SES契約と派遣契約とは?SES事業における2つの契約形態について解説!

近年、企業は人材の確保や育成に課題を抱えています。特に、専門性の高い技術を持つIT人材は不足しており、企業にとって大きな負担となっています。

こうした状況下において、企業は人材の活用方法として、SES契約や派遣契約といった外部の専門企業に委託する契約形態を採用することが増えています。

本記事ではSES契約と派遣契約の違いを具体的な事例やメリット・デメリット等を交え解説していきます。

 

目次

SES契約と派遣契約について

SES契約とは

SES契約は、システムエンジニアリングサービス(System Engineering Service)の略で、特定の技術やサービスを提供する契約形態です。企業が自社で抱えきれない業務や専門性の高い技術を必要とする際に、外部の専門企業に委託する形をとります。SES契約において委託された企業は、自社の従業員を派遣先企業へ派遣し、派遣先企業の指示のもとで従業員は業務を行います。

派遣契約とは

派遣契約は、派遣会社が労働者を派遣先企業に派遣し、派遣先企業の指揮命令の下で労働が提供される契約形態です。派遣会社は労働者の雇用主であり、派遣先企業は労働者の指揮命令権を持つ立場となります。派遣契約では、派遣会社が労働者の給与や社会保険などを負担し、派遣先の企業は、労働者の業務内容や労働時間などを指示します。

SES契約と準委任契約の違い

SES契約の契約内容は、基本的に準委任契約の内容に準ずるのが特徴です。準委任契約とは「特定の業務を委託、または受託する契約」のことを言い、SES契約では「システムエンジニアが受け持つ業務」を委託、または受託します。

このように、SES契約の契約内容は「準委任契約」を基本とするため、業務を委託する企業と実際に働くシステムエンジニアとの間には「雇用関係」がありません。そのため、業務を委託する企業やベンダー企業の双方にメリットがある分、偽装請負が生じやすいというデメリットもあります。

SES契約と派遣契約の歴史

SES契約と派遣契約は、ともに近年注目を集めている人材活用方法ですが、その歴史は古く、それぞれの起源や発展は異なる経緯を辿ってきました。
SES契約の起源は、1980年代後半の日本のIT業界にまで遡ります。当時、高度経済成長期を経て、企業の情報システム化が急速に進展し、システム開発の需要が高まりました。しかし、企業は、自社で十分なシステム開発の専門知識や人材を抱えていないケースが多く、外部の専門企業にシステム開発を委託することが増えました。この委託業務の形態として、SES契約が誕生しました。

一方の派遣契約は、1970年代から主に製造業やサービス業で活用されてきました。当時は人手不足や季節的な需要変動に対応するために、労働者を派遣する形態が一般的でした。1980年代以降、派遣労働者の需要が拡大したことで、派遣契約はさまざまな業界で活用されるようになりました。

SES契約と派遣契約は、当初それぞれ異なる業界で発展してきましたが、近年はIT業界の高度化や人材不足の深刻化など、社会環境の変化によって、両方の契約形態が注目されるようになっています。特にIT業界では、専門性の高い技術を持つ人材の需要が高まっているため、SES契約や派遣契約を活用することで、人材の確保と育成の課題を解決しようとする動きが活発化しています。

 

SES契約と派遣契約の違い

指揮命令権の所在

SES契約と派遣契約の最も大きな違いは、指揮命令権の所在です。SESでは発注側に指揮命令権はなく、派遣契約では派遣先に指揮命令権があります。SES契約において、発注側は委託した業務の成果物に対して責任を負いますが、委託された企業の従業員に対しては、直接的な指揮命令権を持ちません。一方の派遣契約では、派遣先企業が派遣労働者に対して、業務内容や労働時間などを指示する権限を持ちます。

業務遂行の責任

SES契約では、委託された企業が業務の遂行に必要な技術やノウハウを提供し、発注側は委託した業務の成果物に対して責任を負います。一方派遣契約では、派遣先企業は労働者の業務内容や労働時間などを指示し、業務遂行に対して責任を負います。

雇用関係

SES契約では、委託された企業の従業員は自社の雇用主である委託企業との雇用関係が継続されます。一方、派遣契約において派遣労働者は派遣会社との雇用関係にあり、派遣先企業との雇用関係は発生しません。

 

