VC (ベンチャーキャピタル)とは何か、VC (ベンチャーキャピタル)の基本から、資金調達のメカニズム、メリット・デメリット、、VC (ベンチャーキャピタル)の様々なタイプについて詳しく解説いたします。これからVCからの資金調達を考えている企業様は、是非参考にしてみてください。
目次
ベンチャーキャピタル(VC)の基本
VCの定義
ベンチャーキャピタル(VC)とは、革新的なアイデアを持つスタートアップ企業に投資を行う機関投資家のことです。彼らは、初期段階で成長可能性の高い企業を見抜き、資金を提供することで、その企業の成功を支援します。
VCの歴史
VCの起源は、1950年代のアメリカに遡ります。当時のアメリカでは、コンピュータや半導体といった新技術が台頭し、それらを活用したビジネスチャンスが生まれていました。しかし、銀行などの伝統的な金融機関は、リスクの高いスタートアップ企業への融資を敬遠していました。その状況下で、リスクを取り、新興企業を支援する新しい資金供給の仕組みとしてVCが誕生しました。
1970年代以降、VCは情報技術分野だけでなく、バイオテクノロジーや医療、エネルギーなど、様々な分野へと投資対象を拡大していきました。そして、インターネットの台頭やモバイル端末の普及など、テクノロジーの進歩に伴い、VCはますます重要な役割を果たすようになりました。
VCがスタートアップに重要な理由
スタートアップ企業は、初期段階において資金調達が非常に困難です。銀行からの融資は、事業実績や担保などが求められるため、なかなか受けられません。また、一般の投資家から資金を集めるには、株式市場への上場など、高いハードルがあります。VCは、このような状況下で、スタートアップ企業に資金を提供し、その成長を支援する重要な役割を担っています。
VCは、スタートアップ企業に資金を提供するだけでなく、経営ノウハウやネットワークなどのサポートも提供します。VCは、多くのスタートアップ企業への投資経験があり、事業の成功に必要な知識や経験を豊富に持っています。また、VCは、業界のトップ企業や投資家との広範なネットワークを持っています。VCを通じて、これらのネットワークにアクセスできるため、スタートアップ企業は新たなビジネスチャンスや提携先を見つけることができます。
VCの資金調達メカニズム
ファンド組成の仕組み
VCは、複数の投資家から資金を集めてファンドを組成します。ファンドとは、特定の目的のために集められた資金のことで、VCの場合、スタートアップ企業への投資のために設立されます。ファンドの期間は通常、5年から10年で、その間に投資を行い、その後は投資した企業の株式を売却することで利益を得ます。
ファンドの組成には、まず、VCが投資戦略を策定する必要があります。投資戦略には、投資対象となる分野、投資規模、投資期間などが盛り込まれます。投資戦略を策定した後、VCは投資家から資金を集めます。投資家は、ファンドの投資戦略に共感し、VCの過去の投資実績や経験などを評価して、ファンドに出資します。
投資プロセスの詳細
VCは、投資対象となるスタートアップ企業を厳しく審査します。審査では、企業のビジネスモデル、経営陣の能力、市場の成長性などが評価されます。ビジネスモデルは、企業がどのように収益を上げていくのか、その仕組みが明確で実現可能かどうかが重要です。経営陣の能力は、創業者のビジョン、リーダーシップ、実行力などが評価されます。市場の成長性は、企業が属する市場の規模や成長速度などが評価されます。
VCは、投資対象となるスタートアップ企業を厳選するために、様々な方法を用います。例えば、スタートアップ企業のピッチイベントに参加したり、スタートアップ企業のデータベースを調査したりします。ピッチイベントとは、スタートアップ企業が投資家に対して、自社の事業計画やビジョンを発表するイベントです。VCは、ピッチイベントで多くのスタートアップ企業と出会うことができます。スタートアップ企業のデータベースは、スタートアップ企業に関する情報をまとめたデータベースです。VCは、データベースを調査することで、投資対象となるスタートアップ企業を探すことができます。
VCからの資金提供後の管理
VCのメリット
資金調達力
経営サポート
ネットワーキング
VCのデメリット
持株比率の低下
VCからの資金調達には、自社の株式を一定の割合でVCに譲渡する必要があります。そのため、創業者は自社の持株比率が低下し、経営への影響力が弱まる可能性があります。特に、VCが複数社から資金調達を行う場合、持株比率は大幅に低下する可能性があります。
経営方針への干渉
VCは、投資したスタートアップ企業の経営に積極的に関与します。そのため、創業者はVCからの経営方針への干渉を受ける可能性があります。VCは、投資した資金の回収を目的とするため、企業の収益性や成長性を重視し、経営方針に影響を与えることがあります。
