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ワタミがサブウェイの日本法人を買収!本M&Aの概要・背景・シナジーについて解説!

2024.10.28

2024年10月25日、居酒屋を全国展開していることで有名なワタミは、サンドウィッチで有名なサブウェイの日本法人(日本サブウェイ合同会社)を買収し、子会社化することを発表しました。一見、ワタミの居酒屋事業とサブウェイのサンドウィッチでは、縁がなさそうに思えます。今回のM&Aにどのような狙いがあるのか解説します。

 

目次

ワタミの沿革

1984年 創業者である渡邉美樹が有限会社渡美商事を設立 居酒屋「つぼ八」高円寺北口店を譲り受け、フランチャイジーとして事業を開始
1992年 居酒屋「和民」を渋谷に出店
1999年 「T.G.I. Friday’s®」日本1号店を東京都渋谷区に出店
2001年 居食屋「和民」の海外新規出店1号店目として、香港・九龍尖沙咀に出店
2002年 有限会社ワタミファームを設立し、千葉県山武町(現 山武市)にて農場運営を開始し、農業分野に参入
2005年 老人ホームを通じた介護事業に進出
2008年 夕食食材と夕食弁当などを製造・販売する株式会社タクショクの経営権を取得し、事業ブランドを「ワタミの宅食」を設立
2012年 風力発電事業に参入し、「ワタミの夢風車 風民(ふーみん)」を、秋田県に建設
2024年 和民グループは創業40周年を迎えた

 

このように、和民グループは、創業時から「つぼ八」とのフラチャイズ契約を締結し、さらには高円寺北口店の事業譲渡を受けて事業を開始しており、M &Aを利用した会社の設立を行いました。また、上記には記載しておりませんが、その後も、日本製粉株式会社との資本業務提携(1987年)を行い、お好み焼き事業を開始するなど、M &Aを活用した事業の拡大に成功しています。

さらに、1999年にはニューヨークで生まれたアメリカンカジュアルダイニング、「T.G.I. Friday’s®」を日本に上陸させ、海外から日本に持ち込むことを成功させており、元々アメリカのコネチカット州で誕生したSUBWAYも日本の文化にマッチさせて、事業の拡大を狙うことが期待されています。

この他にも、2002年から有機農業に取り組んでおり、自社で採れた野菜を宅食事業に生かすなどの事業相互でシナジーを生み出してきました。そのような農作物はSUBWAY事業でも、生かされることでしょう。

 

ワタミの課題

外食産業を中心に営んでいる和民グループはコロナ禍で大きな打撃を受けました。居酒屋業態の店舗は2年余りで半減しました。

もっとも、代わりに宅食の売り上げが増加。また、渡邉会長は、コロナ禍が明けても、在宅ワークの増加や若者の飲み文化の減少により、居酒屋の需要がコロナ前にまで戻ることは難しいと考え、2022年頃には居酒屋のうち、郊外立地する店舗を焼肉業態へ転換しました。

このように、もともと居酒屋業態中心から、多角化を推進し、業態を拡大しています。

 

日本サブウェイ合同会社に対する買収の概要

買収企業 ワタミ株式会社
売却株式 100%
取得価格 守秘義務により非公開
株式譲渡予定日 2024年10月25日

ワタミは、世界的にブランド力を有する「SUBWAY」の日本法人の100%を取得し、完全子会社にした上で、マスターフランチャイズ契約により、アメリカの法人から今後10年間、SUBWAYの店舗を国内で運営する権利を取得することになります。

2023年12月期の日本サブウェイ合同会社は、売上高536百万円、営業利益30 百万円、純資産416 百万円と安定した売上、利益を計上しているものの、右肩上がりに成長をしているわけではありません。

2024年10月25日 ワタミ株式会社発表「マスターフランチャイズ契約の締結並びに日本サブウェイ合同会社の持分取得(子会社化)に関するお知らせ

 

ワタミによるサブウェイ買収の背景

SUBWAYはアメリカのコネチカット州で一号店を出店以来、世界に進出し、世界に4万4000店の店舗を構える世界最大級のサンドイッチチェーンです。日本において、SUBWAYは1992年に東京都港区に日本一号店を開店し、サンドイッチといえば三角サンドのイメージしかなかった時代に、サブマリンスタイルのサブウェイのサンドイッチは大きな話題と人気を集めました。

実は、日本に参入した当時は、日本サブウェイにはサントリーが出資してマスターフランチャイズ契約を締結していて、参入当初はアメリカと同様のメニューしかなかったのですが、サントリー側の提案で徐々にメニューは日本市場に適応したものに変えられて、「てりやきチキン」や「えびアボカド」のように日本人が独自で好むメニューが開発されていました。そして、10年前には全国で400店舗以上を展開するまでに至りました。

しかし、SUBWAYのアメリカ本社は世界戦略として海外展開を現地パートナーに委ねる形から本社が一元管理をする方向へと転換をしたことで、2016年に契約満了に伴ってフランチャイズ契約を解消されました。これによって、日本人の舌に合わせたメニューの展開やオーダー方法の選出が難しくなり、業績は悪化。現在は178店舗まで減少しました。

2023年に創業者のフレッド・デルーカが死去し、経営権は創業家から投資ファンドへと移り、世界各国の市場はやはりそれぞれの文化に合わせて経営したほうが好ましいと判断となり、現在に至ります。。

 

ワタミとサブウェイのM&Aによるシナジー

日本の外食需要に理解が深く、店舗拡大ノウハウに強みを持ち、40年に渡り日本の外食市場で業績を拡大してきたワタミであれば、日本のSUBWAYのシェアを伸ばすことができると考えられます。

具体的には、SUBWAYの提供するサンドイッチは日本の文化では昼食として親しまれることが多く、夜の売上が大きく落ちることも弱点として考えられていますが、居酒屋チェーンを展開し、夜の外食産業に強みのあるワタミだからこそできる、夕食向けのメニューの考案も期待されるでしょう。

また、ワタミ自身もファーストフード事業に参入することで、食の総合企業としての事業展開を強化、ワタミファームの有機野菜を使用した商品開発、フランチャイズ展開のノウハウの強化、海外進出の促進等、様々なシナジーを生み出すことも可能です。

今後、ワタミは全国の商業施設や駅前などに出店を拡大し、将来的には国内3,000店舗、1店舗あたりの売上7,000万円、概算で2,000億円の売上を目指します。渡邉会長は「まずは10年で250店舗の出店を必ず達成したあと、年間150店舗の出店を続けていける体制を組んでいきたい」と述べています。

また、渡邉会長自身SNSで、「野菜が大好き」、「SUBWAYが大好き」という熱い気持ちを有しており、夢の電車が走り出したと述べ、ファーストフード日本一という奇跡を起こすと意気込んでいます。

 


執筆者 株式会社M&A共創パートナーズ M&Aアドバイザー 篠浦 隆宏 

株式会社みずほ銀行に入行し、富裕層向けの資産運用の提案に従事。株式会社日本M&Aセンターへ転職後、M&Aコンサルタントとして幅広い業種のM&Aをサポート。前職は、新興のM&Aブティックにて主にIT企業のM&A案件を担当し、数多くの譲渡企業の支援に従事。


 

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