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「ハワイアンズが買収!?」運営会社常盤興産に対する米ファンドによるM&Aを解説!
2024.09.10
「フラガール」で有名なスパリゾート施設「ハワイアンズ」を運営する常盤興産は、2024年9月9日、アメリカの投資ファンドのフォートレス・インベストメント・グループから買収提案を受けたと発表しました。親しみ深いハワイアンズに、投資ファンドがなぜM&Aを仕掛けるのか解説します。
ハワイアンズを運営する常盤興産の沿革
常盤興産の沿革は明治時代までさかのぼり、以下の通りとなっています。
1884年10月 渋沢栄一、浅野総一郎らによって、磐城炭礦社が設立
1895年5月 川崎八右衛門、白井遠平によって、入山採炭株式会社が設立
1944年3月 磐城炭礦社と入山採炭株式会社が合併し、常磐炭礦株式会社が設立
1949年5月 東京証券取引所に上場
1964年9月 常磐湯本温泉観光株式会社設立
1966年1月 常磐ハワイアンセンターの営業を開始(現 ハワイアンズ)
1973年1月 ハワイアンセンター創業以来の累計入場者数が1,000万人に達する
その後着々とプール施設等の拡大に成功
2011年3月 東日本大震災の影響を受け、休業
2012年2月 営業再開に伴い、ハワイアン&スパをコンセプトとした新ホテル「モノリスタワー」を開業
2017年1月 ハワイアンセンター創業以来の累計入場者数が6,500万人に達する
2024年9月 フォートレス・インベストメント・グループから買収提案を受けたと発表
上記のように、明治時代に炭鉱会社として始まった常盤興産は、その後昭和に入ってから観光事業を展開し、東日本大震災をも乗り越えて発展してきました。
常磐興産は、今年3月までの1年間グループ全体の決算で、最終的な利益が9億3400万円の黒字となり、観光部門の営業利益が過去最高となるなど、コロナ禍の落ち込みから業績を回復しています。 一方で、人口減少によって主な客層となっている首都圏のファミリー層の減少や施設の老朽化といった課題を抱え、これまでの負債も多く、大規模な設備投資を行う資金不足に苦しんでいました。今年3月の時点では、有利子負債が300億円近くに膨らみ財務の改善が経営課題となっていて、今年の6月に就任した関根一志社長は会見で、借入金の削減などを進める必要があるという考えを示していました。
ハワイアンズの買収に関する解説
買収の概要
買収企業: フォートレス・インベストメント・グループ(アメリカ)
売却株式: 常盤興産の株式100%
取得価額: 140億(最大で140億円になると予想されています)
株式譲渡予定日: 2024年9月10日から一株1,650円でTOBを開始する予定
TOBに関しては、こちらの参考記事を御覧ください。「TOBとは?株式公開買付け(Takeover Bid)の意味や目的、事例を解説!」
買収の背景と目的
「フォートレス」は、アメリカの投資運用会社であり、バイアウト・ファンドビジネスを中心に、経営破綻懸念のある企業の株式や債券などに投資するディストレス投資を主軸としています。 「フォートレス」は、日本企業の買収にもたびたび成功しており、2013年に行ったシェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテルを420億円で買収したことでも知られています。
また、観光事業だけでなく、2023年9月1日には、 セブン&アイホールディングスからグループ内で百貨店を運営するそごう・西武の全株式を2,200億円で取得し、注目を集めました。
そして、今年の5月には宮崎市の大型リゾート施設である「シーガイア」の運営会社を買収しているほか、傘下に複数のホテルを収めているため、レジャー施設の経営ノウハウやホテル事業の顧客基盤、それに資金力を活用することで、ハワイアンズの集客強化につなげる狙いがあると考えられています。
ハワイアンズの買収に関する今後の流れ
フォートレスは今後、TOB(=株式の公開買い付け)を行い、年度内を目途に完全子会社化したうえで上場を廃止する予定です。
もっとも、これまでの施設のブランドや雇用は維持するとしており、福島県いわき市の内田市長は、常磐興産の発表を受けて「観光業界での厳しい競争を勝ち抜いていくための経営判断だと受け止めている。約140年間、地域に根ざした大切な企業であり、経営主体が変更になったとしても、従業員の雇用はしっかり守り、地域との対話を大切にしてもらいたい」と述べています。
執筆者 株式会社M&A共創パートナーズ M&Aアドバイザー 篠浦 隆宏
株式会社みずほ銀行に入行し、富裕層向けの資産運用の提案に従事。株式会社日本M&Aセンターへ転職後、M&Aコンサルタントとして幅広い業種のM&Aをサポート。前職は、新興のM&Aブティックにて主にIT企業のM&A案件を担当し、数多くの譲渡企業の支援に従事。
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