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M&Aとは? 初心者向けにわかりやすく解説 定義・歴史・成功事例・手続き等

2024.10.13

M&Aとは、企業の買収や合併を指す用語で、経営戦略の一環として行われます。より多くの利益や市場シェアを獲得するために、他企業を買収したり、合併することが目的です。企業の成長や効率化を図るために、M&Aは重要な手段となっています。この基本的な知識を理解することで、ビジネス戦略の幅が広がるでしょう。

目次

M&Aの定義と種類

M&Aの定義

M&Aとは、Mergers and Acquisitionsの略称で、企業の合併および買収を指します。 企業が成長を目指す際に採用する手法の一つであり、しばしば大きな影響を及ぼします。

合併(Merger)とは、二つ以上の企業が統合し、一つの新しい企業になることを指します。一方で、買収(Acquisition)は一つの企業が他企業の支配権を取得する行為です。これにより、企業は資源や技術、マーケットシェアを効率よく取得することが出来ます。

M&Aの種類

M&Aには友好的なものと敵対的なものがあり、企業間の協議や合意に基づく友好的なものと、同意なしに行われる敵対的なものがあります。

他にも、水平型、垂直型などにに分類され、目的や達成したい結果によって異なる手法が選ばれます。理解を深めることで、M&Aがどのように企業に影響を与えるのかを把握できるでしょう。

参考記事 「水平型と垂直型M&Aの違いとは?シナジー効果や成功事例を解説!

 

M&Aの歴史と背景

戦前

日本のM&Aの歴史は19世紀末まで遡ります。当時の紡績業において、生産コストの上昇や海外企業の台頭を打破するため、鐘淵紡績株式会社(現在のカネボウ株式会社)は、M&Aを活用し企業規模を拡大しました。

その後、三井、三菱、住友等による財閥を呼ばれる企業によるM&Aが進み、様々な業態の企業を傘下に収め、規模を拡大していきました。

戦後

GHQの財閥解体の方針により、多くの企業の会社分割、事業譲渡が進められました。

また、公正かつ自由な競争を促進するため、独占禁止法が制定されました。これにより、企業がM&A等により過度にシェアを獲得することに対する規制が加えられました。

バブル経済期

高度経済成長期を経て、1980年代後半には日本はバブル景気に突入します。

日本企業の好景気を背景に、海外企業の買収が増加。代表例として、ソニーによるコロンビア・ピクチャーズ買収(1989年)があり、世界を驚かせました。

バブル崩壊後

バブル崩壊後、日本企業は経営効率の向上を図るためにM&Aを活用しました。銀行業界では大規模な統合が進み、みずほフィナンシャルグループの設立(2000年)などがありました。

また、事業再編や救済のための制度の整備がすすめられ、会社分割制度、民事再生法や会社更生法などの法律の改正も進みました。

2000年代

ITバブルを追い風に、新興のIT企業によるM&Aが盛んになり、M&Aという言葉が日本国内で一般的になりました。

livedoorは、高い時価総額を背景に、会計ソフトの弥生や通信販売大手のセシール等の大手企業を買収し、事業を拡大。失敗に終わりましたが、近鉄バッファローズやフジテレビ(ニッポン放送)の買収を仕掛けたことも有名です。

楽天は、旅の窓口(現、楽天トラベル)、国内信販、(現、楽天カード)、イーバンク銀行(現、楽天銀行)、DLJディレクトSFG証券(現、楽天証券)を矢継ぎ早に子会社化し、現在の楽天経済圏の礎を築きました。

ソフトバンクも、様々な企業を買収していますが、代表的なものは英Vodafoneの買収でしょう。約1兆7,500億円という当時最大級の買収価格、事業証券化という当時の日本では目新しい手法を用いて、この大型ディールを成功させて通信事業に参入。現在では、三大キャリアの一つとなりました。

また、複数のファンドが日本企業へ敵対的買収を仕掛けたことで、「ハゲタカ」という言葉を耳にするようになりました。

アメリカのヘッジファンドであるスティール・パートナーズが、老舗食品メーカーブルドックソースに対するTOBが代表例です。最終的には、不成立に終わりましたが、多くの企業が防衛策を検討するきっかけとなり、M&Aや資本取引の高度化が促進されました。

近年の動向

日本市場の縮小傾向を背景に、海外市場への進出を目的とした大型M&Aが成立しました。ソフトバンクによるARM買収や、武田薬品によるシャイアー買収、サントリーによるビーム買収が代表例です。

一方、国内では、少子高齢化による後継者不足の問題が顕在化。2025年までにオーナーが70歳以上の企業のうち約120万社が後継者不在とい試算されており、中小企業庁が中心となり国内中小企業の事業承継型のM&Aを推進しています。これに加え、多くのM&A仲介会社が設立され、当該問題に積極的に取り組んでいることから、M&Aの件数が大幅に増加しています。

出典 2019年12月 中小企業庁「第三者承継支援総合パッケージ」より

 

