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TOBとは?株式公開買付け(Takeover Bid)の基本概念や事例まで解説!

2024.08.26

TOBとは、株式公開買付け(Takeover Bid)の略称で、企業の経営権を取得するための手法としてよく利用されます。本記事では、TOBの基本的な概念からその利点と欠点、具体的な事例までを詳しく解説します。

目次

TOBの基本概念

TOBとは何か

TOB(株式公開買付け)とは、企業が他の企業の株式を市場外で一定期間・価格で買付けることを指します。TOBは、企業が他の企業の経営権を取得したり、経営を安定化させたりするために用いられる手法です。市場外での取引であるため、通常の株式取引とは異なるルールや手続きが適用されます。

TOBの目的

TOBの主な目的は、経営権の取得や経営の安定化です。企業が大規模な買収を行うための手法の一つとして利用されます。TOBによって、買収者は対象企業の経営を支配し、自社の事業戦略に組み込むことができます。また、競合企業の排除や、新たな市場への進出など、様々な目的でTOBが実施されます。

TOBの種類

TOBは、買収者の意図や対象企業との関係性によって、大きく3つの種類に分類されます。

友好的TOB

友好的TOBは、買収対象となる企業の経営陣がTOBに賛成し、協力して買収を進めるケースです。買収者と対象企業は事前に交渉を行い、買付価格や買収後の経営体制について合意します。友好的TOBは、敵対的TOBに比べて、スムーズに買収手続きを進めることができるため、買収成功率が高い傾向があります。

敵対的TOB

敵対的TOBは、買収対象となる企業の経営陣がTOBに反対し、買収を阻止しようとするケースです。買収者は、対象企業の経営陣との交渉なしに、直接株主にTOBを申し出ます。敵対的TOBは、買収対象企業の経営陣との対立が激化し、裁判沙汰になることもあります。

防衛的TOB

防衛的TOBは、対象企業が敵対的TOBから身を守るために、自社株を買い戻すTOBを実施する場合です。対象企業は、自社株を買い戻すことで、敵対的買収者が経営権を取得することを阻止しようとする戦略をとります。

TOBのメリットとデメリット

買い手側のメリット

TOBの買収者にとってのメリットとして、買収成立までの予見性が高い点や、株価変動を受けにくい点が挙げられます。TOBは、市場での株式取得とは異なり、事前に買付価格と期間が決められているため、買収成立までのスケジュールが明確です。また、市場での株式取得のように、株価変動によるリスクを回避することができます。

売り手側のメリット

TOBに応じる株主にとっては、通常市場価格よりも高い価格で株式を売却できるチャンスがあります。TOBでは、買収者が市場価格よりも高い価格で株式を買付けることが多いです。これは、買収者が対象企業の経営権を取得するために、株主の賛同を得る必要があるためです。研究開発や技術革新に関する研究を行う学術機関。企業の技術力や競争力に影響を与えます。

デメリット・注意点

TOBにはコストがかかり、特に敵対的TOBの場合はその成功率が低く、紛争が起きることもあります。TOBには、弁護士費用や会計監査費用など、様々なコストがかかります。また、敵対的TOBの場合は、対象企業の経営陣が抵抗するため、買収が失敗する可能性も高くなります。さらに、TOBをめぐって、買収者と対象企業の間で訴訟が起こることもあります。

 

TOBの手続き方法

公開買付の公告と届出書の提出

まず、買収を行いたい企業は、公開買付けの公告と買付届出書を提出し、買付価格や期間を示します。公開買付けの公告は、対象企業の株主に対して、TOBの内容を知らせるためのものです。買付届出書は、金融庁に提出する書類で、TOBの詳細な内容が記載されています。

意見表明報告書の提出

対象の企業は、その意見を表明する報告書を提出します。これには賛成、反対、または中立の立場が記載されます。対象企業は、TOBに対して賛成するのか、反対するのか、または中立の立場をとるのかを表明する報告書を提出します。この報告書は、株主がTOBに関する判断をするための重要な情報となります。

買付期間中の株主の行動

株主は買付期間中に、自身の株式を売却するか保持するかを決定します。買付期間中は、株主はTOBに応じるか、それとも株式を保持するかを決定する必要があります。TOBに応じる場合は、買付価格で株式を売却することができます。株式を保持する場合は、TOBが成立した場合でも、そのまま株式を保有することができます。

TOBの結果とその公表

買付期間終了後、TOBの結果が公表され、必要な報告書が提出されます。買付期間が終了すると、TOBの結果が公表されます。TOBが成立した場合は、買収者は対象企業の株式を取得することができます。TOBが不成立の場合は、買収は失敗となります。

 

具体的なTOB事例

第一生命HDとベネフィットワンの事例

2024年2月9日、第一生命HDはベネフィットワンに対してTOBを実施し、その結果を公表しました。第一生命HDは、ベネフィットワンの株式の過半数を取得することで、経営権を取得することを目的としていました。このTOBは、友好的TOBとして行われ、ベネフィットワンの経営陣はTOBに賛成しました。

ニデックとTAKISAWAの事例

2023年10月27日、ニデックはTAKISAWAへのTOBを成立させ、その詳細を公開しました。ニデックは、TAKISAWAの株式の過半数を取得することで、経営権を取得することを目的としていました。このTOBは、同意なき(敵対的)TOBとして行われ、TAKISAWAの経営陣はTOBに反対しました。しかし、ニデックは最終的にTOBを成立させることに成功しました。

東芝に対するTOB

2023年9月21日、東芝に対するTOBが成立し、その影響について多くの注目を集めました。東芝は、経営不振に陥っていたため、複数の企業からTOBの提案を受けていました。最終的には、日本産業パートナーズ(JIP)など国内連合による共同TOBが成立し、東芝は経営再建に向けて新たなスタートを切ることになりました。

 

まとめ

TOBは企業買収の重要な手法であり、そのメリットとデメリットを把握することが重要です。TOBは、企業が成長するために有効な手段となる一方で、リスクも伴います。

適切な戦略を立てることで、企業の成長を加速させることが可能です。TOBに関する情報を収集し、理解を深めることで、企業はより良い意思決定を行うことができます。また、TOBは、今後も企業買収の重要な手法として、その役割を担っていくと考えられます。

特に、グローバル化が進む現代においては、国境を超えたTOBが増加する可能性があります。
また、近年では、テクノロジー分野における企業買収が活発化しており、TOBを通じて、新たな技術やサービスを手に入れようとする動きが加速しています。

さらに、企業の経営再編や成長戦略におけるTOBの活用が期待されています。TOBは、企業にとって、新たな事業分野への進出や、競争力の強化などの機会を提供する有効な手段となります。

TOBは、企業買収の複雑な世界における重要な要素であり、今後もその動向に注目していく必要があります。


執筆者 株式会社M&A共創パートナーズ M&Aアドバイザー 篠浦 隆宏 

株式会社みずほ銀行に入行し、富裕層向けの資産運用の提案に従事。株式会社日本M&Aセンターへ転職後、M&Aコンサルタントとして幅広い業種のM&Aをサポート。前職は、新興のM&Aブティックにて主にIT企業のM&A案件を担当し、数多くの譲渡企業の支援に従事。


 

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