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TOBとは?株式公開買付け(Takeover Bid)の基本概念や事例まで解説!

2024.12.23

TOBとは、株式公開買付け(Takeover Bid)の略称で、企業の経営権を取得するための手法としてよく利用されます。本記事では、TOBの基本的な概念からその利点と欠点、具体的な事例までを詳しく解説します。

目次

TOBの基本概念

TOBとは何か

TOB(株式公開買付け)とは、特定の会社の株式を大量に取得しようとする者が、不特定かつ多数の者に対して、公告により、株券等の買付等の申し込みを行い、東京証券取引所のような取引金融商品市場外で株券等の買付を行うことを言います(金融商品取引法27条の2第6項)。
TOBは、企業が他の企業の経営権を取得したり、経営を安定化させたりするために用いられる手法です。市場外での取引であるため、通常の株式取引とは異なるルールや手続きが適用されることに注意しましょう。

TOBの由縁

 特定の者が第三者である株式会社(目標会社)の発行済株式総数の多数割合の取得を意図するとき、TOBの制度が設けられる前は、目標とする割合に到達するまで、長期間にわたって少量ずつの株式を取得を繰り返し、最終的に目標とする多数割合の株式を取得するという方法が行われていました。
 しかし、この方法を許容すると、一般の株主や株主になろうとする者は、株価の変動が、会社の業績が評価されたせいかなのか、それとも特定の者の意図により引き起こされている変動なのかわかりませんでした。
 そこで、アメリカでは、1960年代後半に、連邦証券取引所に株式公開買付けの制度が新設されました(ウィリアムズ法)。そして、日本でも1971年にTOBが新設され、現在の金融商品取引法が当該制度を定めています。

TOBの目的

TOBの主な目的は、経営権の取得や経営の安定化です。企業が大規模な買収を行うための手法の一つとして利用されます。TOBによって、買収者は対象企業の経営を支配し、自社の事業戦略に組み込むことができます。また、競合企業の排除や、新たな市場への進出など、様々な目的でTOBが実施されます。

TOBの種類

TOBは、買収者の意図や対象企業との関係性によって、大きく3つの種類に分類されます。

友好的TOB

友好的TOBは、買収対象となる企業の経営陣がTOBに賛成し、協力して買収を進めるケースです。買収者と対象企業は事前に交渉を行い、買付価格や買収後の経営体制について合意します。友好的TOBは、敵対的TOBに比べて、スムーズに買収手続きを進めることができるため、買収成功率が高い傾向があります。

敵対的TOB

敵対的TOBは、買収対象となる企業の経営陣がTOBに反対し、買収を阻止しようとするケースです。買収者は、対象企業の経営陣との交渉なしに、直接株主にTOBを申し出ます。敵対的TOBは、買収対象企業の経営陣との対立が激化し、裁判沙汰になることもあります。具体的な敵対的TOBの攻撃方法については、のちほど説明します。

防衛的TOB

防衛的TOBは、対象企業が敵対的TOBから身を守るために、自社株を買い戻すTOBを実施する場合です。対象企業は、自社株を買い戻すことで、敵対的買収者が経営権を取得することを阻止しようとする戦略をとります。

 

TOBのメリットとデメリット

買い手側のメリット

TOBの買収者にとってのメリットとして、買収成立までの予見性が高い点や、株価変動を受けにくい点が挙げられます。TOBは、市場での株式取得とは異なり、事前に買付価格と期間が決められているため、買収成立までのスケジュールが明確です。また、市場での株式取得のように、株価変動によるリスクを回避することができます。

売り手側のメリット

TOBに応じる株主にとっては、通常市場価格よりも高い価格で株式を売却できるチャンスがあります。TOBでは、買収者が市場価格よりも高い価格で株式を買付けることが多いです。これは、買収者が対象企業の経営権を取得するために、株主の賛同を得る必要があるためです。研究開発や技術革新に関する研究を行う学術機関。企業の技術力や競争力に影響を与えます。

デメリット・注意点

TOBにはコストがかかり、特に敵対的TOBの場合はその成功率が低く、紛争が起きることもあります。TOBには、弁護士費用や会計監査費用など、様々なコストがかかります。また、敵対的TOBの場合は、対象企業の経営陣が抵抗するため、買収が失敗する可能性も高くなります。さらに、TOBをめぐって、買収者と対象企業の間で訴訟が起こることもあります。

 