M&Aの手続きとフロー

M&Aの手続きは複雑であり、多くの段階を経る必要があります。大まかな手続きの流れを以下に開設します。

 M&Aの準備段階

まず、経営陣が戦略的な目標を設定します。これは、企業の将来計画や市場の動向を考慮して決定されるものです。また、ターゲット企業の選定もこの段階で行います。そして、対象企業の評価を行い、交渉の基盤を築きます。準備段階のしっかりした対応が、その後のプロセスをスムーズに進めるための鍵となります。

デューデリジェンスとは

デューデリジェンスとは、M&Aにおける詳細な調査です。この調査は、企業の財務状況や法的リスク、経営状況などを確認するプロセスです。具体的には、財務諸表の分析や契約書の確認、従業員の評価などが含まれます。デューデリジェンスを徹底することは、意思決定の精度を高めるために不可欠です。また、この段階で見つかった問題点をもとに、交渉条件を調整することもあります。これにより、リスクを最小限に抑えることが可能です。

詳細は、デューデリジェンスとは?M&Aの成功を確実にするための方法」の記事をご欄ください。

契約とクロージング

契約とクロージングは、M&Aプロセスの最終段階です。

まず、双方の合意内容を正式な契約書にします。この契約書には、価格や条件、期限などを明記します。そして、クロージングでは、実際の株式や資産の移転が行われます。 ここでの手続きがスムーズに執り行われることによって、M&Aが正式に完了するのです。最後まで注意を怠らないことが重要です。

最終契約書については、最終契約書とは?M&Aを成功させるための重要性や内容から注意点まで解説!」の記事をご覧ください。

 

M&Aの成功事例と失敗事例

M&A、つまり企業の買収と合併は、企業戦略において重要な位置を占めます。成功事例も多く存在しますが、一方で失敗に終わるケースも少なくありません。それぞれのケースを詳しく見て、成功するための重要な要因についても説明します。

成功事例

FacebookがInstagramを買収した事例はとても有名です。このM&Aは、Facebookが若者層をターゲットにするためのもので、結果的に非常に利益を上げました。Instagramは、独自の写真共有サービスとしての強みを活かしながら、Facebookの広範なSNS機能と統合されました。

この組み合わせが、両社の強みを最大限に引き出し、成功に導いたのです。加えて、技術の相互補完も成功の要因でした。買収後、InstagramはFacebookの技術力を活用し、新しい機能を次々と追加しました。結果として、ユーザーエクスペリエンスが大きく向上し、利用者数も劇的に増加しました。

失敗事例

一方、M&Aには失敗事例も見られます。その一例が、アメリカの大手小売企業シアーズがKマートを買収したケースです。シアーズはKマートの顧客基盤と小売ネットワークを狙っていましたが、統合作業がうまくいきませんでした。文化の違いやオペレーションの継ぎ目で難航し、最終的には両社とも業績が悪化してしまいました。また、両社のビジネスモデルが十分に統合されなかったことも失敗の要因となりました。

さらに、小売業界全体の変動も影響しました。Amazon等オンラインショッピングの普及に追いつけず、両社共に旧来のビジネスモデルに固執してしまい、新しい市場動向に対応できず、その結果、M&Aは失敗に終わってしまいました。

重要な成功要因

上のような成功例、失敗例を踏まえて、以下のことに気をつけてM&Aを進める必要があります。

戦略的な相性

買収側と被買収側のビジネスモデルや企業文化がうまく融合できることが求められます。

適切なリーダーシップ

リーダーが明確なビジョンを持ち、それを実行に移すための能力を持っていることが成功のカギです。

徹底した事前調査

市場環境や競合他社、内部の強みと弱みを十分に理解した上での計画があれば、成功確率は高まります。

迅速かつ効果的な統合プロセス

これにより、組織全体が一丸となって新たな目標に向かうことが可能になります。

シナジー効果

M&Aの目的の大半は、それによって生じる相乗効果を得ることにあります。これをシナジー効果と呼びます。

具体的には、コスト削減や売上増加が期待できる点が挙げられます。例えば、重複する業務を効率化することでコストダウンし、新しい市場や技術が加わることで売上を伸ばすことが可能です。

また、シナジー効果は、単にコスト削減だけでなく、イノベーションの促進にも寄与します。異なる企業文化や技術が融合することで、新しいアイデアや製品が生まれる可能性が高まります。

 

初心者が学ぶべき基本知識と専門家の協力

このようにM&Aの世界は複雑なので、初心者は基本知識を身につける必要があります。 その一つは、M&Aがどのようなプロセスで進行するかを理解することです。例えば、企業価値の評価方法やデューデリジェンス(事業精査)の重要性を知ることが重要です。

また、法律や規制も理解しておく必要があります。M&Aには多くの法的手続きが伴うので、遵守することが求められます。

M&Aのプロセスや法規制は複雑なので、弁護士やM&Aアドバイザー、ファイナシャルプランナーなどの専門家の協力を得ることをお勧めします。

 


執筆者 株式会社M&A共創パートナーズ M&Aアドバイザー 篠浦 隆宏 

株式会社みずほ銀行に入行し、富裕層向けの資産運用の提案に従事。株式会社日本M&Aセンターへ転職後、M&Aコンサルタントとして幅広い業種のM&Aをサポート。前職は、新興のM&Aブティックにて主にIT企業のM&A案件を担当し、数多くの譲渡企業の支援に従事。


 

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