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デジタルハリウッドがベネッセの傘下に!本買収の背景や目的について解説!
2024.12.03
2024年11月29日、株式会社ベネッセホールディングス(以下「ベネッセ)」は、デジタルハリウッド株式会社(以下「デジタルハリウッド」)を買収することを発。デジタルハリウッドは、カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社(以下「CCC」)の子会社で、社会人向けクリエイター養成スクールなどを運営しております。。本買収の詳細、背景について解説します。
目次
デジタルハリウッドの概要
1994 年に社会人向けクリエイター養成スクール「デジタルハリウッド」を開校。その後、スクール数を拡大し、グループ全体で 9 万人の卒業生を輩出しました。「デジハリ」の相性は皆様も聞いたことがあるのではないかと思います。
現在は、 Web/CG/動画/映像/プログラミングといったデジタルクリエイティブ分野を軸に、クリエイター養成スクール、文部科学省認可の株式会社立大学、専門職大学院、オンラインスクール、社会人向けのエンジニア・起業家養成スクール、学校コンサルティング等を展開。
デジタルクリエイティブの分野で、圧倒的な知名度とコミュニティを誇ります。
CCCの概要
レンタルビデオ店「TSUTAYA」や書籍・家電を扱う「蔦屋書店」を有名なCCCですが、昨今は経営戦略の見直しを図っています。共通ポイントプログラムでトップシェアを誇っていた「Tポイント」は、三井住友系のVポイントへ統合。TSUTAYAは、動画配信サービスの普及により店舗数は減少しています。そのような厳しい環境下の中、2024年10月には、ヨガやピラティスができるジムを、2027年に200店舗とする方針を発表。事業ポートフォリオの見直しを積極的に推進している状況もあり、デジタルハリウッドの株式譲渡を行ったものと推察されます。
ベネッセの概要
ベネッセの沿革
ベネッセは1955年岡山で創業。主に、学生向けの「進研ゼミ」や幼児向けの「こどもチャレンジ」等のの通信教育講座、情報誌の「たまごクラブ」「ひよこクラブ」を運営しております。2000年代の入ると介護事業をスタート。その後は、東京個別指導学院など、様々な企業を買収し、M&Aの活用で業績を拡大しました。
2015年には、オンライン教育プラットフォームの米Udemyと包括的業務提携契約を締結、2019年には法人向けに「Udemy for Business」の提供をスタート。リカレント教育分野へ積極的に進出しています。
2024年に入り、ヨーロッパの投資ファンドEQTと組んでMBOを実施。TOBにより、創業家とEQTが株式を買付を行い、2024年5月に東証プライムより上場廃止となりました。ベネッセは、上場廃止によりEQTと組み、主力の進研ゼミの立て直しや新規事業の強化などで、企業価値の向上に取り組んでおります。
ベネッセの経営方針
ベネッセは、2020年11月に中期経営計画を発表し、2023年に、2020年に発表した中期経営計画をブラッシュアップしました。
事業ポートフォリオを、「コア教育」「コア介護」「新領域」の3つに再構築、教育分野の収益安定化、介護分野の成長、新領域では戦略投資を行う方針です。
新領域のターゲットは、大学・社会人、介護の周辺ビジネス、海外としており、前述のUdemyとの戦略的提携および資本業務提携は、まさにこの大学・社会人領域への戦略的投資を言えます。
2024年3月期から3年間で、M&Aなどの戦略投資に500億円強を充てる方針を打ち出し、2023年に5月に女性向けの人材ビジネスのWarisを買収。M&Aを活用し、新領域の強化に積極的に取り組んでいます。
出典 株式会社ベネッセホールディングスHP 「中期経営計画」
デジタルハリウッド買収の背景
デジタルハリウッド買収の目的
ベネッセは、先の通り、新領域分野を中心に、M&A投資を積極的に行う方針です。特に、新領域の中で「大学・社会人教育領域」においては、企業向け・個人向けのデジタル人材育成事業を重要な成長戦略のひとつとして位置づけています。
デジタルハリウッドは、当該領域の教育において圧倒的な知名度と実績を持っており、ベネッセの事業基盤とのシナジーが見込めるため、今回M&Aに至りました。
参考 株式会社ベネッセホールディングス「デジタルハリウッド株式会社の株式取得に関するお知らせ 大学・社会人教育における DX 人材育成事業を強化」
デジタルハリウッド買収後の計画
今後、クリエイターやDX人材の育成は、日本の社会課題として、より重要度を増していくものと思われます。
このような背景から、より一層DX人材育成領域の事業拡大を進めるべく、以下のような戦略を推進していく方針です。
- デジタルハリウッドの世界レベルの高品質な教育サービスを、大学や専門学校/企業に紹介
- デジタルハリウッドの培ってきた開発力を活かし、新たな教育コンテンツを開発
- 「Udemy」(※1)とデジタルハリウッドのカリキュラムを相互に連携
参考 政府発表「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2024年改訂版」
執筆者 株式会社M&A共創パートナーズ M&Aアドバイザー 篠浦 隆宏
株式会社みずほ銀行に入行し、富裕層向けの資産運用の提案に従事。株式会社日本M&Aセンターへ転職後、M&Aコンサルタントとして幅広い業種のM&Aをサポート。前職は、新興のM&Aブティックにて主にIT企業のM&A案件を担当し、数多くの譲渡企業の支援に従事。
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