。
⑥契約の有効期間:契約の有効期間と秘密保持の期間を明示します。
⑦違反時の対応:契約違反が発生した場合の対応策や罰則を記載し、損害賠償責任がかされることが一般的です。
NDA締結のタイミング
売り手企業が秘密情報を開示するとき
M&Aを行う際には仲介会社やアドバイザーにお願いすることが多いのですが、仲介会社などはノンネームシートやインフォメーションメモランダムの作成の為に売り手企業様の企業情報を求めることになります。その際、譲渡会社は仲介会社等とNDAを締結して、秘密情報を保持します。
買い手企業が売り手企業の詳細情報をもとめる時
買い手企業は、仲介会社より売り手企業の名前や詳細を非開示としたノンネームシートをもとに初期的な検討を行います。初期的な検討から、本格的な検討を進めるため、売り手企業様の名前や財務情報等の詳細な情報を要求することとなりますが、その際にNDAを締結し、買い手企業様が当該情報の秘密保持の義務を負います。
デューデリジェンスを実施するとき
デューディリジェンスでは、より重要な秘密情報が開示されるため、基本合意書のなかに秘密保持に関する定めを設けることも多いです。
その他、譲渡企業様の意向に応じて、上記以外の場面でもNDAを締結することもあります。
NDA締結に当たっての注意点
秘密保持契約の例外の規定
専門的な知見を有する一定の者(例えば、公認会計士、税理士、弁護士等の士 業等専門家及び公的な相談窓口である事業承継・引継ぎ支援センター等)から支援を受けたり、意見や助言を求めたり(広義のセカンド・オピニオン)することの妨げ にならないよう、秘密保持条項において、これらの者への情報共有が許容されてい るかどうか(秘密保持義務が一部解除されているか否か)も確認しておくことが望ましいでしょう。
義務違反した場合の対応
義務違反をした場合の規定が情報漏洩の抑止力となると共に、万が一の場合の保証となるので、損害賠償請求権と秘密情報の使用に関する差止請求権を定めるのが一般的です。
秘密保持期間、契約終了後の対応(情報の返還又は廃棄)が明確か
契約の有効期間は始期と終期、解約時の手続きについて定めます。
また、契約が永久的に存続するとすると当事者の負担が過度となるので、契約終了後1〜3年程度とする存続条項を定めるのが一般的です。
ただし、一律に定めるのではなく、秘密情報の内容や性質のほか、企業の方針により情報ごとに設定することがより望ましいでしょう。
専門家のアドバイス
NDAの範囲の記載漏れなどにより、せっかくNDAを締結したのにも関わらず、いざというときに損害賠償請求することができないというトラブルを防ぐためにも、抜けがないか、弁護士などの専門家に確認してもらうとよいでしょう。
参考記事「M&A成功の鍵 弁護士の役割と重要性」
まとめ
NDA(秘密保持契約)は、企業や個人が共有する機密情報を保護するための重要な契約であり、情報漏洩の防止のみでなく、当事者の信頼も構築されます。
また、NDAは情報が開示される適切なタイミングで随時行われることが必要であり、NDAの範囲を広げすぎると、セカンドオピニオンを聞くことができなくなるなどの弊害を生じるため、NDAの適用されない例外規定を策定しておくことも求められます。
NDAの有効期間、期間終了後の対応についても忘れずに定める等の細かい対応が必要となるため、弁護士等の専門家の確認してもらうことがおすすめです。
執筆者 株式会社M&A共創パートナーズ M&Aアドバイザー 篠浦 隆宏
株式会社みずほ銀行に入行し、富裕層向けの資産運用の提案に従事。株式会社日本M&Aセンターへ転職後、M&Aコンサルタントとして幅広い業種のM&Aをサポート。前職は、新興のM&Aブティックにて主にIT企業のM&A案件を担当し、数多くの譲渡企業の支援に従事。
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