TOBの手続き方法

公開会社が発行している株式等を対象として株式公開買付けを行う場合、株券等の買付けは、期間を定めて、買付等の価格は均一の条件で行わなければなりません。なお、株券の保管や買付け等の代金の支払いなどの事務処理は、必ず証券会社や銀行が行わなければなりません。

また、買付け後に所有する株式等の割合が、100分の5を超えるときは、当該買付けは必ず、株式公開買付けによらなければなりません(金商法27条の2第1項1号)。以下の手順で、TOBを進めましょう。

公開買付の公告と届出書

まず、買収を行いたい企業は、公開買付けの公告と買付届出書を提出し、買付価格や期間を示します。公開買付けの公告は、対象企業の株主に対して、TOBの内容を知らせるためのもので、一般的には新聞上などで行われます(金商法27条の3第1項)。当該、公開買付開始公告を行った者は「公開買付者」となり、公開買付け期間中に、公開買付けによらないで当該公開買付けにかかる、株券等の発行者の株券等の買付けを行うことが禁止されます(金商法27条の5)。これに違反して、別途買付を行った場合は、損害賠償責任を負うことになる(金商法27条の17第1項)ので気を付けましょう。

また、公開買付者は、公開買い付け期間中には、買付け等の価格の引き下げ、買付予定の株券の数の減少、買付け等の期間の短縮、その他政令で定める買付条件等の変更を行うことはできません(金商法27条の6第1項)。

買付届出書には、金融庁に提出する書類で、内閣府令で定める事項を記載し(金商法27条の9第1項)、当該株券等の買付を行おうとする者に対し、公開買付説明書を交付する必要があります(金商法27条の9第1項)。

意見表明報告書の提出

対象の企業は、その意見を表明する報告書を提出します。これには賛成、反対、または中立の立場が記載されます。対象企業は、TOBに対して賛成するのか、反対するのか、または中立の立場をとるのかを表明する報告書を提出します。この報告書は、株主がTOBに関する判断をするための重要な情報となります。

買付期間中の株主の行動

株主は買付期間中に、自身の株式を売却するか保持するかを決定します。買付期間中は、株主はTOBに応じるか、それとも株式を保持するかを決定する必要があります。TOBに応じる場合は、買付価格で株式を売却することができます。株式を保持する場合は、TOBが成立した場合でも、そのまま株式を保有することができます。

TOBの結果とその公表

買付期間終了した時、公開買付者は、原則として、公開買付期間中に応募してきた株券の全部を買い付ける義務(全部買付義務)を負います。

もっとも、公開買付開始公告・公開買付届出書において、①応募株式等の数の合計が買付予定株券数の全部または一部としてあらかじめ公告・届出書に記載されていた数に満たないときは、応募株券全部の買付を行わない、②応募株券等の数の合計が買付予定の数を超えるときは、その超える部分の全部または一部の買付けを行わない、といった条件を記載していた場合には、全部買付義務は生じません(金商法27条の13第4項)。

そして、買付期間が終了するとTOBの結果が公表され、必要な報告書が提出されます。TOBが成立した場合は、買収者は対象企業の株式を取得することができます。TOBが不成立の場合は、買収は失敗となります。

 

TOBの攻撃方法

上記のように、大量の株式を買い占めようとするときは必ず、期間を定めたうえでTOBを行わなければならない運用になったので、敵対的TOBの場合、株式の取得を試みる者は、全国民の見ているところで正々堂々と目標会社の取締役らと戦うことになります。

そして、TOBが開始すると、30日~60日程度の短期間で勝負がつくので、攻撃会社は以下のような方法で勝負をかけます。

①二段階株式公開買付け

二段階公開買付けとは、攻撃会社が、第一段階としてTOBを行い、あとに二段階目として吸収合併を行うと公表することにより、目標会社の株式の取得を実現することをいいます。

具体的には、一段階目のTOBで、わざと市場価格よりも高めの価格で設定します。通常よりも高い価格で目標会社の株式を買い取ってくれるので、目標会社の株主の多くが買取に応じることになります。これによって、公開買付者は、目標会社の株式の50%以上を獲得します。

そして、TOB開始と同時に二段階目として、株式公開買付終了後、合併対価を市場価格よりも低い価格で吸収合併(目標会社を消滅会社とする吸収合併)を行い、これによって目標会社に残ったすべての株式を取得することを予告します。目標会社の株主は、第一段階に示された高価格と二段階目に示された低価格を比較して、こぞって第一段階の株式公開買付けにおうじることになります。損を避けたいという気持ちが先行して、株主の判断力は鈍り、スピード感のある売却を決断することになります。