SES契約のメリットとデメリット

SES契約のメリット

SES契約は、特定の技術やサービスの提供に特化しているため、高い専門性を持った人材を確保することができます。例えば、特定のプログラミング言語に精通したエンジニアや、特定のシステム開発に精通したスペシャリストなどを、比較的短期間で確保することができます。また、SES契約において発注側は委託した業務の成果物に対して責任を負うため、品質の高いサービスを提供してもらえる可能性が高くなります。

SES契約のデメリット

SES契約は、進捗度によって業務内容が変遷するケースが比較的多く、特定業務のみを継続して行うプロジェクトには向かないことがあります。また、指揮命令権が発注側には無いため、指示伝達が複雑になることも起こり得ます。そのほか、委託された企業の従業員は派遣先企業の指示に従って業務を行うため、発注側の意図伝達に齟齬が生じることがあります。さらに、SES契約において、発注側は委託した業務の成果物に対して責任を負うため、成果物のクオリティによっては発注側が責任を負う事態も起こり得ます。

 

派遣契約のメリットとデメリット

派遣契約のメリット

派遣契約は、派遣先企業の指揮命令のもとで働くため柔軟な人材配置が可能です。例えば、繁忙期にだけ人材が必要な場合や、特定のプロジェクト・工程にだけ人材が必要な場合などに派遣契約は特に有効です。また、派遣契約では派遣会社が労働者の給与や社会保険などを負担するため、発注側は人材管理の手間を省くことができます。

派遣契約のデメリット

派遣契約は業務内容が限定されるケースが多く、長期的な視点でのスキル育成やキャリア形成が難しくなります。さらに、派遣労働者は派遣会社との雇用関係にあるため、派遣先企業の文化や業務内容によっては、派遣先企業との関係性が良好に築けずストレスが増大する可能性もあります。

 

SES契約の事例や向いている案件

SES契約の具体的な事例

SES契約の具体的な例として、Webアプリケーションやシステム開発のプロジェクトを挙げることができます。企業が自社で開発するだけのリソースがない場合、外部の専門企業に開発を委託します。この場合、委託された企業は自社のエンジニアを派遣し、プロジェクト先で開発を行います。開発完了後、委託した企業は成果物であるWebアプリケーション(システム)を譲り受け、開発費を支払います。

SES契約に向いている案件

IT技術mp支援が必要であり、複数の工程を跨ぐプロジェクトにはSES契約が向いています。各工程に適した技術やノウハウの提供が期待できるため、迅速な対応が可能です。例えば、システム開発やインフラ環境構築などのプロジェクトでは、要件定義のような上流工程からテスト・運用保守のような下流工程までプロジェクト内容が変遷していくため、SES契約が適しています。

 

派遣契約の事例や向いている案件

派遣契約の具体的な事例

派遣契約の具体的な例として、コールセンターの業務を挙げることができます。キャンペーン期間などで、企業側が一時的にオペレーターを増員する必要がある場合、派遣会社へオペレーターの派遣を依頼します。この場合、派遣会社はオペレーターの雇用主であり、企業側がオペレーターの指揮命令権を持ちます。オペレーターは企業の指示に従って、電話対応やデータ入力などの業務を行います。

派遣契約に向いている案件

ある程度内容が固定化された業務への従事を求められるプロジェクトには、派遣契約が向いています。限定的なポジションとなるケースもありますが、プロジェクト内容や派遣現場に対する知見を得ることも可能です。例えば、システム運用やヘルプデスクなど、長期的に継続していくことが決定しているプロジェクトには派遣契約が適しています。また、セキュリティレベルの高いプロジェクトにおいても、派遣先の企業が指揮命令権を持つ派遣契約が適しているでしょう。

 

まとめ

SES契約と派遣契約は、どちらも企業にとって有効な人材活用手段ですが、それぞれに特徴やメリット・デメリットがあります。会社の状況や案件内容に合わせて、どちらが最適なのか判断することが重要です。

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執筆者 株式会社M&A共創パートナーズ SESコンサルタント 松下 京平 

当時IT業界は未経験だったものの、約2ヶ月で400社を超える企業との提携関係の構築に加え、50名以上の自社エンジニア全員の営業を担当。2023年に人事担当へ転向後、主にエンジニア採用業務へ従事し、年間で約100名の経験者エンジニアの採用を実現。
SES企業の成長に関わる広範な業務を、一貫して現場主義で対応し、早期の黒字化を実現。


 

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