Knowledge M&Aお役立ち記事

株式譲渡契約書とは?基本構成や作成における注意点について解説!

2024.08.20

株式譲渡によるM&Aを行う際に必須となる「株主譲渡契約書」。 自社に不利益な契約内容となれば、M&Aによるシナジー効果を得ることができないため、慎重に契約を締結することが求められます。そこで、初心者向けに株式譲渡契約書の作成におけるポイントを解説します。

目次

株式譲渡契約書とは?

株式譲渡契約書とは、企業の株式を譲渡する際に必要となる重要な契約書です。この契約書は、譲渡者(売り手)と譲受者(買い手)との間で、株式の譲渡に関する条件や取り決めを明確にするための書類です。

株式譲渡とは、企業の所有権の一部または全部を他者に譲渡する行為であり、これにより株式の所有者が変更されます。また、株式譲渡契約の締結により、会社分割や合併などのような会社法上の細かい手続きを回避して、経営権を譲渡することが出来ます。

株式譲渡契約書の主な目的は、双方が合意した条件を文書化し、後々のトラブルを防止することです。この契約書には、譲渡する株式の数、譲渡価格、支払い方法、譲渡の日付などが記載されます。また、譲渡後の企業経営に関する取り決めや、譲渡者と譲受者の責任範囲についても詳細に記述されることが一般的です。
契約書を適切に作成することで、双方の権利と義務を明確にし、円滑な譲渡手続きを実現することができます。

 

株式譲渡契約書の重要性

上述のように契約書が存在することで、譲渡に関する条件が明確に可視化され、後々のトラブルを未然に防ぐことができます。 特に、譲渡者と譲受者の間で意見の相違が生じた場合、契約書はその解決の基準となるので、リスク管理の観点からも、契約書の存在は非常に重要です

 

株式譲渡契約書の基本構成

株式譲渡契約書の基本構成は、いくつかの主要な要素で成り立っています。

契約の目的と背景

契約内容になるわけではありませんが、冒頭に契約目的と背景が記載されることが一般的です。

基本合意

・譲渡する株式の種類
・譲渡する株式の数
・譲渡価格 を記載します。

種類株式発行会社の場合は、株式の種類も正確に特定することに注意しましょう。また、譲渡価格は契約の肝ですが、専門家による算定が必要になるので、公認会計士や専門のM&Aアドバイザー等に依頼して算出することが求められます。

支払い方法・支払時期

譲受人の払い込みが滞ることのないように、株式譲渡と同時に行うことがもっとも好ましいと考えられます。 しかし、契約の相手方の資金調達の都合などによっては当事者の話し合いで、払い込みの時期を株式譲渡後にして、遅らせることも可能です。 また、株券発行会社であれば、譲渡金支払いと同時に株券を発行する旨を記載することを忘れないようにしましょう。

譲渡承認の期日・実行日

株式譲渡では、取引を円滑に進める準備期間を確保するために、契約締結日と譲渡実行日を分けることが通常ですので、締結日から1か月を目途に実行日を定めましょう。

表明保証

株主譲渡契約書内において、お互いが正確な事項を提示していることを表明する内容を記載します。つまり、お互いが取引の上で嘘をついていないことを、確認する条項を指します。
万が一、後から相手方が正しい情報を提供していなかったことが発覚していた時に、表明保証が役立ちます。例えば、デューデリジェンスで、株式譲渡のリスクが顕在化したときに、表明保証の条項により手当を行います。

 

株式譲渡契約書の作成方法

株式譲渡契約書を作成する際には、いくつかのステップを踏む必要があります。

ステップ① 株式譲渡承認請求

譲渡制限株式の譲渡であれば、会社の承認が必要となるため、株式譲渡承認請求を会社に対して行うことが必要となります。

ステップ② 株主総会の開催&承認

取締役会設置会社であれば、取締役会で、取締役会を設置していない会社であれば、株主総会で承認を得ることが必要となります。

ステップ③ 株主譲渡契約の締結

ここで、株主譲渡契約書を作成します。作成方法として、まずは譲渡者と譲受者が契約の条件について合意することが前提です。 その後、弁護士などの専門家の助けを借りて、契約書のドラフトを作成します。 契約書の内容は、双方が合意した条件を反映し、必要な項目がすべて網羅されていることを確認する必要があります。 ドラフトが完成したら、双方が内容を確認し、必要な修正を行います。 最終的に、契約書に署名・捺印を行い、正式な契約となります。

ステップ④ 株式の名義書き換え

名義書き換えを行わなければ、譲受人が株主であることを会社に対して対抗することができないため、必ず行うことが必要です。

 

株式譲渡契約書作成の注意点

株式譲渡契約書の実例としては、譲渡者が株式の一部を第三者に譲渡するケースや、家族間で株式を譲渡するケースなどが挙げられます。これらの事例では、譲渡の条件や背景が異なるため、契約書の内容もそれぞれ異なります。

そこで、注意すべきポイントとしては、個別に自社に不利益な条項がないかを詳細に確認すること、曖昧な表現を避けること、そして、M&Aの専門家の助けを借りることが重要です。 専門家の手を借りることで、不測の事態に備えた内容の組み込まれた契約の締結、自己に不利益にならないような契約の締結を実現することができます。

また、株式譲渡契約においては、法務、税務、財務に関する複雑な手続きが必要であるため、自社のみで行うことは困難を極めることでしょう。 また、法人が株式譲渡契約書を作成した場合は、法人税法により原則、契約締結後7年間は契約書の保管義務が定められています。作成後、契約書の紛失に注意しましょう。

 

まとめ

株式譲渡契約書は、企業の株式を譲渡する際に必要となる重要な契約書となります。この契約書は、譲渡者と譲受者の間で譲渡に関する条件を明確にし、後々のトラブルを防止する役割を果たします。契約書の基本構成には、株式の詳細、譲渡価格、支払い方法、譲渡の時期や手続き、譲渡後の取り決めなどが含まれますが、作成には、譲渡者と譲受者の合意が前提となり、弁護士などの専門家の助けを借りてドラフトを作成します。

契約書作成に際しては、譲渡の条件や背景に応じて内容が異なるため、詳細な確認が必要となります。円滑な譲渡手続きを実現するために、双方の権利と義務を明確にし、専門家の協力を得ながら、契約書を作成することがおすすめです。

 


執筆者 株式会社M&A共創パートナーズ M&Aアドバイザー 篠浦 隆宏 

株式会社みずほ銀行に入行し、富裕層向けの資産運用の提案に従事。株式会社日本M&Aセンターへ転職後、M&Aコンサルタントとして幅広い業種のM&Aをサポート。前職は、新興のM&Aブティックにて主にIT企業のM&A案件を担当し、数多くの譲渡企業の支援に従事。


 

M&Aに関するお役立ち記事の一覧はこちら

経験豊富なコンサルタントが理想のM&A成約を叶えます。

どのようなお悩みでも、経験豊富なM&Aのスペシャリストが在籍する
弊社が丁寧に対応いたします。

無料相談はこちら(秘密厳守)