②レバレッジド・バイアウト

TOBを行う際には一気に大量の株式を買うことになるので、多額の資金が必要になります。そこで、レバレッジド・バイアウトという買収資金を集める方法が考案されました。

レバレッジド・バイアウトでは、まず第一に攻撃会社は目標会社を探します。目標会社の買収に成功した後、吸収合併を行い、その後、目標会社の様々な資産や事業部門をバラバラに切り離して売却し、その結果もうけが出るような会社を探します。

次に、買収のために十分な資金を有さない攻撃会社は、金融機関に対し、計画の全容を説明し、説明に納得した金融機関から買収のための資金を借ります。なお、この時金融機関からは多額の資金を借りるのでどうしても高額な利息が発生してしまいます。

そして、資金を得た攻撃会社は、目標会社の株式の50%以上を獲得するために、TOBを開始します。無事TOBに成功したら、攻撃会社は目標会社を消滅会社とする吸収合併を行います。吸収合併のもたらす包括承継の効果により、消滅会社のすべての財産が存続会社である攻撃会社のものになります。

最後に、攻撃会社は包括承継により承継した財産を売却することによって大金を得て、金融機関へ返済します。先ほど述べたように高い利息は付いていますが、それでも包括承継により承継した財産の売却によって得た資産との差額が儲けとなります。全体の金額の規模が大きいので、差額といっても多額にわたります。

 

具体的なTOB事例

UUUMに対すフリークアウトのTOB

2024年11月14日、UUUM株式会社は、現支配株主である株式会社フリークアウト・ホールディングスによる同社株式の公開買付け(TOB)に賛同の意見を表明しました。将来的にUUUMはフリークアウトの完全子会社となり、上場廃止となる見通しです。公開買付者であるフリークアウト社は、現在、UUUM株式の50.97%を保有しています。

第一生命HDとベネフィットワンの事例

2024年2月9日、第一生命HDはベネフィットワンに対してTOBを実施し、その結果を公表しました。第一生命HDは、ベネフィットワンの株式の過半数を取得することで、経営権を取得することを目的としていました。このTOBは、友好的TOBとして行われ、ベネフィットワンの経営陣はTOBに賛成しました。

ニデックとTAKISAWAの事例

2023年10月27日、ニデックはTAKISAWAへのTOBを成立させ、その詳細を公開しました。ニデックは、TAKISAWAの株式の過半数を取得することで、経営権を取得することを目的としていました。このTOBは、同意なき(敵対的)TOBとして行われ、TAKISAWAの経営陣はTOBに反対しました。しかし、ニデックは最終的にTOBを成立させることに成功しました。

東芝に対するTOB

2023年9月21日、東芝に対するTOBが成立し、その影響について多くの注目を集めました。東芝は、経営不振に陥っていたため、複数の企業からTOBの提案を受けていました。最終的には、日本産業パートナーズ(JIP)など国内連合による共同TOBが成立し、東芝は経営再建に向けて新たなスタートを切ることになりました。

 

まとめ

TOBは企業買収の重要な手法であり、そのメリットとデメリットを把握することが重要です。TOBは、企業が成長するために有効な手段となる一方で、リスクも伴います。

適切な戦略を立てることで、企業の成長を加速させることが可能です。TOBに関する情報を収集し、理解を深めることで、企業はより良い意思決定を行うことができます。また、TOBは、今後も企業買収の重要な手法として、その役割を担っていくと考えられます。

特に、グローバル化が進む現代においては、国境を超えたTOBが増加する可能性があります。
また、近年では、テクノロジー分野における企業買収が活発化しており、TOBを通じて、新たな技術やサービスを手に入れようとする動きが加速しています。

さらに、企業の経営再編や成長戦略におけるTOBの活用が期待されています。TOBは、企業にとって、新たな事業分野への進出や、競争力の強化などの機会を提供する有効な手段となります。

TOBは、企業買収の複雑な世界における重要な要素であり、今後もその動向に注目していく必要があります。


執筆者 株式会社M&A共創パートナーズ M&Aアドバイザー 篠浦 隆宏 

株式会社みずほ銀行に入行し、富裕層向けの資産運用の提案に従事。株式会社日本M&Aセンターへ転職後、M&Aコンサルタントとして幅広い業種のM&Aをサポート。前職は、新興のM&Aブティックにて主にIT企業のM&A案件を担当し、数多くの譲渡企業の支援に従事。


 

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