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株主間契約とは? そのメリットや注意点から条項例までわかりやすく解説!
2024.08.27
株主間契約の重要性と活用方法を解説します。経営の安定化、利益配分の明確化、トラブル防止に役立つ契約書の主要条項や注意点について解説します。
目次
株主間契約とは
定義と基本的な概念
どのような状況で必要か
株主間契約の主要なメリット
株主間契約は企業の経営において、以下のようなメリットがあります。
柔軟なルール設定
株主間契約には、企業経営に多くのメリットがあります。まず、企業経営において柔軟なルールを設けることができます。種類株は同じくルールを持つ株式ではありますが、9種類しかないため制限があります。しかし、株主間契約は制限がないため、より柔軟に対応することができます。
秘密性の高さ
株主間契約における注意点
株主間契約を作成する際にはいくつかの注意点があります。
法的効力の有無
株主間契約には法的効力がない点です。会社の経営についてルールを設定することができる非常に便利な株主間契約ですが、会社法のような法的な効力はありません。指定する条項に対しては責任を問われますが、法的な効力は持ちません。
適用範囲
株主間契約は効力に制限があります。株主間契約は、あくまで契約を結んだ株主間に対して有効になります。すべての株主に対して効力を持つ定款などに比べて、効力が限られてしまうという点には注意が必要です。
株主間契約の主な条項例
出資比率に関する事項
株主間契約を用いて、出資比率について定めることができます。また、権利行使価格を調整することができる希釈化防止条項によって、出資時と比率が大きく変動するリスクを抑えることができます。
事業に関する条項
事業に関して定められる条項には、①会社と株主に関する取引内容や条件について②資金調達③配当④従業員の派遣⑤株主に対する情報提供などがあります。
株式譲渡に関する条項
譲渡制限:第三者への譲渡の禁止。
先買権:株式を第三者に売却しようとする場合に、その売却条件と同等の条件で買い取る権利を与える契約のこと。 ファースト・リフューザル・ライト(First refusal right)とも呼ばれる。
共同売却請求権(Tag Along Right):株主が保有株式を譲渡した際に、他の株主も株式を同じ買い手に売却できる権利を意味します。
強制売却請求権(Drag Along Right):株主が保有株式を譲渡する際に、その他の株主も同じ条件で株式を売却しなければならないという条項。
コールオプション:株主間で特定の事象が発生した時に、相手方の株主に対して保有株式の全部または一部の譲渡を求めることができる。
プットオプション:株主間で特定の事象が発生した時に、自身の保有株式を相手側の株主に対して一部または全部を売りつけることができる。
契約終了に関する条項
株主間契約の終了について、一方の株主が当該企業の株主でなくなった場合や重大な契約違反や信用不安が発生した場合などを定めることができます。
デッドロックに関する条項
デッドロックとは、株主間で意見が割れ、会社の意思決定ができない場合のことをいいます。こうした場合、企業の経営が円滑に行われず、会社としての不利益に繋がる可能性があります。そのため、デッドロックが発生した場合にも意思決定を円滑化するために、株主間契約が有効になります。デッドロックに関して取り決める場合に考えられるのは、①株主間の協議②第三者の介入③コール/プットオプションによる株式譲渡などが挙げられます。
まとめ
株主間契約(Shareholders’ Agreement)は、企業経営の安定性を高めるために重要な役割を果たします。契約を通じて、経営の安定化や利益配分の明確化、トラブル防止などのメリットを享受できる一方、契約内容の具体性や法的リスクの回避、定期的な見直しが成功には欠かせません。
契約に含まれる主要な条項として、経営権の分配、株式の譲渡に関する条項制限、経営方針の決定などがあり、これらは企業運営の基盤を支える重要な要素です。また、実務的には具体的な契約書の作成と適用が必要であり、弁護士等の専門家に相談することもお勧めします。
株主間契約は、企業の成長と安定を支えるための重要な取り決めです。適切な契約を締結し、実行することで、企業の未来をより確かなものにすることができます。
執筆者 株式会社M&A共創パートナーズ M&Aアドバイザー 篠浦 隆宏
株式会社みずほ銀行に入行し、富裕層向けの資産運用の提案に従事。株式会社日本M&Aセンターへ転職後、M&Aコンサルタントとして幅広い業種のM&Aをサポート。前職は、新興のM&Aブティックにて主にIT企業のM&A案件を担当し、数多くの譲渡企業の支援に従事。
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