利益の圧力
VCは、投資したスタートアップ企業に対して、高い収益性を求めます。そのため、創業者は利益を追求するために、短期的視点での経営を行う必要があり、長期的なビジョン実現を阻害する可能性があります。VCは、投資した資金をできるだけ早く回収したいと考えているため、スタートアップ企業に対して、早期の収益化を要求することがあります。
VCのタイプ
独立系VC
独立系VCは、金融機関や企業とは独立して設立されたVCです。特定の母体や系列を持たずに、外部から資金を受託し運用します。日本では、1996年に組成されたグロービス・インベキューション・ファンドを皮切りに、1998年にはJAFCO主審者が立ち上げた、日本テクノロジーベンチャーパートナーズなどが誕生しています。
従前の国内VCは、母体組織のブランドを活用しながら、法人をGP(ジェネラルパートナー)とすることが多かったのですが、独立系VCでは、個人がGPとなってリスクを共有し、投資担当者が投資先の発掘から、成長支援まで一気通貫で手掛けるケースが多く、いわゆる「ハンズオン投資」をするVCが多いのも特徴です。
金融機関系VC
金融機関系VCは、金融機関が設立したVCのことをいい、金融機関を母体とし、メガバンク系や地方銀行系、生保・損保系など多岐にわたります。母体の金融機関と連携しながら融資を連動させることや、支店を活用した営業支援、地域やセクターを問わないカバレッジなどを強みとします。直近では、VC投資総額のうち、約17%を金融系VCが占めています。金融機関系VCは、一般的に、他のタイプのVCに比べて、より大規模な投資を行う傾向があります。
大学系VC
大学系VCは、大学が設立したVCです。大学が持つ技術や研究成果を基にしたスタートアップ企業への投資を行っています。大学系VCは、大学の研究と連携することで、最先端の技術や研究成果を活用したスタートアップ企業への投資を行うことができます。
東大IPC(東京大学協創プラットフォーム開発)に代表される大学自体が出資母体となっているファンドのみならず、東京大学エッジキャピタルパートナーズのように、大学の基礎研究の成果や人的資源を生かしたイノベーションや産業創出を目的とするVCも存在します。
独立系VCがIT領域を主戦場としているのに対して、大学発の技術やバイオシーズを投資対象としていることが多いのが特徴です。
政府系VC
政府系VCは、公的資金を裏付けに政府が設立したVCです。産業競争法に基づいて設立された、産業革新投資機構傘下のJICベンチャー・グロース・インベストメンツ、日本政策投資銀行が100%出資するDBJキャピタル等が挙げられます。国の政策目標を達成するために、特定の分野のスタートアップ企業への投資を行っており、投資目的、投資判断、結果評価においても、民間のVCと価値基準が異なることが特徴的です。
事業会社系VC(CVC)
事業会社系VCは、事業会社の戦略目標の一環としてベンチャー投資を行う、いわゆるCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)形態です。純粋に金融的リターンを志向する独立系VCに対して、事業会社系VCは、金融的リターンと戦略的リターン(情報や技術の獲得)を同時に希求することが多いのが特徴で、主に自社の事業に関連する分野のスタートアップ企業への投資を行っています。例えば、自動車メーカーが設立したVCは、自動運転技術や電動化技術などの分野のスタートアップ企業に投資を行うことがあります。事業会社系VCは、自社の事業に関連する分野のスタートアップ企業との連携を強化することで、自社の事業を成長させることを目的としています。
まとめ
VCは、スタートアップ企業にとって重要な資金調達手段の一つです。VCから資金調達できれば、資金面だけでなく、経営サポートやネットワーク面でも大きなメリットがあります。しかし、VCからの資金調達には、持株比率の低下や経営方針への干渉などのデメリットも伴います。そのため、VCからの資金調達を行う際は、メリットとデメリットを比較検討し、慎重に判断する必要があります。
執筆者 株式会社M&A共創パートナーズ M&Aアドバイザー 篠浦 隆宏
株式会社みずほ銀行に入行し、富裕層向けの資産運用の提案に従事。株式会社日本M&Aセンターへ転職後、M&Aコンサルタントとして幅広い業種のM&Aをサポート。前職は、新興のM&Aブティックにて主にIT企業のM&A案件を担当し、数多くの譲渡企業の支援に従事。
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