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ノジマ、PC事業のVAIOを買収を発表!本M&Aの詳細・背景について解説します!
2024.11.12
2024年11月11日、家電量販大手の株式会社ノジマがパソコンメーカーのVAIO株式会社を買収すると発表しました。VAIOは、ソニーのPCブランドとして発売され、人気を博しましたが、2014年にソニーから独立して設立されました。今回、ノジマが、日本産業パートナーズなどが保有するVAIO株式を取得する予定。本買収の詳細、背景について解説します。
目次
ノジマの概要
ノジマの沿革
今回VAIOを買収したノジマは、1962年に家電量販店として創業。神奈川・東京多摩八王子地区に集中的にロードサイド店舗を展開し、1989年には売上高100億円を突破。その後も店舗や商品ラインナップの拡大し、2016年には東証一部へ市場変更。2024年3月期の売上高は、7,613億円まで成長。家電量販店業界では、ヤマダ電機、ビックカメラに次ぐ第3位となっております。
ノジマの特徴は、メーカーやキャリアに縛られないフラットな立場で、自社従業員がお客様のニーズに合った商品をおすすめする「コンサルティングセールス」による接客を行っており、メーカー販売員のいない唯一の家電専門店として確固たる地位を築いています。
ノジマの経営方針
ノジマは、上記のコンサルティングセールに加え、「デジタル一番星」を経営方針に掲げ、IT分野のサービス提供を拡大しています。その戦略の中心として、M&Aを積極的に活用。家電量販店の域を超えた事業ポートフォリオを構築しています。
以下、ノジマが行った代表的なM&Aの実績となります。
時期 | 対象企業 | 事業内容 |
2015年 | ITX | スマホ販売代理店 |
2017年 | ニフティ | インターネットプロバイダ |
2019年 | Courts Asia | シンガポール、マレーシア、インドネシアの家電販売 |
2020年 | セシール | カタログ通販 |
2023年 | Thunder Match Technology | マレーシアでのパソコン、携帯電話販売 |
2023年 | コネクシオ | スマホ販売代理店 |
2023年 | マネースクエア | 外国為替証拠金取引 |
2024年 | アニマックスブロードキャスト・ジャパン、キッズステーションの有料衛星放送事業等 | コンテンツ放送事業 |
これらのM&Aにより、祖業である家電量販店運営事業に加え、キャリアショップ運営事業、インターネット事業、海外事業、金融事業、コンテンツ等のその他事業と、多角化経営を実現。他の家電量販店とは一線を画したポジションを築くことに成功しました。
この他にも、2019年にスルガ銀行の筆頭株主となりましたが、経営方針の違いにより、保有株を手放しています。
VAIOの概要
VAIOは、ソニー株式会社のパーソナルコンピュータ・ブランドとして誕生。軽量・薄型のモバイル・ノートパソコンを中心に人気を博しました。
2014年に、ソニーがVAIO事業を日本産業パートナーズが設立する特別目的会社へ承渡し、VAIO株式会社が設立される形となりました。2016年には営業黒字を達成。
参考記事「カーブアウトとは? その基本やメリット・デメリット、国内事例等を解説!」
2021年以降は、企業向け (BtoB) パソコンが事業の柱となり、全体の約4分の3を占めているとのこと。2024年5月期は、売上420億円、当期純利益9.8億円を計上しています。
VAIO買収の概要
ノジマによるVAIOの買収の概要は以下の通りです。
買収企業 | 株式会社ノジマ |
売却株式 | VJホールディングス3株式会社(※)の普通株式 286,554株 (議決権所有割合:100%)
VAIO株式会社の普通株式 5,000株(議決権所有割合(間接所有割合込み):93.0%) |
取得価額: | VJHD3およびVAIOの普通株式(概算額) 111億円 アドバイザリー費用等(概算額) 1億円 合計(概算額)112億円 |
株式譲渡予定日 | 株式譲渡契約締結日 2024 年 11月 11日 株式譲渡効力発生日 2025 年 1 月 6 日(予定) |
※VJホールディングス3株式会社はVAIO株式会社の株式91.4%を保有。
出典 2024年11月11日 株式会社ノジマ 「VAIO株式会社およびVAIO株式を保有するVJホールディングス3株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ」
VAIO買収の背景
VAIO買収の目的
ノジマは、先に述べた通り、グループシナジーを発揮しつつ、家電専門店の運営事業以外の分野に積極的に進出しています。
多角化戦略の一環として、①PCに関し、企画・設計から製造・販売、アフターサービスに至るまでを一気通貫でのワンストップで対応が可能。②特に法人向け事業に注力 というVAIO事業を取り込むことで、新たなビジネス展開が可能となります。原則、現在のVAIOの事業運営方針やお客様との関係について変更をしない想定です。
VAIO買収後の計画
ノジマ発表による開示資料によると、VAIOの買収後、以下のような計画をしております。
①ノジマとVAIOの双方の顧客基盤を活用した事業機会の創出・拡大
②ノジマグループの安定的な財務基盤を生かしたVAIO財務戦略の強化・推進等
③それぞれの強みを生かしてグループシナジーを発揮すること。
これにより、VAIO及びノジマグループの企業価値向上を目指す想定です。
まとめ
楽天やソフトバンクのように、M&Aによって事業の多角化を成功させてる企業は数多くあり、ノジマもその代表的な企業です。ノジマは、M&Aによって進出した事業で祖業の家電量販店事業を凌ぐ売上を計上しています。
ノジマは、過去のM&Aでは、幹部陣を派遣し、PMIを行っておりましたが、今回のVAIO買収では、当面はノジマから役員などは派遣せず、VAIOの独立性を尊重する方針とのこと。この点、M&Aはノジマにとっても新しいチャレンジであるともいえます。
ノジマの野島社長は、今回のVAIOの買収について、VAIOブランドを維持し、国内で製品の開発から製造、販売戦略策定までを一気通貫で行うことで、競争力を高め、VAIOを「日本の製造業の手本にしたい」とのこと。さらに、「日本にまだないようなことを含めて新しいビジネスやシナジーをつくっていきたい」と意気込んでます。
参照 2024年11月13日 日本経済新聞「VAIO買収のノジマ、野島社長「日本の製造業の手本に」
執筆者 株式会社M&A共創パートナーズ M&Aアドバイザー 篠浦 隆宏
株式会社みずほ銀行に入行し、富裕層向けの資産運用の提案に従事。株式会社日本M&Aセンターへ転職後、M&Aコンサルタントとして幅広い業種のM&Aをサポート。前職は、新興のM&Aブティックにて主にIT企業のM&A案件を担当し、数多くの譲渡企業の支援に従事。
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